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【文章作成の基本】「いろんな」は話し言葉?

 この仕事は日々勉強ですね。まだまだ知らないことやわからないことがあります。

 プロフや自己紹介にも書いたように、私は20代の時から学習塾に勤務し、その後予備校や出版社に勤務し、今は在宅で添削指導をしています。初めて学生の書いた小論文を添削してから早20数年。自慢ではありませんが、この業界ではベテランに入ると思っています。

 しかし、今回紹介することは、恥ずかしながら在宅指導を始めてから知ったことです。まだまだ私も、修業が足りませんでした。

 在宅指導は4年前から始めました。業務委託元から委託を受け、中高生の書いた文章を添削します。

 その添削した原稿は、委託元の担当者によって改めてチェックされます。私も人間ですから、その原稿のミスで私が見落としているところがあり得ます。委託元に原稿を提出するとき、私は自分でチェックしてから提出しますが、それでも実際見落としがあります。そうしたものがないかどうかを、担当の方がチェックするのです。そしてそうした「私のミス」があったときは、担当の方から指摘を受けます。

 この在宅指導を始めたばかりの4年前のある日、担当の方から指摘を受けました。「『いろんな』は話し言葉なので、赤入れして指導してください。」とのこと。これは見落とし…、ではありませんでした。

 これを話し言葉であるという認識が、私にありませんでした。普段から私も余りに自然に使っているので、気が付きませんでした。たしかに「いろいろな」が音便化しているので、いかにも話し言葉っぽいですが…。

 お恥ずかしいと思いながらも、辞書を引いてみました。

いろんな【(色んな)】(連体)〔話〕いろいろな

三省堂国語辞典 第七版

 ほんまや…。〔話〕=「話し言葉」でした。連体詞です。こんな簡単な言葉、なぜ今まで知らなかったのだろう?それはともかく、以来はこの言葉に赤入れして指摘するようにしています。

   しかし、元の「いろいろな」は辞書にどう出ているのだろう?気になって、そちらも調べてみました。

いろいろ【(色々)】一(副・形動ダ) ~中略~ 二(名)

三省堂国語辞典 第七版

   「いろいろな」では出ていません。「いろいろ」でこのように一項目になっています。で、「いろいろ話す。」という副詞としての使い方、「人の好みもいろいろだ。」という形容動詞の使い方が正しいと、一の意味で掲載されていました。

   ここで一つの事実に気が付きました。

 「いろいろな」という連体詞は存在しないのです。「いろいろだ」という形容動詞の連体形が、「いろいろな」となるのです。そしてそれが「いろんな」と話し言葉になるに至って、連体詞となったと考えられます。

 たしかに、「いろいろだろう」、「いろいろだ」、「いろいろで」と活用できるため、「いろいろだ」は形容動詞ですが、「いろんな」は「いろんだ」、「いろんで」とは活用して使うことはないため、「いろんな」は活用しない連体詞と言えます。

 面白いですね。これは一つ勉強になりました。

 これも、中高生の作文や小論文では多く目にする表現です。私のように気が付かなかった人もいるかと思いますが、「いろんな」は話し言葉なので、この表現は文章中では避けてください。

 なお、他の話し言葉として避ける表現は、以下の過去の記事でも確認できます。

注:形容動詞は、活用語(いわゆる用言)の一つ。連体詞は、活用しない。

参考図書:三省堂国語辞典 第七版 2014年1月10日 第一刷

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