家路【私小説】
家路は良い。何をして過ごしてもいいから。そしてなにより個人的な自分に戻れるから。
今日は水色の夕暮れを見た。街のすべてが空の水色に照らされていた。灯りのあるところの人々は飴色の影を作っていた。
電車に乗り、ゆられながら、今日は音楽を聴いた。友人と共有しているプレイリスト。友人のことを、遠くに感じた。いつでも適切な距離のことを思う。
電車を降りて、音楽を切り、自転車に乗った。この前オイルをたっぷり注油したからするする走る。オイルが切れてガキガキ軋んでいるのもスチームパンクっぽくて好きだったけれど、スムースなのはやっぱり、良い。
玄関を開けるために鍵を取りだす。ただいまを言って、父としての自分に立ち返るのだ。そうしたら話そう。今日見た水色の夕暮れのこと、するすると走った自転車のことを。お土産に買った、エクレアと一緒に。
了