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『あなたの脳は変えられる』の感想は「やめられない」習慣はマインドフルネスで抜け出せる。

いつもの「私」の<習慣>は変えられるのだろうか?

今回noteでは『あなたの脳は変えられる 「やめられない! 」の神経ループから抜け出す方法』(ジャドソン・ブルワー 著 久賀谷亮 監修・翻訳 岩坂 彰 訳 ダイヤモンド社)を読んだ感想を、書評や要約・レビューもかねながら、なるべく分かりやすく述べていきたいと思う。

マサチューセッツ大学准教授のジャドソン・ブルワー氏が書いた『あなたの脳は変えられる』の副題にある「「やめられない! 」の神経ループから抜け出す方法」とは、早い話がマインドフルネスの実践のことである。


現代社会においては、働き過ぎや対人関係が原因で、いつもより余計にストレスを感じてイライラすると、すぐにスマホを眺めたり、ネットショップで買い物をしたり、アルコールを摂取したりしてしまう、ということは日常茶飯事なのかもしれない。


もちろん、スマホを操作してSNSやゲームを楽しんだり、美味しいスイーツを味わったり、お酒やタバコを嗜んだりすることが、気分転換になったり、自分自身に良い効果ばかりをもたらしてくれるのであれば、そのような習慣についてわざわざ問題にする必要はないと思う。


日常のなかにある「わかっちゃいるけどやめられない」習慣。

しかし日々の生活のなかで、どこか心が満たされずに欲求不満だと思っていることが背景にあり、心のむなしさを埋めるために、「やめなければ」と頭のどこかで思いつつも、必要以上にスマホを眺めたり、欲しいと思った商品を買いすぎたり、ギャンブルに溺れたり、ついつい食べ過ぎたり飲み過ぎたりしてしまう場合はどうだろうか。

一時的にドーパミンが分泌されることによって本当の幸福を手に入れることは難しく、報酬を求めすぎることは、心身のバランスを崩して気持ちが塞ぎこみやすくなったり、体調を崩しやすくなったり、疲れ切ってしまったりすることが考えられる。


そして最終的には「快」よりも「不快」のほうが勝り、ストレス解消や気分転換のつもりで行ったことが、逆にイライラの原因になり、最後は自分自身をコントロールすることが出来なくなり、些細なことに対して怒りやすくなってしまうということも、日常的にはよくあることなのかもしれない。


「やめられない」習慣から抜けすための方法とは?

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しかしながら、「もっと欲しい」「わかっちゃいるけどやめられない」と依存症的に同じことを繰り返してしまう習慣を抜け出すのは簡単ではないように思う。

そもそも、つい目の前の報酬に飛びついてしまう性質は、生き残りをかけた進化の過程では仕方のないことであり、資本主義における消費社会においても、そのようなどんどん快感をもたらしてくれるものにハマっていく脳の仕組みを利用して、企業が様々な商品やサービスを生み出しているとも考えられる。

したがって、つい魅力的な商品を必要もないのに高額な値段で購入したり、SNSで情報発信したりするからには、見返りとして「いいね!」を求めたりすることは、ある意味当然なのだともいえる。


マインドフルネス瞑想で「あなたの脳は変えられる」理由とは?

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ところが、いくらお金を払って「モノ」を消費したり、「いいね!」されることで他者から承認されたつもりになったとしても、心の渇きはなかなか解消されず、時にはより虚しい気持ちになることもあるのではないか?


しかし本書の監訳をしている久賀谷亮氏は、冒頭にある「解説 やめられない脳をどうにかする」のなかで、

「瞑想を継続すれば、脳の仕組みから生まれるやっかいな渇望を、外敵報酬とは異なる仕方で、いわば〝内側から〟満たせるようになります」

「そんな脳が手に入れば、スマホに多くの時間を奪われたり、独善的な振る舞いをして恋人を失ったり、暴飲暴食や禁煙失敗を繰り返したり、感情的になって怒鳴ってしまったり、いつまでも思考をループさせたりすることもなくなります。」

と述べている。


このことはわかりやすくいえば、マインドフルネス瞑想の実践を継続すれば、同じ思考パターンや当たり前になっている生活サイクルから脱け出せるかもしれないということである。


日常にひそむ「刺激→行動→報酬」というサイクル。

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心の隙間を埋めることができなければ、SNSで「いいね!」されることを求めすぎたり、オンラインゲームやギャンブルに溺れたり、美味しいスイーツを食べ過ぎたりしてしまう。

心の渇きを癒すために何を欲するかは人それぞれ違うとしても、実は報酬を求めて行動するというのは、ジャドソン・ブルワー氏が『あなたの脳は変えられる』のなかで述べているように、

「(1)食べ物を見る、(2)食べる、(3)おいしい。つまり、刺激→行動→報酬をリピートする」

という意外と「単純な話」なのかもしれない。


 最新のスマホゲームにはまっているとき、あるいは好みの味のアイスクリームに病みつきになるとき、私たちは、現在科学的に知られているかぎりで、進化上最も古くから受け継がれている学習プロセスを働かせている。人間はそのプロセスを無数の生物種と共有する。最も原始的な神経系を持つ生物でも同じだ。それは、報酬に基づく学習プロセスである。このプロセスは、基本的に次のように働く。

 おいしそうな食べ物を見つけると、脳が「カロリーだ! 生き延びられるぞ!」と叫ぶ。そしてそれを食べ、味わう。おいしい。とくに糖を摂取したときには、身体が脳に「この食べ物を見つけた場所を覚えておくように」という信号を送り、経験と場所に基づく記憶として残していく(専門的には文脈依存記憶と呼ぶ)。こうして、次の機会に同じ手順を繰り返すことを学習するのだ。(1)食べ物を見る、(2)食べる、(3)おいしい。つまり、刺激→行動→報酬をリピートする。単純な話だ。

(ジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』 岩坂 彰 訳 p35)


<わたし>のなかの「主観的なバイアス」とは?

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たとえば目の前にリンゴとバナナがあったら、同じ果物であるのに、どちらか好きなほうをたいていの場合、選んでしまうと思う。

リンゴかバナナを選ぶのに、無意識のうちに自分の好きなほうを選択するのは、長い人生においては、たいした問題ではないかもしれない。

ところが、誰か知人からひどい言葉を浴びせられたり、教師や上司に叱責されたりして心理ストレスを感じたあとに、どのような行動を選択するか、といったことについてはどうだろうか?


その際に考えられる選択肢は、相手への誹謗中傷をネット上に書き込んで仕返しをしたつもりになる、何もしないで黙っている代わりに、スマホのゲームや買い物、ギャンブルで憂さ晴らしをする、などがあり、「逃走」であれ「闘争」であれ、感じた「ストレス」に対してどのような行動をとるのかは人それぞれ違ってくると思う。

 私たちはみな、ストレスの引き金になる何らかのボタンを持っている。そのボタンがどんなものであるかは、報酬による学習で身につけてきた人生への取り組み方(あるいは取り組まないやり方)でほぼ決まってくる。また、そのストレス因子が自分の生活や周囲の人間にどの程度影響するかえ、問題の重症度が決まってくる。

 最も重症な側に依存症、つまり悪影響があるにもかかわらずやめられない学習がある。靴のひもを結ぶのは問題のない習慣だが、運転中のスマホは悪い習慣だ。ここで重要なのは、どのような行動を身につけるか、どのくらいのペースでそれを学習するか、どのくらい根深い習慣になるかは、報酬の中身次第という点だ。

(ジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』 岩坂 彰 訳 p98)


刺激からの行動はいつもの習慣によって決まる。

しかしながら、ジャドソン・ブルワー氏が述べるように、基本的には、刺激→行動→報酬というサイクルなのであり、「ストレス」などの刺激を受けた時に、どのような方向へ進むのかは、自分自身が身につけてきた「習慣」によって決まるのかもしれない。

すなわち自分自身の「習慣」とは、ある意味、自分自身の「こだわり」や「主観」であり、自分にとって「A」と「B」、「C」の選択肢のうちのどれがより好ましいと感じられるかといったように、バイアス(偏り)のかかった眼鏡を通して世の中を見ることでもある。


 主観的なバイアスの問題は、本書『あなたの脳は変えられる』の中心テーマの1つである。それゆえ、ここで少し立ち止まってこの問題を解きほぐしておこう。

 ごく単純に言うなら、私たちは、1つの行動を繰り返せば繰り返すほど、世界について1つの決まった見方をするようになる。繰り返してきた行為がもたらす報酬と罰に基づいて、バイアスのかかった眼鏡を通して世の中を見はじめるのだ。私たちは生活の中でさまざまな習慣を身につけていくが、身につけた習慣的なものの見方が、ここでいう眼鏡である。

 (ジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』 岩坂 彰 訳 p42)
 特定の眼鏡をかけて特定の見方で世界を見ることに慣れるに従い、眼鏡をかけているのを忘れ、いつしか私たちの身体の一部となり、それを通して見たものはすべて真実だと感じるようになる。

 主観的バイアスは、ごく基本的な報酬学習のプロセスから生じるものであるため、食べ物の好みだけでなく、ほかのさまざまな面にも表れる。

(ジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』 岩坂 彰 訳 p43)


マインドフルネス瞑想でいつもの習慣をストップできる理由とは?

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ところが、マインドフルネス瞑想を継続し続ければ、選択肢「A」「B」「C」のうち、いつもは「B」を選んでしまうとしても、その「B」を選ぶ前に、一度立ち止まることができる。

たとえば、知人にひどいことを言われてストレスを受けたときにどう行動するかで、選択肢「A」「B」「C」があったとする。


「A」・・・相手に自分が「傷ついた」ことを伝える。

「B」・・・我慢してあとで他の自分の好きなことで憂さ晴らしをする。

「C」・・・あえて何もしない。


このとき、普段だったらすぐに「B」を選んでしまうところを、マインドフルネス瞑想を実践することによって、一度立ち止まることができるようになる。

ここでいう「一度立ち止まる」とは、マインドフルネスによって自分の感覚に意識を向けたり、身体や心の状態を観察したりすることである。

もちろん、そのあとに「A」や「C」を選択できるかどうかは、自分次第であるし、ほかの「D」というより良い選択肢も思い浮かぶかもしれない。


しかしここで述べたいのは、いつもの「B」を選んでしまう習慣が動き始めるのをストップすることができるということであり、これは例えば、ダイエットしなければならないとき、夕食後にアイスクリームを口にするまえに、マインドフルネスの習慣をはさむことで、食べるのを思いとどまるということでもある。

このことを、ジャドソン・ブルワー氏は、「森の中で迷ったときは、立ち止まり、深呼吸をして、地図とコンパス」を取り出すことだと説明している。


マインドフルネスとは、世界を今よりもはっきりと見ることだ。主観的バイアスのせいで道に迷い、同じ場所をぐるぐると回っているとき、マインドフルネスはそのバイアス自体に気づかせてくれる。その結果、自分がどうやって迷ったかが見えてくるのである。どこにもたどり着かない道を歩いていることにいったん気がつけば、そこで立ち止まり、不要な荷物を捨て、違う方角に歩き出せる。たとえて言うなら、マインドフルネスは、人生を歩む際に役立つ地形図となりうるのだ。

(ジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』 岩坂 彰 訳 p52)
 森の中で迷ったときは、立ち止まり、深呼吸をして、地図とコンパスを取り出せと私は教わった。位置関係がわかり、方角がはっきりした時点で、初めて歩きはじめるべきなのだ。本能に反するやり方だが、私は実際、これで命拾いをしてきた(今でもこのやり方を守っている)。同じように、物事をはっきりと見極めつつ、それに反応せずにいることで、自分が不ー快をどのように悪化させているか、また、どうすればもっとうまく取り組んでそこから離れられるのかを学んでいけるだろう。

(ジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』 岩坂 彰 訳 p53)


マインドフルネスで「心の習慣は断ち切れる」。

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以上ここまで長くなってしまったが、『あなたの脳は変えられる 「やめられない! 」の神経ループから抜け出す方法』(ジャドソン・ブルワー 著 久賀谷亮 監修・翻訳 岩坂 彰 訳 ダイヤモンド社)を取り上げながら、書評と要約も兼ねつつ、「やめられない」習慣はマインドフルネスで抜け出せるのではないかということについて、述べてみた。

正直なところ、本書は誰にとっても読みやすい本であるとはいえない。


しかし、本書の中盤以降では、自己関連づけに関わるデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる脳内ネットワークの働きが、瞑想によって弱まるという研究結果や、「フロー状態」、ブッダの教えのことなどについてふれていて興味深い内容になっている。

そのため、なぜマインドフルネス瞑想が、目の前の報酬にすぐに飛びついてしまう私たちの脳の習性やパターンを変える可能性をもっているのか、ということについて関心がある方にとっては、読んでみて損はない一冊である。


現代は、何でも自由に選択できる時代といわれており、SNSのタイムラインなども含め、日々、膨大な情報量のなかから、様々な選択をしているが、毎回本当に自分が望む選択を行っているかは、疑わしいと個人的に感じる。

その理由は先程も述べたように、これまでの成長過程で築き上げられた「習慣」によって、いつもと同じよう機械的に選択しているかもしれないからである。


そういう意味では、SNSによる情報発信やオンラインショッピングなど、インターネットなどを通じてたくさんのことを選択できるようになった現代においては、マインドフルネス瞑想の実践によって、いつもと同じ選択をしてしまう前に自分の感覚を確かめることで、本当にその選択が自分にとって本当に必要なのか、もしくは最良なのか、一度立ち止まってみるのも良いかもしれない。

 依存症的行動はどれもそうだが、反応は反復によって強化される。反復により抵抗のためのトレーニングをしているのだ。フェイスブックで「いいね!」を確認するたびに「私は良い」というバーベルを持ち上げ、刺激に反応してタバコを1本吸うたび、「私は吸う」という腕立て伏せをする。最近思いついた最高のアイデアを同僚にまくし立てるたびに、「私は賢い」という腹筋運動をしている。かなりのエクササイズである。

 そしてあるとき、私たちは自分の正の強化や負の強化の(永続的な)ループを持続させている輪の中を走り回るのをやめる。それはたいてい、疲れ切ったときだ。あらゆる条件反応に食傷したとき、それでは何も得られないという事実に気づきはじめる。

 立ち止まって人生を見つめ直すと、一歩下がったところから、自分が迷子になっていて、どこにもたどり着けない状況が見えてくる。コンパスを取り出して、間違った方向に向かっていたと気づくのである。ここでありがたいのは、自分でストレスをどう生み出しているかについて単純に注意を向ければ、つまり、ただマインドフルになれば、別の道に向かうトレーニングを始められることだ。

(ジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』 岩坂 彰 訳 p304)
 マインドフルネスを学べば、気づきと気遣いを深める生き方を身につけることができる。ドーパミンの分泌を求めて機械的にレバーを押し続けるよりも、あらゆる行動に注意を向けつつ、関わるものすべてを意識的に選択する生き方である。そのとき私たちは、浅い興奮に満たされるだけの人生ではなく、より幸せで健康的な人生を見出すだろう。

(ジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』 岩坂 彰 訳 p325)


なお、マインドフルネスの第一人者であり、『マインドフルネスストレス低減法』の著者としても有名なジョン・カバットジン氏は、本書『あなたの脳は変えられる』について、

「本書の内容の基礎となる研究は読みやすく説明されており、高度な科学についても非常にわかりやすい。この内容から読者は、学習について、また、心の習慣を断ち切ることについてまったく新しい視点を与えられるだろう。」

というコメントを寄せている。


 本書の内容の基礎となる研究は読みやすく説明されており、高度な科学についても非常にわかりやすい。この内容から読者は、学習について、また、心の習慣を断ち切ることについてまったく新しい視点を与えられるだろう。習慣は力ずくで断ち切ろうとしたり、意志の力や一時的なその場しのぎの報酬を利用して抑えようとしてもうまくいかない。そうではなく、「そこに在る」という領域に完全に入り込み、純粋な気づきそのものの空間に親しみ、「今」と呼ばれる時間のない瞬間の真っただ中でそうしたことがどのように可能かを発見することによって、習慣は断ち切れると本書は説明している。

(「本書に寄せて 「悪癖だらけの脳」を救う」『あなたの脳は変えられる』 p338)


『あなたの脳は変えられる 「やめられない! 」の神経ループから抜け出す方法』 目次

解説 やめられない脳をどうにかする ── 『あなたの脳は変えられる』をお読みになる方へ 久賀谷 亮

はじめに 私の脳はこうして変わった

序章 脳はこうして「悪癖」にハマる ── 「わかっちゃいるけどやめられない」の生物学的メカニズム

第1部 「つい、またやってしまった……」を科学する

第1章 「したい!」に流されない方法 ── 「やめられない」の脳科学

第2章 「いいね!」は脳の麻薬である ── ついついスマホを見てしまう理由

第3章 「ワタシ」が頭から離れない! ── 偏見・思い込みにハマるメカニズム

第4章 「雑念まみれの脳」を救うには? ── 過去・未来に振り回されなくなる方法

第5章 「反芻思考」が脳を疲労させる ── DMNの思考ループを止める方法

第6章 「愛情中毒」のニューロサイエンス ── 「燃えるような恋」が人を狂わせるまで

第2部 こうすれば、あなたの脳は変わっていく

第7章 なぜ、集中できないのか? ── 脳の「呪縛」を解く方法

第8章 ついカッとしてしまう人の脳 ── ストレスの正体

第9章 いつでも「フロー」に入れる脳になる ── 最高の集中状態は「学習」できる

第10章 「しなやかな脳」をつくる瞑想の習慣 ── 快感回路スパイラルから脱出しよう

おわりに あなたの脳は変えられる、ただし…

本書に寄せて 「悪癖だらけの脳」を救う ── 今こそマインドフルネスをはじめよう ジョン・カバットジン


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。


以下はマインドフルネス瞑想に関する有料記事ですが、途中まで無料で読めますので、よろしければご覧ください(^^♪


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