白川敬裕/弁護士

弁護士(原・白川法律事務所)東京弁護士会所属。福岡県北九州市出身。東京大学法学部卒、ラ…

白川敬裕/弁護士

弁護士(原・白川法律事務所)東京弁護士会所属。福岡県北九州市出身。東京大学法学部卒、ラ・サール高校卒。裁判官から2003年に弁護士に転身。著書「本物の勉強法(ダイヤモンド社)」「憲法がヤバい(ディスカヴァー21)」等 https://www.shirakawa-web.com/

最近の記事

根源は神話?

最高裁判所の大ホールにあるブロンズ像は、ギリシャ神話に出てくる法の女神テミスに由来するといわれています。古代ギリシャでは、神話が長いあいだ信じられ、人びとの考え方の枠組みになっていました。 最高裁判所大ホールにあるブロンズ像「正義」 右手には正邪を断ずる剣を掲げ,左手には衡平を表す秤(はかり)を持っています。 おそらく「法律」の歴史をさかのぼると、神話に辿り着くのでしょう。 日本初のノーベル賞に輝いた湯川秀樹は、物理学の系譜を辿ると神話にまでさかのぼると説きます。 【

    • 認識できない世界

      スマホという道具は、どうやってネットの情報をキャッチしているのでしょうか。 有線ケーブルとつながっていれば、ケーブルの中を情報がくぐってくるイメージができます。しかし、どこにもつながっていないスマホの画面に、なぜネットの情報が出てくるのか? 空気中にふわふわと情報の粒が浮いていて、それをキャッチしているのでしょうか? どうしてスマホで通話もできてしまうのか? 糸電話なら、音の振動が糸を伝わってくるイメージができますが・・。 よく考えてみると、私たち人間も、何かが見える

      • 逆記念日

        最近、「引き算」が意外と難しいことに気付きました。 Evernotenに日記をつけるとき、日付の横に「50歳までの残り日数」を書いているのですが、何日か日記をつけない日が続いたとき、引き算を間違えることがあるのです。 例えば、1569日-2日は、1の位の9から2を引くだけですから簡単ですが、1561日-3日となると、少し考える必要が生じます。 算数の計算問題として解くのなら、間違えることはない(はず)。 しかし、言い訳になりますが、日記と言っても、細切れのスキマ時間にメモ

        • 左脳と右脳の使い分け

          読みかけの本や「積ん読」の本が減ってきたとき、頭を空っぽにして、書店をふらつくことがあります。 そんなときは「左脳」をオフにし、「右脳」だけをオンにします。そうやって歩いていると、いま読むべき本だけがキラキラと輝き、目に飛び込んでくるからです。 最大の難所は、法律書のコーナーです。 法律書のコーナーに入り込むと、急に左脳が働きだし、言葉と論理の世界に引き戻されます。そうなると、一気に輝きが失われ、目に入るのは棚に並んでいる表紙の言葉だけになってしまいます。 だから、仕事

          「心」が先か、「環境」が先か

          学生の頃に通っていた司法試験予備校。伊藤真先生の講義で印象に残っているのは、「うまく行かないことを、人のせいにしない」という言葉です。「夢をかなえる勉強法」(伊藤真。サンマーク文庫) 「試験が上手くいかないこともあるでしょう。そんなとき、親とか交際相手とか、周りの人のせいにはしないでください」 肝心の講義内容は忘れても、伊藤真先生のその言葉だけは今でも強く心に残っています。 ▼ 「周りの人や環境のせいにしない」ということを肝に銘じましたが、裁判官や弁護士を経験して様々な

          「心」が先か、「環境」が先か

          AIが判決を下せるか?

          スマホや自動運転。私が子供の頃には想像すらしていなかった技術です。これからも、想像の及ばないことが実現していくのでしょう。 「AIが裁判官になって判決を下す」という未来も、起こらないとは限りません。 「AI vs.教科書が読めない子供たち」(新井紀子)東洋経済新報社 AIはコンピューターであり、コンピューターは計算機であり、計算機は計算しかできない。 AIは計算機ですから、「果たして、数学的な計算によって判決が書けるのか?」という点を考える必要があります。 法律は、数

          AIが判決を下せるか?

          語彙を増やして世界を拡げる。

          映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」を観ました。 討論冒頭での三島の発言に、笑いが起こります。 三島 「そくぶんしますところによりますと、これは何か百円以上のカンパを出して集まっているそうですが、私ははからずも諸君のカンパの資金集めに協力していることになる。」 「そくぶん」とは何か。 前後の文脈から、「聞いたところによると」という意味であることは、何となく分かります。でも漢字が思い浮かばない。 この討論会の文字起こしである単行本「美と共同体と東大闘争 三島

          語彙を増やして世界を拡げる。

          気持ちと意思と殺意

          被告人 「被害者Aさんの首を絞め、Aさんが亡くなったことは間違いありません。でも、殺すつもりはありませんでした。」 弁護人 「被告人に殺意はなかった。したがって、殺人罪は成立せず、傷害致死罪にとどまる。」 私が裁判官時代に経験した実際の刑事事件です。男女の別れ話のもつれから起こってしまった事件でした。 「殺人罪」と「傷害致死罪」は、いずれも被害者を死に至らしめた犯罪です。違いは「殺意」があったか否か。 刑法38条に「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」と書かれているた

          気持ちと意思と殺意

          宝物はモノがいい。

          「宝物は何ですか?」と聞かれたら、大事な手紙、聴くたびに心をうたれるこのCD「Mr.Children 『SOUNDTRACKS』」、何度も読み返している本などが思い浮かびます。 特に私の本棚は、宝の山です。 放っておくと、すぐに本が溢れかえるため、定期的にかなりの冊数を処分してきました。ですから、いま本棚に残っている本は、激戦を勝ち抜いた精鋭たちです。 でも最近は、電子書籍が多くなりました。その時の気分に応じた本を読みたいので、以前は、常に3冊くらいの本を持ち歩いていま

          宝物はモノがいい。

          ”自然”とは何か

          “自然”とは何か。考えだすと頭が一杯一杯になります。 「自然」と聞くと、「森、山、川、草花」などの自然、「不自然じゃない」というときの自然が思い浮かびます。 「自然」という言葉の意味は、それだけではありません。 法学の授業でも、「自然権」「自然法」「自然人」など、やたら「自然」という言葉が出てきます。「自然法」については、山川出版社の教科書「詳説 世界史B」に、こんな記述がありました。 「自然科学の発達を支えた旺盛な探究心は、やがて人間社会の考察にも向かい、近代的な自

          ”自然”とは何か

          記憶を確かめたい衝動

          「タイムマシンがあるとしたら、過去に行く?未来に行く?」と聞かれれば、即答で「過去」と答えます。 未来に行くことは、あり得ません。微差の積み重ねで未来が変わると信じたいからです。 なぜ、過去なのか。それは、過去を変えたいわけではなく、自分の記憶が正しいのか、確かめたいからです。 行きたいのは、保育園~10歳くらいの時代です。中学以降は、今でも同級生とのつながりがありますし、自分の中では、わりと最近のことのように感じており、記憶に自信もあるのですが、小5のときに転校したため

          記憶を確かめたい衝動

          緊急事態宣言の期間中にハマったこと

          緊急事態宣言の期間中に100分 de 名著 – カミュ「ペスト」の再放送を見て以来、オンデマンドで同番組のアーカイブスを見ることにハマっています。 NHKオンデマンド 100分de名著 何となく45歳が区切りだと思って生きてきましたが、今年45歳になり、「時間」が貴重な資源であることを特に意識するようになりました。 限られた時間(=命)を意識する年齢になったことが、その理由だと思います。 難解な古典は、何時間もかけて一生懸命読んでも、ほとんど頭に残らない・・ そんな名著

          緊急事態宣言の期間中にハマったこと

          「ことばを紡ぐための哲学:東大駒場・現代思想講義」で学んだ動詞的アプローチ

          小学生の頃、国語の授業で、こんな問題をたくさん解かされました。 「この文章の『主語』『述語』はどれでしょう?」 問題を解くとき、いきなり主語を探しがちですが、そうではなく、まず「述語」を見つけて、それから、述語に対応する主語を探すと、解き易かったことを思い出します。 その解き方と同じアプローチでは? この本を読んで、そんな感想をもちました。 「ことばを紡ぐための哲学 : 東大駒場・現代思想講義」 本書は、東京大学教養学部で行われたテーマ講義の各担当教員が講義内容を整

          「ことばを紡ぐための哲学:東大駒場・現代思想講義」で学んだ動詞的アプローチ

          AIの思考を知るために「数学」を学び直してみる。

          ■「量子力学」という不思議な世界があることを知って以来、超常現象や超能力の話を聞いたときに、即否定するのではなく、「もしかしたら、そんなこともあるのかもしれない・・」と思うようになりました。 クイズ番組で、出題を聞いた挑戦者が、○と×どちらかのボードに向かって走ってそれを突き破り、正解ならマットに着地、不正解なら泥まみれになる、という企画がありますが、 「光」というのは、「粒子」でありながら、「波動」でもあるらしく、両方のボードを同時に通り抜けることができるそうです。

          AIの思考を知るために「数学」を学び直してみる。

          社会人なってから世界史を「学ぶ」のに苦労しました。

          ■社会人になってから世界史を「学ぶ」のに、とても苦労しました。  「学び直す」のではなく、「学ぶ」ことが必要だったのは、高校で世界史を選択していなかったからです。  私が高校の頃は(1991年~1993年)、世界史は必須科目ではなく、日本史・地理で大学を受験しました。  大学に入学した頃の私のレベルは、「マリー・アントワネットって誰?」という程度。知り合いに笑われ、さすがにマズいと思って、山川出版社の教科書を買って読み始めました。  しかし、高校の教科書というのは、試験があ

          社会人なってから世界史を「学ぶ」のに苦労しました。

          「語りえぬものを語る(野矢茂樹(著))」を読んで、意思決定の自由を考える。

          ■大学1年の教養課程。単位を取るために仕方なく受けていた講義もありましたが、野矢茂樹教授の「論理学」は、毎回、楽しみにしていました。  「論理学」(野矢茂樹(著)) 社会人になってからも、野矢茂樹氏の本は何冊か読みましたが、どれも面白くて、期待を裏切りません。 【読んだ本】 「はじめて考えるときのように」(PHP文庫) 「哲学の謎」(講談社現代新書) 「ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む (ちくま学芸文庫) 「大人のための国語ゼミ」(山川出版社) 一昨年、ふと

          「語りえぬものを語る(野矢茂樹(著))」を読んで、意思決定の自由を考える。