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漂流日記

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人生迷子の旅路の記憶
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2021年8月の記事一覧

電車にさえ乗ってしまえば

電車にさえ乗ってしまえば

世に蔓延る不安を数えていたら、東京で電車になんか乗れない。

通り魔に刺されるかもしれない。硫酸をかけられるかもしれない。感染症に罹患するしれない。東京ではそんなことを考えていたら、一生電車に乗れないまま、不安症で死んでしまう。

昨日、久しぶりに電車に乗った。乗ってみたら、何てことはなかった。乗り換えもちゃんとできた。刃物も劇薬も目にすることはなかった。運がよかった。今日を生きるということは、そ

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憂鬱はだし巻き卵とともに

憂鬱はだし巻き卵とともに

心を落ち着かせたいときは、だし巻き卵をつくる。

学生の頃からの、私の小さな習慣。

卵焼き器を買ったのは、大学一年の夏。
一人暮らしで自由になって、何かひとつの料理を極めたかった。お店で食べただし巻き卵があまりに美味しくて、私も美味しいだし巻き卵をつくれるようになろうと思った。

卵を割る。入れるのは、醤油、砂糖、みりん、だしの素。分量はいつも感覚。不味くなったことはないから、私は自分の感覚を信

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小説家で在ること

小説家で在ること

「本を作りたいなら金を用意しろ」
「本を売りたいなら身体を売れ」

どちらも
物書きのはしくれとして生きてきて
浴びた言葉だ

何かを為すにはリスクを背負う覚悟が要ること
それはわかる
痛いほどわかる

何かを得るには何かを捨てる勇気が要ること
それもわかる
苦しいほどわかる

でも私は
自分の思いを
お金を払うこと
身体を売ることで

汚したくなかった
守りたかった

たとえ
覚悟がないだけだ

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ベーコンをバターで炒める日

ベーコンをバターで炒める日

今日は、「ベーコンをバターで炒める日」と決めていた。

体調が悪いと何も出来なくて、何も出来ないことに落ち込んでしまうから。せめてひとつ、したいことを決めようと思って。

昨晩は一人暮らしの部屋に帰ってきて、そのまま床で寝落ちしてしまった。煌々と電気が灯る部屋で起きた瞬間挫けそうになったけれど、いやまだ朝だ、これからだと思い直してシャワーを浴びた。

久しぶりに近所のスーパーへ行き、ベーコンと野菜

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実家の自室で言葉を綴る

実家の自室で言葉を綴る

雨と流行病のおかげで、実家に軟禁状態が続いている。
2日で少し痩せた。This is 実家ダイエット。

外に出たい。友達に会いたい。雨がやまない。

不意に、米津玄師は実家の自室で絵を描いていたという話を思い出し、私も実家の自室で小説を書いてみた。だからといって米津玄師にはなれない。夢ならばどれほどよかったでしょう。私は玄米よりパンが好き。

半ば物置と化した部屋で、蹲るようにして言葉を綴った。

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お盆、雨、傘屋の夢

お盆、雨、傘屋の夢

お盆はずっと雨みたいですね。
夏なのに変な感じです。

8月も漂流が続いています。
時々溺れたり岸辺で息をしたりしながら
大きな川を泳いでいます。

生活って何だろうって時々考えます。
日々が穏やかに流れていくことかなとか
ものごとをひとつずつ許すことかなとか。

誰かと生きるって何だろうって時々考えます。

髪の毛が同じ匂いになることかなとか
朝ごはんを一緒に食べることかなとか。

そういえば実

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