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序章 突然・・・

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繋がる

繋がる

むかし
映画の「バベル」を見た時に
自分では気づくことのできない
自分の一番大事なものに気づかせてくれる
これが神様の愛というものなのか?
と思った

一番大事なものに気づけずに
ないがしろにしていたり
あるいは気づいていても
そこから逃げ続けていると

ある日突然
それはとんでもないことになって
目の前につきつけられる

そう思ったのは
自分が体験したからだ

母が精神状態を崩し
叫んで暴れて

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任務遂行

任務遂行

何度目の母の入院の時か忘れたが
お見舞いの帰りに病室で
明日もくるからねと母に告げた
その翌日に大雪が降った

さすがに雪が降るとは
全く思っていなかったので
お見舞いに行くのを止めようかとも思ったが

母は私が来ることを
もしかして楽しみにしていたら
個室でひとりの母を
がっかりさせるのは可哀そうだし
行くと約束もしたから
行かなくてはと思い

会社帰りに
いつもの電車とバスを乗り継いで
母の入

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きざみ食

きざみ食

病室に母の食事を運んできて
さあ食べさせようと食器の蓋を取ると
何の手違いか
きざみ食ではなかった

母は入院する際に
あぶないからと
入れ歯を外されてから
その後も
ずっと入れ歯をしないでいたので
食物が小さく刻まれていないと
食べることができない

そうなってから初めて聞いた
「きざみ食」とは
その名の通り
細かく刻んである食事のことだが

その日は
きざみ食でなかった事に苛立ちを感じたが

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再入院

再入院

診察室で
母がいつから
躁状態に戻ったのかと
母の担当の先生に聞かれて
私はちょっとぶっきらぼうに
退院した日からだと答えると

先生は
えーっ?と少し余裕のある
そんな馬鹿なと言いたげな様子だったが
診察を受けるとすぐに
母の再入院は決まった

この再入院の前
母の退院が決まったのは
長い入院の末に
やっと母の精神状態も落ち着いてきて
病院の先生方も
家に帰っても大丈夫と判断したからだろうし

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戦場の母

戦場の母

死んでしまうのではないか

決して命にかかわるような
そんな病気ではなかったが

母の初めての入院は心配で
入院してからほぼ毎日
病院に会いに行ったが

病室に置かれる医療機器や
母の体につながれる管が
日に日に多くなり

意識もはっきりせず
薬で朦朧としていて
起きているのか寝ているのか
わからないような状態が続いていたので

本気で
このまま母が死んでしまうのではないかと
思ってしまうほど

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夜ごとの嵐

夜ごとの嵐

躁状態になってしまった母は

病院で処方された薬を飲んで
それが効いてくると
殺気立った状態が一転して
パタッと倒れるように眠ってしまう

大人しくなって助かったと思うが
一時的に落ち着いただけで
また元に戻るのは分かっていた

それに不自然によく効く薬は
あまりいい方法ではないのだろう
と思っていたが

それでも他にできる事もなかったので
仕方がないと思っていた

でもそれは
本人にも不快だった

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