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小説家で在ること


「本を作りたいなら金を用意しろ」
「本を売りたいなら身体を売れ」

どちらも
物書きのはしくれとして生きてきて
浴びた言葉だ

何かを為すにはリスクを背負う覚悟が要ること
それはわかる
痛いほどわかる

何かを得るには何かを捨てる勇気が要ること
それもわかる
苦しいほどわかる

でも私は
自分の思いを
お金を払うこと
身体を売ることで

汚したくなかった
守りたかった

たとえ
覚悟がないだけだ
勇気がないだけだ
夢なんて叶わないと嘲笑われても

私は私が
ずっとずっと大切にしてきた思いを
守りたかった

夢ってなんだ
叶わないってなんだ

小説を書くのが小説家なら
私は5歳の頃から小説家だ
とっくに叶っている
とっくに

夢なんて言葉じゃ表せないよ
書くことは人生そのものだ
痛々しくて苦しくて
尊い現実そのものだ

*

いつからか
小説家になりたいではなく
小説家で在りたいと思うようになった

書くことで生きてきた
私にとっては呼吸だった

だから私にとって大切なのは
大切な思いを大切にしながら
書き続けること
生き続けることだ

その過程でなにかのかたちになれば嬉しいけれど
それはあくまで過程だ

大好きな
絵を描く友達と
詩集をつくる約束をした夜

大好きな
歌を歌う友達と
歌をつくる約束をした夕

あの
心が奥底から救われるような感覚

かたちにするなら
あの感覚で
かたちづくりたいのだ

*

私の言葉を

見つけてくれるひと
読んでくれるひと
大切にしてくれるひとがいるから

どんなに傷ついても
書き続けることができる

いつもありがとうと思う
それを伝えるためにも
私は書いていたいと思う

心が弱って
身体も弱って
毎晩
明日死んでいたらどうしようと思うけれど

書きたい思いが
私を生かして
生きたい思いが
私に書かせている

遺書を残すために
書き始めた小説が

いつしか私の生きる理由になった

でも
命綱は間違えると
首を絞めてしまうことを知ってる

ね太宰さん

命綱は
苦しくなったら緩めたり
絡まったら解いたり
落ちそうになったら掴んだりしないとだよ

救いを呪いにしないようにしないとだよ

私は私が大切にしたいもののために
書いて生きるよ

忘れそうだから
残しておきたかったの

つい首なんか絞めないように
残しておきたかったんだよ

今日は何だか
疲れてるみたいです

草々


眠れない夜のための詩を、そっとつくります。