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任務遂行

何度目の母の入院の時か忘れたが
お見舞いの帰りに病室で
明日もくるからねと母に告げた
その翌日に大雪が降った

さすがに雪が降るとは
全く思っていなかったので
お見舞いに行くのを止めようかとも思ったが

母は私が来ることを
もしかして楽しみにしていたら
個室でひとりの母を
がっかりさせるのは可哀そうだし
行くと約束もしたから
行かなくてはと思い

会社帰りに
いつもの電車とバスを乗り継いで
母の入院先の病院に向かった

しかし
かなりの降雪で
電車もバスも遅れに遅れて
それまでは消灯時間を
気にかけることなど一度もなかったが
大雪による遅れで
だんだんと消灯時間も迫ってきて
もう間に合わないかとも思ったが

あと15分くらいで消灯という時間に
どうにか病院にたどり着いた

大急ぎで病室に入ると
大雪の中、消灯近くのこんな遅い時間に
私がやってきたことに
母はちょっとびっくりしたようで
こんな天気だから来ないと思っていた、と
ベッドに横になったまま
驚きながらも穏やかにつぶやいた

そんな母を脇目に
私は持参した荷物の整理を
消灯時間までに終わらせるため
手早く済ませて
消灯時間になる前に
そそくさと母の病室を後にして

降り続く雪の中
母の穏やかな顔を思い出しながら
母に会いに行くという使命を
どうにか果たした満足感を味わいつつ
家路を急いだ


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