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夜ごとの嵐

躁状態になってしまった母は

病院で処方された薬を飲んで
それが効いてくると
殺気立った状態が一転して
パタッと倒れるように眠ってしまう

大人しくなって助かったと思うが
一時的に落ち着いただけで
また元に戻るのは分かっていた

それに不自然によく効く薬は
あまりいい方法ではないのだろう
と思っていたが

それでも他にできる事もなかったので
仕方がないと思っていた

でもそれは
本人にも不快だったようで
薬をのむと眠くなるから嫌だと言って
次第に薬をのまなくなってしまった

そして
通院も嫌がるようになって
とうとう病院にも行かなくなった

普通の状態ではない
行く気のない母を
病院に連れていくのは
とても困難な事だったし

他に母をみてくれそうな
いい病院があるのかどうかも
当時は母の状態を
他の人に告げて何と思われるか
怖くて誰にも話せないでいた

その頃の母は
昼間は夜のように喚き散らすようなことはあまりなく
いつも気分が高揚していて
ずっとしゃべり続けている状態で
ちょっとうるさい人くらいにしか
周りからは思われなかったかもしれないが

夜になると、近所から
苦情が来るのではないかと心配になるくらい
毎晩、母は興奮して喚き散らし
時には手がでることもあったが
それをやっとの思いで
どうにか落ち着かせて
母を寝かしつけるのが日課となり
私は毎晩ぐったりしていた

そしてそれが終わると
私はひとりになってベッドに入り
人前では気丈にふるまう自分を終わらせて

何でこんな事になったのか
誰にも相談する勇気もなく
逃げることもできない辛い現実に
枕を濡らす日々が続いた

どうにかして母を落ち着かせることができたらと
ずっと願っていたが
もう打つ手がなくて
困っていたら

ある日
母を診察した、かかりつけの内科の先生が
母の様子がおかしい事に気づいてくれて
精神科のある大きな病院に
紹介状を書いてくれた

それから間もなく
その病院に診察を受けに行くと
その日のうちに即、入院となった

母が以前から信頼していた内科の先生だったので
精神状態を崩していた母も
その先生の言われることには素直に従って
病院に行ってくれたのも幸いした

それからは私も
毎晩ベッドで涙を流す代わりに
離れた病院にいる母の回復を願いながら
眠りにつくことができるようになった
















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