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再入院

診察室で
母がいつから
躁状態に戻ったのかと
母の担当の先生に聞かれて
私はちょっとぶっきらぼうに
退院した日からだと答えると

先生は
えーっ?と少し余裕のある
そんな馬鹿なと言いたげな様子だったが
診察を受けるとすぐに
母の再入院は決まった

この再入院の前
母の退院が決まったのは
長い入院の末に
やっと母の精神状態も落ち着いてきて
病院の先生方も
家に帰っても大丈夫と判断したからだろうし
私も同じように感じていたが

母は「退院」が決まり
「退院」という
その言葉を聞いた途端に
状況がまた変わることに
不安になってしまったのか
退院が決まると
母の中の何かが狂ってしまったようで

一度は落ち着いたけれど
また心のバランスが崩れてしまったようで
元の不安定な状態に戻ってしまったことに
気づいた私は

母の担当の先生に
まだ治っていないので
退院させないでほしいと
お願いをしたが

どうしても理解してもらえず
退院することなり
家に連れ帰ることになったが

案の定
退院の日に病院から家に向かう車の中で
私の隣に座っていた母が
ふいに何かに反応し
興奮して私の上腕を
これでもかというほど
力を込めてぎゅっと抓ってきたので

その瞬間に
また母との、あの病的に気分が高揚して
夜中になると喚き散らすのを
更に興奮させないように注意しながら
私が身体を張って必死に落ちつかせる
そんな母との毎日の戦いが
また始まる事を覚悟した

入院していた病院には
お願いしても
治ったということで退院することになったので
すぐには診てもらえないだろうし

そうなるともう
当分はこのまま
母を刺激しないよう
だましだましの
気の抜けない日々を送るしかないと
あきらめて

現実に対処することに覚悟を決めたが
自分もどこまで持つのか不安をかかえながら
日々をやり過ごしていた

しかし母の退院から1か月もしないうちに
思いがけない助けが入った

母に病院を紹介してくれた内科の先生が
往診の際に母の目つきがおかしいと
異様な様子に気が付いてくれて

今すぐ救急車を呼んで
母が入院していた病院へ
行くように父を促してくれて
救急で診察してくれた先生から
翌日また病院にきて
担当の先生に診察を受けるよう言われた

そして翌日
担当の先生に診てもらうために
私が母を連れて病院に行き
冒頭のような
だから退院させないでほしいと言ったのにとの
思いがまだ残っていた私は
少し不貞腐れたような態度になっていた

この2度目の入院では
母の退院を決める前に
担当の先生は退院について
今度は私がどう思うかを確認してくれて
それから退院を決めてくれた

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