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地方創生Coach Note【復興へ向けての振り返り⑨「回避モチベーションを扱う・ということ」】

前回はこちら。
ブレイクスルーが【誰かの「正しい答え」に従うのでなく、また一人一人のバラバラな「私の答え」に任せるのではない、私たちの「意志(方向性)」を生みだされること】という状態を明確にして、これまでの行政失敗あるあるといった事例のような失敗を繰り返さないように・と触れてきました。
 
とはいえ、東松島市や女川町と言った出来た自治体もあるわけですので、考え方一つ。勇気をもって決断し、実行することで既存の仕組みでも出来る状態が備わっている。そのことを踏まえ、今回は進めていきたいと思います。

☆優れた聴き手

一対一、あるいはファシリテーションを必要とするグループ。いずれにおいてもこうした被災地においては「聴く」という態度がとても問われるところです。対話より付箋貼りを優先しているような手法では、こうした「場」において納得する全体を作れないことは、これまでにも触れてきました。
 
特に、日本人はインプットありきの教育を受けてしまう社会背景もあって、せっかちに進行してしまうと当事者に話す(アウトプット)機会というものがより生まれません。
 
有名なGoogleのプロジェクト・アリストテレスの分析で「生産性のあるチームでは、メンバーの発言量が近づく(同じくらい)」というデータがあります。

こうしたデータから導かれる日本でよくある風景は、発言時間を均等に与えて管理すればいい・という「結果」にだけフォーカスした対応です。まさに本質を見誤った手法であり、みなさんにもどこかで心当たりがあるシーンではないでしょうか?

そこにどんな意味があり、何を現わしているのか?という「理解」のステップを踏まないために、こうした間違ったエビデンスの使われ方がよく発生しています。
実際、Google の解析でもこの数字は、お互いに「聴きあう」ことがチームの日常だからこそ生まれている・とわかっています。そして一方で、人の後悔の多くが「聴かない」事に由来している・といったエビデンスがありますが、このデータを逆の側面から裏付けるものでもあると言えそうです。
 
このように、人と人の心理的安全性、信頼関係はすべからく「聴く」という行動から始まることがほとんどです。相手にボールを預けて、どんな言葉も受けながら返していく。この地道な一歩目をどれだけの「質」で実行していくか。
 
よく観察し、よく聴いて、そして対話をする。

傾聴と言えば聞くことと勘違いをして、聞くだけに徹してしまう人も多いのですが、相手が一方的に話をしたと感じる状態は「傾聴」と呼べる状態ではありませんよく対話が出来たと感じ「よく聴いてもらえた」と相手が思える状態でこそ「傾聴」があるのです。
 
そのうえで、相手の言葉だけを解釈し、受け止めるのではなく、言葉の先にある本当に感じていること、本当に伝えたい事、まだ言葉に出来ていないことを共に探索する。
 
それがこうした「場」に必要不可欠な傾聴という態度なのです。

☆「起こりうる未来」というテーマ

これらの「傾聴」という態度、行動とあわせて、アダム・カヘンからよりよく学べる一つに「起こりうる未来」というシナリオ・ファシリテーションがあります。
 
ここまで触れてきたモン・フルーでは「ネルソン・マンデラ(黒人側の最高指導者)が暗殺されたら」といったシナリオもあった(最初はガチ過ぎと感じましたが、それが話せる環境。心理的安全性が出来るからだな・と最近は感じています)ようですが、こうした「起こりうる未来」へのアプローチから参加者達が一つにまとまっていくプロセスは、こうした復興のような有事にはとても大切な事でもあると考えます。

人は、自分のことよりも、自分以外の誰かのことに関してより客観視出来て、話しやすくなるものです。
メンタルコーチは普段から「制限のない未来」を扱うことが多いので、ついこうした状況でもポジティヴで理想的な活動を押し付けようとしがちです。しかし、大きなマイナス状態の「場」においては、この「制限のない未来」は効果が薄い、あるいは逆効果となる結果が待っていることがほとんどと言えるでしょう。

なぜなら、このような逆境の状態、状況を乗り越えていく力を引き出し、加速化させていく為には、当事者にとって自らの小さな行動がマイナスからゼロ(通常)に近づいているという「実感」があることが、とても大切になるから。その一歩にとても価値があるからです。
 
なので、現地で当事者たちと関わっていく上では、通常使われやすいポジティヴなコーチングアプローチとは異なる「回避」のモチベーションを用いる視点や習慣化の支援における小さな成功体験を積み重ねていくアプローチと言った手法が優位に立ち、高い親和性を示すのです。
 
津波でエリア崩壊した風景の中にあって、インフラが全て戻り、より以上に備わり、東京都は言わずとも都道府県庁所在地に近いような未来の状態を描く。被災地とは遠く離れたどこかで作られた「復旧」計画を当事者に押し付けても、そこに共感は生まれません。今の三陸エリア各所にみられる人の熱が通わない場所になり、結果として「復興」から遠ざかってしまう。これは、こうした科学的見地からも予測しうる当然の未来像です。
 
この点で、カヘン達が使った「回避」する未来を描いていくというアプローチ。それは、とても理にかなっていると改めて感心しきりに思います。
 
実際、日常、普段のコーチングでも、最悪の状況を想定したり、最低限ここまでといったラインをクライアントと探るのは、上手なCoachなら普通に出来ていることではないかな・とも思います。
 
*続きます!


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