siroisyachi

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最近の記事

某、日

裁判所からの帰り道、律は色んなことを考える。 裁判の傍聴が趣味である私は近くの簡易裁判所に休みが合うと行くのである。証拠写真にあった血がついたティッシュを思い出す。不倫相手に暴力を振るい、殺してしまった彼の髪型やスーツの色、思い出したあとに、裁判の傍聴に行ったことを後悔した。毎回落ち込み、次は行くまいと思う。今日は特にそう思う。律には3人の恋人がいる。妻子持ちだったり幸薄そうな独身男性だったりかわいらしい女の子だったりする。1人目のその人を想い胸が苦しくなる。いつか離れよう、

    • 入院日記2週目

      8/31 入院8日目 12:30 今日から心理検査が始まった。結構難しかったけれど、暇もつぶせるし気晴らしになってよかった。来週の木金とやったら退院だ。 朝、先生が、外泊の話を持ち出してくれて嬉しかったが、その直後にコロナによる面会や外泊の制限という紙が配られ、なんで私はいつもこうなんだろう。と思った。私の願いは大抵叶わない。ね? 17:00 叶った。なんと土日月と外泊していいと言われた。3日もいいの!? しかも火曜に心理検査を終わらすらしい!それってはやく退院できるってこ

      • 入院日記1週目

        8/24 入院1日目 朝、外来に行ったらいきなり入院が決まった。仕事も嫌だけど入院も嫌だ…ってそこそこ泣いた。23歳なのに。なので任意入院ではない。採血をしてそのまま病棟に案内された。午後は彼氏と内見に行く予定だったけれど無しになってしまった。職場へは母親が連絡してくれた。休職なんていう制度はうちにはないけれど仕方ない。何週間入院なんだろう…っていう不安がある。何ヶ月の可能性もある…むしろ死にたい。 昼ごはんがおいしくなくて残した。米がやわやわすぎる。 主治医の先生が夕方に来

        • 念慮

          病院の先生は、私が正社員で働いてることがびっくりらしい。そりゃそうだ、中学生の時から心療内科に通い、高校生になって大学病院に移った。2回も精神科に入院して高校をやめ、大学に入学したもののやばめの自殺未遂をぶちかまして辞めてきた私だ。 正直言って障害者である。障害者手帳と自立支援医療をぶんまわして生かされている。 はて、死にたい患者を生かせてどうしたいのか。先生たちも不毛だろうに。 このあいだ、なんで死んじゃダメ?と聞いた。そう思うよね。と言われた。先生は死んじゃダメだとお思い

          人生

          過去の話をする 思い出になんてしてやらねえぞ、という強い気持ち 保育園が嫌いだった。妹が入ってくるまでの年少、年中は毎日泣いて通った。お昼寝と給食が苦手だった。寝れないのに横にさせられてとなりで先生が手でポンポンした。敷布団の頭の方にはカビゴンのアップリケが付いていて、それをお母さんだと思ってね。と言われていたので手を添えて時間が過ぎるのを待った。 給食を食べきれない。時間がくるとまだ食べ終わってないのに、白米が入ったお弁当箱に麦茶が注がれる。私は勉強がしたかった。家では足

          女生徒

          生きてるだけでいいんだよ。と言われたりする 嘘ばっかり 生活をしてるだけでいいよ、って意味だ 生きて、働いて、お金を自分でどうにかして、身の回りの事もして、そうして生活してるだけでいいんだよ。ってこと 生きたくもない、 自殺がだめだね、間違ってる、いやだね、なんて 死に方が人生のすべて?死に方で人生の価値が変わる?終わりよければ全てよしってやつ? 生きてる間に私がなしたこと、みんなは死に方ひとつで忘れちゃうの? わたしはかわいそうじゃない、なので周りが辛くなる必要なん

          自殺未遂をしてICUに入ったときの話

          急だけれど、自殺未遂をしたときのことを詳しく書こうと思う。 なぜなら私が気に入っている話だから。 調子が悪い時期だった。毎晩死にたいと泣いていた。 彼氏が心配して夜中に来てくれたりした。 その日は、朝から咽び泣いていた。 彼氏は予定があるので出ていってしまう。 お願い、行かないで、と言ったがこんなの日常茶飯事だった彼は、行ってしまった。 朝、独り、希死念慮、絶望、全部が私に押し寄せている。死んでしまうなら今日だと思った。 泣きながら精神科でもらった薬をかきあつめ、一気に飲み

          自殺未遂をしてICUに入ったときの話

          ただの文章

          私はチョコレートが好きだ。板チョコ1枚をデザートにすることもあるし、バレンタインの時期には製菓用の塊を齧ったりする。わざわざ溶かしてボウルからスプーンで掬って食べるのも好き。 昨日はコアントローが入ったチョコレートを買った。 「もちろん、きみの好きなコアントロー味さ」 コアントロー味!私はすっかりうれしくなった。 この文章でしか見たことがないコアントローという文字を輸入食品スーパーで見つけてしまったのだ。 というか! 君が、きみだったり、句点ではなくエクスクラメーションマ

          ただの文章

          夢現

          ゆめうつつ 〈〇月〇日〉 そもそも、とにかく、元はと言えば、このカーテンが悪いのだ。 それから始まり、全てが私に押し寄せてくるから私は毎晩泣きたい気分になる。 カーテンの丈が足りてなくて隙間から冷気が入る。しかし引っ越して1年、そして引っ越すまであと数週間の私は今更カーテンのことでくよくよしていても埒が明かない。しかし本当にこのカーテンが悪いと思う。寒いのは精神の健康に良くないはずだ。 〈〇月〇日〉 最近の私は涙が枯れてしまったらしい。前までは気分とかではなく気づけば嗚咽

          今日

          いい日だった。 雪が降っていたけど、朝しか日が入らない私の部屋は夕方までいつもより明るかったし、外出を諦めたので寝癖を直さなくていいのもよかった。 朝は食パンにチーズと目玉焼きをのせてマキシマムをかけて食べた。紅茶1杯とオランジェットも数本食べた。お昼の時間になったので玄米を炊いてみたけど別にいらなかったので全部冷凍した。ご飯が炊けるまで匂いが混ざるからつけないでいたキャンドルに火をつけて、2杯目の紅茶を飲んだ。 昨日好きな人が遅刻の罰で買ってくれた3冊の本のうち、2冊を読ん

          生きをする

          この世は愛と金と酒、それにタバコ、カフェインさえあればみんな幸せになれる。 私は今、夏にいる。夜とも朝とも言えない時間にベランダでタバコを吸っている。前にアメリカで買ったショートパンツにキャミソールと出で立ちだが、外は蒸し暑く、寒さは感じない。椅子に座り、パステルブルーに塗装されたベランダを見た。2つの植木鉢には赤やピンクの花が植えられている。買う時に名前を知って、もう忘れてしまった花。その隣にはハイボールの缶がある。携帯電話はまだ振動しない。私はベッドにもぐった。 アラー

          生きをする

          天国

          タバコの煙を吐き、空を見る。 ここはこんなに星が見えないのか。 火を消してもう一度見上げた。 僕は終電に間に合うよう、すこし早歩きで駅に向かう。地下鉄の階段を降りる前、星がひとつ。 次の日の朝、あいつが死んだことを知った。 死んでしまうだろうと思っていた。 不幸の自慢が好きで、かわいそうな自分のことがかわいいあいつが好きだった。 どこに行ってしまったのか、あの星になったのかもしれない。 僕らに足りないものはお酒でもなく、ニコチンでもなく、スマホの充電でもなく、給料でもなく

          江國香織と、ぼくたちの話

          きもちいい、冬に飲むお酒はおいしい。 酒の肴がほとんどタバコだったとき、立ち上がってから気づくくらいの酔い、上着からする外の空気と居酒屋の匂い、全部が好きだ。 今日は仕事終わりに寄った古本屋で、江國香織の本を買った。店で友人を待つ間、少し読み進めた。 僕の鼓動は早まった。 「ただいま、」 部屋は真っ暗だ。小夜子はベッドに座り泣いていた。 僕はすばやく上着やジャケットを脱ぎ、ハンガーにかけた。洗濯は朝か…。 小夜子の横へ座り、彼女の背中を撫でる。嗚咽はさらに大きくなった。頬を

          江國香織と、ぼくたちの話

          フィクション

          また見えた 自分の死に場に迷わず走る。これは間違いなく夢で本当に死ぬことはない。知ってる、僕は何回もここで死んだ。 螺旋階段の真ん中に飛び込んだ。 体が軋むように痛くて起きた。僕は怖い夢ばかり見るが、死ねば目覚めるのだった。酷く泣いていたみたいで、同居猫に顔を覗かれた。 「白いふうせんがみんなを焼いたんだ」 「そうかい 寝るのはもうやめて外へ出た。十五月の空気は高く浮かんでいて、肺の底に沈んだ。 月は僕のこの気分を助長させた。 防寒具か十分に無いのでスキーウェアを着た。

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