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【文章作成の基本】かなと漢字の使い分け(表記)

 日本語はひらがなとカタカナ、漢字を適宜使い分けて混ぜ書きします。しかし「かな」ばかりでも、また「漢字」ばかりでも、文章が読みづらくなるのは、想像すればわかるでしょう。では、文章中で、かなと漢字はどのように使い分ければ、読みやすい文章になるのでしょうか。厳密な使い分けのルールがあるわけではないですが、一般的な文章作成においての、その目安をここでは示していきます。

1.かなと漢字の比率は、「7:3」

 一般的に理想とされる、かなと漢字の比率は「7:3」です。かなが多くなると幼児向けの本の文章のようになるため、読みづらくなります。また漢字が多くなると漢文や中国語のようになるため、これもまた読みづらくなります。正確にこの比率を守る必要はありませんが、自分が書いた文章を流し読みしたとき、「このバランスが少し崩れているな」と思うようなら、調整する必要があります。

2.使う漢字は、基本的に「常用漢字」。

 使う漢字は、基本的に「常用漢字」が望ましいです。常用漢字外の漢字は、極力避けます。「常用漢字」とは、要は高校生までに習う漢字です。常用漢字であれば、一般的な生活の中で多用されるものであるため、問題なく使えるでしょう。難読の漢字は、読み手が読みづらく感じるため、なるべく避けるのがよいです。ただし、人名漢字や文脈上その難読漢字を使わなければならないとき(たとえば、歴史小説でその時代を踏まえた背景を描く必要性があるとき、哲学書でその哲学用語を用いないと説明できない概念があるときなど)は、例外です。

3.「和語由来のことば」はかな表記、「漢語由来の熟語」は漢字表記が基本。

 和語(やまとことば=古代日本語)由来の語句はかな、漢語(中国語)由来の語句は漢字で表記するのが原則です。これは訓読み(日本語由来)と音読み(中国語由来)で分けて考えるとわかりやすいです。たとえば、「さわやかな」という形容動詞は、古代日本語由来なので、「爽やかな」よりも「さわやかな」が表記として自然です。一方、「読書」や「不可欠」は、それぞれ「書ヲ読ム(本を読む)」や「欠ク可カラズ(欠かせない)」といったように、古代中国語(要は漢文)に由来する熟語なので、漢字表記が自然と言えます。もちろん、これも絶対的な規則というわけではなく、あくまで目安です。たとえば、「おおきなくりのきのしたで」よりも「大きなくりの木の下で(※『栗』は常用漢字ではない)」の方が読みやすくなるので、実際は1、2やそれ以外のルールと合わせて運用していきます。

4.熟字訓や当て字は使わない(漢字表記にしない)。

 「従兄弟(いとこ)」、「団扇(うちわ)」、「海豚(イルカ)」などの熟字訓や「亜米利加(アメリカ)」、「亜細亜(アジア)」などの当て字は基本的に使いません。読み手が読めないことがあるので、それぞれかな表記にします。ただし表記として一般化しているものや固有名詞は除きます(例:米国、日米関係の「米」。「亜細亜大学」などの固有名詞)。

5.体言(名詞)と用言(動詞・形容詞・形容動詞)は漢字表記。それ以外の品詞はかな表記が基本。

 今度は品詞での区分です。「馬」、「車」、「家庭」、「訪問者」など体言(名詞)は基本漢字表記にします。また、「走る(動詞)」、「寒い(形容詞)」、「豊かだ(形容動詞)」など用言は基本漢字表記にします。逆に、それ以外の品詞はかな表記が原則となります。「したがって(接続詞)」、「さらに(接続詞)」は「従って」、「更に」としません。「ある(連体詞)」、「この(連体詞)」は「或る」、「此の」としません。「たぶん(副詞)」、「ちょうど(副詞)」は「多分」、「丁度」としません。「ああ(感動詞)」、「おはよう(感動詞)」は「嗚呼」、「お早う」としません。もちろんこれもあくまで目安です。たとえば「大きな(連体詞)くりの木の下で」や「宿題を全然(副詞)しない」など、漢字表記にするものもありますので、他のルールと合わせて運用すべき規則です。

6.形式名詞や指示代名詞は、かな表記が基本。

 たとえば「誰かに話したかったこと」の「こと」のような、一般名詞や人称代名詞(「私」、「彼」、「彼女」など)ではない形式名詞は、同じ名詞でもかな表記です。「ところ」、「ため」、「こと」、「くらい」、「ほど」、「とき」などは漢字表記にします。たとえば「信号機故障の為、電車が遅延します」は、「信号機故障のため……」とします。「その時、事件が起きた」は「そのとき……」とします。また「それは違う」などの指示代名詞も、「其れ」と漢字表記せず、かな表記にします。「それ」、「これ」、「あれ」はかな表記が基本です。これに関してはほとんど例外則がないので、絶対的なルールとして考えてよいでしょう。

7.付属語(助詞、助動詞、補助動詞、補助形容詞)は、かな表記が基本。

 自立語ではない付属語(助詞、助動詞、補助動詞、補助形容詞といった、それ自体では自立しないことば)は、かな表記が基本です。たとえば「家迄、五分かかる」、「ボール遊び等は禁止です」は、「まで(副助詞)」「など(副助詞)」とかな表記にします。「飛ば無い」、「楽しく無い」、「行って来る」は、「ない(助動詞)」、「ない(補助形容詞)」、「くる(補助動詞)」とかな表記にします(そもそも「行って来る」では意味が変わってしまいます)。これもほとんど例外則がない、絶対的なルールとして考えてよいです。

8.カタカナ表記は外来語と科学用語に限る。

 これはみなさん、ご存じですね。「インターネット」、「ショップ」、「コンビナート」など外来語はカタカナ表記です。逆にそれ以外はカタカナ表記しません。ひらがなか漢字で表記します。たとえば「その知らせを聞いて、私はビックリした」は、「……びっくりした」とひらがな表記にします(「吃驚」という漢字表記もありますが、当て字であり「吃」は常用漢字外)。また科学用語もカタカナ表記です。「アルミニウム」、「マグマ」などの外来語は言うまでもありませんが、たとえば生物学の問題としてそれを文章中で扱う場合は、日本語であっても「ネズミ」など、カタカナ表記にします(一般的な文章の中では『ねずみ』)。なお漫画表記の影響か、擬態語や擬音語をカタカナにするケースがありますが、これも基本はひらがな表記です。しかし、文章の内容やジャンルによっては、擬音語において許容されるときもあります。たとえば「壁をドンドン(擬音語)たたく」は(明らかに物理的に音がなっているため)許容できますが、「日本は高齢化がどんどん(擬態語)進んでいる」はひらがなで表記します(副詞なので基本ひらがな表記)。

 以上、参考にしてみてください。なお、これは中高生が小論文や志望理由書を書くときなどを想定しています。短歌や俳句、詩、エッセイや小説などの文芸的文章では異なる部分があるなど、書く文章の内容やジャンルによっても変わりますので、ご了承ください。

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