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【文章作成の基本】推敲力を磨く

 簡潔に言えば、「文章書いた後に必ず見直しをしようぜ!」という話ですが、それにはどんな力が必要か、どうすれば推敲力が磨けるか、というのが、ここでのお話しです。

「見直しをしろ!」と促しても生徒ができない理由

 以前からお話していますが、中高生のみなさんは、文章書いた後に見直しをしてない(であろう)方が多いです。この記事は、今週分の中高生の方々が書いた文章の添削作業が終わってから書いているのですが、今週の原稿もまあミスが多かったですね。誤字や脱字、衍字(関係のない余計な文字)はざらにありますし、一文が長過ぎるため主述のねじれが起こり意味が通らなくなった文など、様々なミスがありました。

(なお、私の記事を初めて読む方は、「自己紹介」の記事を先にご覧ください。私が何の仕事をしている何者か、わかります) 

 内容についてはともかく、これも以前から言っていますが、これら表記・表現の形式面でのミスのほとんどはケアレスミスだと、私は思っています。見直しをすれば絶対出てこないミスです。本当にそう思い込んで書いているのだとしたら、その生徒さんの言語技術レベルでは日本で日常の生活を送ることはできないでしょう(漢字を間違えて覚えているとかはあり得ますが)。書き終わった後にその自分の書いた文章を見返せば、必ずその間違いには気付くはずです。ですから、たぶん見直しをしていないのだろうな、と私は踏んでいます。そのときは、特に間違いの多い生徒さんの原稿には「見直しをしてください」と赤でコメントを入れています。

 しかし、そんなコメントしながらも、「これ根本的な解決にはつながっていないんだよな」とも思っています。たぶんそれでも見直しや推敲をしない(できない)生徒がいることを、私は塾や予備校で講師をしていたこともあるので経験として知っているからです。しかし、これだけのことについて長々とコメントをしていたらいくら紙の余白があっても足りないので、このように一言で注意喚起をするわけです(注意しないという選択肢はありませんから書かないわけにはいきません)。

 ただ、そうした見直しや推敲をしないことがその生徒の怠惰だとは思っていない、というのは、以前「文章を書く『体力』の重要性」の拙記事でも申し上げた通りです。かりにその生徒を呼び出して「手を抜くな!しっかり見直しをしろ!」って怒鳴りつけて顔をバチンと張っても(もののたとえです!絶対にそんなことをしてはいけません!体罰はダメ!)、たぶん十分な見直しはできないでしょう。これも「文章を書く『体力』の重要性」の拙記事でも申し上げたように、そうした生徒さんの多くは、普段文章を書いていないため長い文章を書く体力が身についておらず、書き上げた段階で、改めて集中して見直しをする余力がないからです。見直しには体力が必要なのです。

(「文章を書く『体力』の重要性」についての記事はこちら。)

 さらに、体力だけの問題ではありません。見直しや推敲には、実は相応の知識と技術が必要です。当たり前ですが、「見直しをしろ」と言われて、「どこを見直すべきか」がわからなければその当人は見直しのしようがありません。また見直しをしてどのように直すのがよいのか、といったことには相応の推敲技術が必要であり、単純なケアレスミスは気付いて直せるとしても、「しっかり推敲する」ことは、大人でもなかなか難しいことだと私は考えています。世の中に専門の校正者や校閲者が存在するのはこういう理由からで、「ミスをミスだとわかる」知識と「ミスを正しく直す」技術、つまり「推敲力」がここでは必要なのです。私が赤で「見直しをしてください」とコメントしただけでは根本的な解決にならないと言ったのは、こういうことからです。

 とはいえ、全く見直しをしないわけにもいきません。多くのミスをそのまま放置することになってしまいます。そこで、中高生でもわかる見直しのポイントと中高生でもできる推敲の仕方について簡単にまとめていき、「推敲力」の磨き方について述べていきます。

見直しのポイントとその推敲の仕方(※高校受験生・大学受験生対象)

 文章には、以下の見直すポイントがあります。

 1表記
 2表現
 3原稿用紙の使い方
 4構成
 5内容

 まず、一つずつ簡単に解説していきます。一つ目は「表記」。これは主に漢字とかなづかいがあっているかについてチェックします。二つ目は「表現」。主に前後文脈にあった適切な表現かどうかをチェックします。三つ目は「原稿用紙の使い方」。原稿用紙の使い方のルールにあっているかどうかをチェックします。四つ目は「構成」。構成には「文構成」と「段落構成」があり、文や段落の組み立てられ方についてチェックします。五つ目の最後は「内容」。内容が適切かチェックします。

 次にどのように推敲(チェック)していくかですが、これは一度に全項目を同時にチェックするわけにはいきません(しっちゃかめっちゃかになってしまいます)。手順は大きく分けて三つです。

 あ、その前に。言い忘れていたことがあります。推敲の際には、必ず「他人目線」で自分の文章をチェックしてください。これは中高生のみならず大人もそうなのですが、自分の書いた文章に対してチェックが甘くなってしまうものです。ですから、自分の書いた文章であることはいったん忘れて、他人の気持ちで、さしずめ自分がその文章の採点者や評価者になった気持ちでチェックしてみてくださいね。

 最初は、流し読みして1と3だけチェックします。1と3は文章内容に深く関わらない項目です。間違い探しの要領で、ざーっと流し読みでいいです。内容を深く頭に入れる必要はありません。文字が正しいかと原稿用紙の使い方のルールに正しく従っているかについてチェックします。特に原稿用紙の使い方のルールで主だったものは、「句読点やかっこ閉じは行頭に置かず、前の行末に収める(行頭禁則処理)」なので、それは行頭だけ流すようにチェックします。

表記についてはこれらの記事で確認できます。)

原稿用紙の使い方のルールはこれらの記事で扱っています。)

 次は、文章の意味と内容を頭に入れながら読み、2と4をチェックします。ただし内容のよしあしを吟味する必要はありません。あくまで、「意味がしっかり通る文章になっているかどうか」だけを見ます。「意味がわかる文」になっていれば、どんなクソみたいな内容でもOK(言葉が汚い(笑))。意味や内容がわかればよいです。そこはスルーです。どんどん読み進めてください。「ここ読んでいて意味がわからないな」というところの表現や構成だけをはじいて直していきましょう。ただ表現については「話し言葉」や「俗語」、「一般化されていない略語(部活動で部員の間だけで使っている略語など)は、意味が通っていてもはじいてください。それは正しい表現に直してください。また、文体が統一されているかどうかもチェックし、文体が違う場合ははじいて直してください。一方、構成に関しては、一文は60字程度(400字詰め原稿用紙で3行)に収めます。それ以上長くなったら、仮に意味が通じるものでも文を分けてください。それは文構成が複雑になっており読みづらい文になっています。そして、段落構成は、段落主旨ごとに段落がまとまっているか、確認しましょう。

表現についてはこれらの記事で扱っています。)

文体についてはこちらの記事で扱っています。)

構成についてはこれらの記事で扱っています。)

 最後に、全体の文章内容を俯瞰で見ます。たとえば受験小論文の場合は、再度設問と課題資料に目を通し、その問題が聞いていることに対して、しっかり答えている文章答案であるかどうかチェックします(ここがクリアしないと評価はほとんど与えられません)。そして論旨が一貫しているかチェックします(課題文に賛成の立場の小論文が途中で反対の立場になっているなどといったことがないようにします)。志望理由書の場合は、その大学や学校を選んだ理由として適切な内容になっているかチェックし、ここでも論旨が一貫しているかをチェックしましょう。※ただし、この段階では最低限の修正しかできないので、そこは覚悟しましょう(小論文試験の場合)。

 このように余裕があったら、三回見直して(推敲して)ください。時間がないときは、最低でも最初の流し読みチェックはしましょう。少なくともつまらないケアレスミスは回避できるはずです。

推敲力の磨き方

 ここまで読んできた人で察しのいい方はもうおわかりかと思いますが、推敲力は文章作成力(文章作成に関する知識や技術がどれだけ身についているか)に比例します。つまり簡潔に言えば、十分に推敲ができる人は十分に文章が書ける知識と技術のある人であり、文章が書ける力のある人でないとしっかり推敲はできません。

 話が少し横道に逸れるのですが、以前他の方のnoteの記事で「これからは生成AIの時代だから文章が書けなくてもいい。AIが作った文章を校正する力だけあればいい。」とおっしゃっていたのを読んだのですが、私の意見は違います。たぶん文章が書けない人はAIの作った文章の推敲も校正もできないと思います。文章作成に必要な知識や技術がある一定のレベル以上ないと、十分な推敲はできないと私は考えます。

 「では、文章力の十分にない学生には見直しや推敲はできないんじゃないか」。……うん、そうかもしれませんね。しかしそこは「でもやるんだよ!」の精神で取り組んでください、とその生徒には申し上げたいです(笑)できないからやらないでは、この先ずっとできません。ずっと見直ししないままだったら、この先もミスの多い文章を書き続けることになります。小論文だろうが志望理由書だろうが、文章はくり返し書いていれば必ずうまくなります。これは本当です。文章を書くことほど、努力を裏切らないものはないと、私は今まで教えてきた経験からそう考えます。もちろん個人差はあります。元々書くのが得意な子は何回か書いただけで十分な文章作成力が身につき、苦手な人はなかなか身につかないなんてこともあります。でも誰でも書くことをやめない限り、昨日より今日は文章力は上がっているし、今日より明日はもっと文章力は上がるはずです。

 そしてその文章作成の練習の際に、見直しや推敲も必ず一緒に行っていくのです。本番と同じように、練習の際も自分で自分の文章を見直すことを行い、それを習慣化していくのです。そうしたら文章作成力の向上に比例して、必ず推敲力も向上します。前述の「文章を書く『体力』の重要性」でもお話ししたように、書くことはスポーツに似ています。何度もくり返し書き、何度も失敗して、そのうちに文章作成力や推敲力がつき、しっかりとした文章答案が書けるようになる、と私は思います。この記事の内容を参考にして、是非おうちでも文章作成後に見直しをしてみて、試験本番の見直しの予行演習を行ってみてください。


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