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世界とヒトと会話するために

テレビはつけないし、ニュースも自らチェックしない。気がつけば毎日NetflixやSpotify、自分の部屋の本棚のもの、ネットだけで埋もれている。一昔前のようにラジオを聞くこともなければ、新聞はこのご時世だし、頼んでいない。


自分は帰国子女だ。海外に長年住んでいて帰ってきたばかりのもの。世界を自ら知ろうとしなくたって友人や家族から海の外の情報は言わんとばかりに入ってくる。


けれどもなぜ、今になって学生時代の自分を少し悔やんでいるのか。なぜもう少しやっておけばな、と思うようになったのか。それは、それこそ、自ら世界を知ろうとしなくたって海の外の情報が言わんとばかりに入ってくるからだった。

大学時代、一緒に住んでいたフラットメイトはふたりともスマートで脳の回転が早いような考え事の切り返しのいい子たちだった。いつもどこかでこの子たちの会話の中に上手く入れていないと感じていた自分にはその子たちほどにしてきてなかったことがあったからだろう。


勉強。


高校2年生までは日本で暮らしていた自分はその当時全くと言っていいほど勉強をしなかった。教科書を開いたところでなにが頭に入ることもない。勉強の仕方がわからないようなアホだった。通っていた高校の偏差値も当時40くらいの、大きな声で笑って言えるような数字でもない。勉強してこなかったことに後悔しているわけではない。だってテストや試験、毎日の退屈な授業は必要ないとすら思える。
けれど、なぜロンドンでいい大学に入った自分が他の子たちとの差なんかで「勉強をしておけばよかった」なんて思うか。それは上記でも言ったけれど、やはり心のどこかでいつも自分だけ上手く会話に入れていなかったから。
喋るのが下手とか、英語の発音がどう、とかそういうしょうもないことではない。

自分には相手の考えに対して「議論する」という考えがそもそもほとんどないから。議論してみたとして、それは上手くできたものではないはず。勉強をしてこなかったばかりに、そういう仕組みがきっといまいちわかっていない。だがしかし勉強が問題ではないのは分かっている。

ここでの「勉強」とはつまり、他のひとに比べた時の読み物(情報)の量のテイクインとそれのアウトプットの回数。

大学のクラスメイトとシェアしていた家にはテレビがなかったため、家に帰ってすることはみんな決まって揃ってパソコンを開くことだった。彼女たちは毎日、知らないうちに日常的にさらっと読み物をこなしては「昨日どこどこでなになにがあったらしいね」「あの会社がどうだね」「あのブランドとうとうあれだね」と言った様々な方面のニュースなるニュースをつまみあげては、日頃の日常の会話に放り込んでいた。それがとてつもなく上手い彼女たちはやっぱり自分に比べて人との会話の弾ませ方もうまかった。人との会話がうまかった。

英国人だけに限るとは思わないが、英国の若者は若くしたって誰でも政治についての個人的な意見が言える。政治は全員知ってるし、政治だけじゃなくて、何についてもみんな適度に勤勉で知識が渡っていた。少なくとも自分の知っているクラスメイトのスマートだと思う人々はみんなハッキリとした個人的な意見をいろんなことに対してちゃんと持っているような人たちばっかりだった。チューターたちと生徒が議論しているような場面は珍しくはなかったし、生徒の意見や考え方の方が鋭いなんてのも少ないことではない。若いから、逆にフレッシュな角度で意見を述べれていたことがきっと何度もあった。

そういう場面を見ては自分にはそんなことは出来ないなと惨めになったのはやっぱりこの"自分の生きる世界の情報"のテイクインがその子たちより少なかったから。情報のテイクインが多い子たちはやっぱり作っていたものも説得力があったし、なによりもかっこよかった。


だから、思う。

自分がその子たちのようなスマートな人間になるにはきっともう少しの「勉強」が必要なのだと。初めてイギリスへ移った時、誰もが口を揃えて自分に言ってきたことがある。

"Read more books."


小説は違うことを考え始めちゃうし、苦手。けれど小説以外の自分が興味のあることを読み始めてみる。本じゃなくたって、世には探さなくても読めるものがそこらじゅうに虫のようにある。本をたくさん読むことはそのひとたちが自分に言ってきたように大切なことだと思う。自分は英語力をつけるためだけだと思っていたが、違う。

書物を読むということは誰かの書いたものを読むということ、誰かの意見に目を通すと言うこと、そこで感じたなにかに対して初めて生まれるのが自分の意見だということ。自分の意見をいろんな方面で持つことによって、ひととの会話がもっと上手くなる。物事に対しての考え方にいろんな方面が見えてくる。


だから、勉強することは大事なんだろうと。


24になった今、それに気付いて必死に読み物をしようとしている。

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