竹井紫乙

詩と川柳を書いています。日本現代詩人会会員。広瀬ちえみさん編集発行『What`s』に参…

竹井紫乙

詩と川柳を書いています。日本現代詩人会会員。広瀬ちえみさん編集発行『What`s』に参加しています。川柳句集『ひよこ』『白百合亭日常』(葉ね文庫さんのみ取り扱い)『菫橋』(港の人)

マガジン

  • 詩について

    詩のことを書きます。

  • 川柳のこと

    川柳について書きます。

  • 2024年の雑記

    日々の雑感です。

記事一覧

夏の旅(時里二郎さんの詩)

今年の夏は時里二郎さんの詩集を読んで過ごしていた。 夜、就寝前に。朝夕の通勤電車の中で。時間があれば昼休みに。 暑さや気圧のくらくらとふらふらの激しい中、オフィス…

竹井紫乙
3週間前
15

🐒川柳光子猿🐵を読む

発行者の湊圭伍さんからの原稿提出条件は、サイズA5.モノクロで作成、というシンプルなものだったから様々なデザインのものが掲載されているのだろうなと思っていた。まさ…

竹井紫乙
1か月前
9

海馬川柳句会 第3回(2024 年度)

今回の兼題は「カレー味のから揚げ記念日」。兼題を使うかどうかは自由。 ということで、難しいのだか、そうでもないのだか、よくわからないお題。 まずは雑詠で提出され…

竹井紫乙
1か月前
7

アントワネットの首

オリンピックの開会式と閉会式を観るのが好きだ。 編集されたものは面白くないので、生中継放送が良い。 今回のパリ開催の開会式映像は、録画したものを後からゆっくり楽し…

竹井紫乙
1か月前
4

海馬編「川柳光子猿」

今日は文学フリマ香川の日で、湊圭伍さんがブースを出されている。 海馬編「川柳光子猿」に提出するデータを最初、勘違いしていてフルカラーで作成していて、後でモノクロ…

竹井紫乙
1か月前
11

水をもとめて

暑い。こんなに暑いのにどうして歯科の予約を入れてしまったのだろうか。 と後悔しつつ医院へ赴く。待合室で読む本を選び、 『水の聖歌隊』笹川 諒(書肆侃侃房)をトート…

竹井紫乙
2か月前
9

朝日新聞と川柳

朝日新聞ポッドキャストで暮田真名さんがインタビューを受けている。 やりとりの構成がきちんとしていて、川柳になじみのない人にもきっと わかりやすく、聴きやすい内容。…

竹井紫乙
2か月前
7

夏の読書

暑くなると勝手に身体が“夏休み”状態になる。 要するに休みたいわけだ。ぼおーっとしていたいわけだ。 けれど現実は働かざるを得ず、体は労働へ向かう。 取り残された心…

竹井紫乙
2か月前
10

タクシー

夕方、自室で座布団に座っていた姿勢から立ち上がろうとした時に 左足の小指をひねってしまい、痛かったなあと思いながら家事をしていた。 夕食の途中からどんどん指が腫れ…

竹井紫乙
2か月前

映画『九十歳。何がめでたい』

草笛光子と唐沢寿明の顔を観に劇場へ赴く。 他のキャストもめちゃめちゃ豪華・・・! 役者さんたちの「顔」の素晴らしさや細やかな演技を堪能。 画面の隅々までハッピーな…

竹井紫乙
2か月前
1

第13回ぶらり句会

今回の題は「だん」「雑詠」。私の選句から   桐の箱に入ったものなど下さるな  浮千草  浦島太郎の玉手箱みたいなものなんだろう。この句の場合は  受け取り拒否をし…

竹井紫乙
2か月前
8

『時里二郎 詩集』(現代詩文庫・思潮社)を読む

思潮社の現代詩文庫から時里二郎詩集が刊行された。 読むのをとても楽しみにしていたので、ゆっくり読もうと思っていた。 通勤電車の中が私の主な読書時間。朝は立ったま…

竹井紫乙
3か月前
14

コンタクトレンズ

子どもの頃から近眼で、小学生の時は眼鏡をかけていた。 15歳くらいでコンタクトレンズに変えて、視野の広がりに驚いたことを 今でもよく覚えている。景色がよく見えるこ…

竹井紫乙
3か月前

ゆにアンソロ

芳賀博子さんから『ゆにアンソロ』をご恵送いただいた。 “ゆに”は川柳を中心にことばの魅力をウェブで楽しむ会という趣旨で コロナ禍をきっかけとして発足した会。 発足…

竹井紫乙
3か月前
7

湊さんの問いかけ

海馬川柳句会 第2回(2024 年度)投句は2句まで。兼題は「歯車」。   爪を塗りよい歯車になる支度     城崎ララ   歯車の系譜を流す彼岸まで      成瀬…

竹井紫乙
3か月前
12

忘れたくない

雑誌『BRUTUS』特集「一行だけで。」 これまでの人生で生きる力をもらった川柳、希望を感じた川柳、励まされた川柳など、一生忘れたくないほど強く心を動かされたポジティ…

竹井紫乙
4か月前
14
夏の旅(時里二郎さんの詩)

夏の旅(時里二郎さんの詩)

今年の夏は時里二郎さんの詩集を読んで過ごしていた。
夜、就寝前に。朝夕の通勤電車の中で。時間があれば昼休みに。
暑さや気圧のくらくらとふらふらの激しい中、オフィスビルの中の長い廊下を歩く時などに詩集の中の海のことや森のことを思い浮かべると、まるで旅の途中にいるような気持ちにさせてくれた。それは束の間のこととはいえ、自分にとってはとても必要な「間」。

各詩集のモチーフの重なり、変化しながらの繰り返

もっとみる
🐒川柳光子猿🐵を読む

🐒川柳光子猿🐵を読む

発行者の湊圭伍さんからの原稿提出条件は、サイズA5.モノクロで作成、というシンプルなものだったから様々なデザインのものが掲載されているのだろうなと思っていた。まさかそれぞれの頁に対して湊さんが評を書かれるとは予想外でちょっと驚いたけれど、ゆるい感じの評で笑えます。

特にお気に入りなのが小野寺里穂、南雲ゆゆ、森砂季の頁。
三名とも、とても画面の完成度が高い。いずれもどのような順番で句を読んでもよい

もっとみる
海馬川柳句会 第3回(2024 年度)

海馬川柳句会 第3回(2024 年度)

今回の兼題は「カレー味のから揚げ記念日」。兼題を使うかどうかは自由。
ということで、難しいのだか、そうでもないのだか、よくわからないお題。

まずは雑詠で提出された三句。いずれも句の立ち姿について考えさせられました。

  最上階のきれいな野犬  西脇祥貴
きれいなまま野犬って、気高い。クール。

  ゆるさない僕はみつめる歯磨き粉 太代祐一
「ゆるさない」で区切るか、「ゆるさない僕は」で読むか、

もっとみる
アントワネットの首

アントワネットの首

オリンピックの開会式と閉会式を観るのが好きだ。
編集されたものは面白くないので、生中継放送が良い。
今回のパリ開催の開会式映像は、録画したものを後からゆっくり楽しんだ。

個人的にはリレハンメル冬季五輪の開会式がいちばん好印象で、派手である必要は別にないと思う。

これまで観た開会式映像の中では、今回のものは最も斬新だった。
ここまで攻めの姿勢で演出されたものを承認する国なのだ、という事実を
全世

もっとみる
海馬編「川柳光子猿」

海馬編「川柳光子猿」

今日は文学フリマ香川の日で、湊圭伍さんがブースを出されている。

海馬編「川柳光子猿」に提出するデータを最初、勘違いしていてフルカラーで作成していて、後でモノクロに修正する際に、読みにくいといけないかなと思って大幅に作り変えた。結果、句の数はものすごく少なくなり、たぶん
目には優しい仕上がりになっているのではないかと思う。そしてどなたが参加されているのか全然知らなかったのだけれど、とても素敵なメン

もっとみる
水をもとめて

水をもとめて

暑い。こんなに暑いのにどうして歯科の予約を入れてしまったのだろうか。
と後悔しつつ医院へ赴く。待合室で読む本を選び、
『水の聖歌隊』笹川 諒(書肆侃侃房)をトートバッグへ入れる。

暗闇に鳩の刺繍を ひとびとを隔てる銀の糸を手繰って
ひとつまた更地ができる ミルクティー色をしていて泣きそうになる
あなたがせかい、せかいって言う冬の端 二円切手の雪うさぎ貼る
あの窓は燃やせるものをひとしきり燃やした

もっとみる
朝日新聞と川柳

朝日新聞と川柳

朝日新聞ポッドキャストで暮田真名さんがインタビューを受けている。
やりとりの構成がきちんとしていて、川柳になじみのない人にもきっと
わかりやすく、聴きやすい内容。暮田さんの句の書き方はおそらく
多数派ではないかもしれない。それでもお話はとても面白く、句を書く
ことへの可能性に、広がりやわくわくを感じとれる。

朝日新聞といえば、『アサヒグラフ』に連載されていた時実新子の“川柳新子座”をすぐ連想して

もっとみる
夏の読書

夏の読書

暑くなると勝手に身体が“夏休み”状態になる。
要するに休みたいわけだ。ぼおーっとしていたいわけだ。
けれど現実は働かざるを得ず、体は労働へ向かう。
取り残された心をなだめるように図書館で課題図書もどきを借りる。

サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)と
ブローティガンの『愛のゆくえ』(早川書房)。どちらも随分昔に手に
とったことがあるけれど、たしか最後まで読むことができなかった

もっとみる
タクシー

タクシー

夕方、自室で座布団に座っていた姿勢から立ち上がろうとした時に
左足の小指をひねってしまい、痛かったなあと思いながら家事をしていた。
夕食の途中からどんどん指が腫れてきて、すっかり紫色になってしまう。
痛みが強くなってきて、明朝に近所の病院に行こうと思っていたけれど
家族に「相談窓口へ電話してはどうか」と言われ、救急安心センターへ電話
したところ救急車を呼んだ方がよいとのことで、初めて救急車で運ばれ

もっとみる

映画『九十歳。何がめでたい』

草笛光子と唐沢寿明の顔を観に劇場へ赴く。
他のキャストもめちゃめちゃ豪華・・・!
役者さんたちの「顔」の素晴らしさや細やかな演技を堪能。
画面の隅々までハッピーな映画でした。

第13回ぶらり句会

第13回ぶらり句会

今回の題は「だん」「雑詠」。私の選句から
 
桐の箱に入ったものなど下さるな  浮千草
 浦島太郎の玉手箱みたいなものなんだろう。この句の場合は
 受け取り拒否をしているので中味は確認しないまま。潔い。
コンビニの床輝いていて 奈落   野沢省悟
 最近、奈落のイメージが変わったように思う。
 コンビニに 代表される世間の中途半端なあかるさ、中途半端に輝く床、
 現代の奈落(地獄と言い換えてもよい

もっとみる
『時里二郎 詩集』(現代詩文庫・思潮社)を読む

『時里二郎 詩集』(現代詩文庫・思潮社)を読む

思潮社の現代詩文庫から時里二郎詩集が刊行された。

読むのをとても楽しみにしていたので、ゆっくり読もうと思っていた。
通勤電車の中が私の主な読書時間。朝は立ったまま、帰りは大体座った状態で本を読む。荷物もあって必ずしも良い姿勢ではないのだけれど。

読み始めると文字通り心を奪われてしまい、あっという間に目的の駅に着いてしまう。気分が沈む日も、今日は集中できないかも、と思う日も、関係なく詩集に心を持

もっとみる
コンタクトレンズ

コンタクトレンズ

子どもの頃から近眼で、小学生の時は眼鏡をかけていた。
15歳くらいでコンタクトレンズに変えて、視野の広がりに驚いたことを
今でもよく覚えている。景色がよく見えることが嬉しかった。

昨年から眼の具合が悪く、医師からもコンタクトレンズの使用時間を短縮
したほうがよいと言われていたので、仕事用、自宅用といくつか眼鏡を用意して日々過ごしていたのだけれど、時々使い捨てのコンタクトレンズを使っていた。
先月

もっとみる
ゆにアンソロ

ゆにアンソロ

芳賀博子さんから『ゆにアンソロ』をご恵送いただいた。

“ゆに”は川柳を中心にことばの魅力をウェブで楽しむ会という趣旨で
コロナ禍をきっかけとして発足した会。
発足三周年記念のアンソロジーを制作されたとのこと。

なぜか「葱」が登場する句が多い。あとは月、夜、林檎、うさぎ。
これまでに題詠で出たテーマなのかもしれない。

  奇妙な花が咲いて少し明るい     重森恒雄
  眼科まずしんと気球を見

もっとみる
湊さんの問いかけ

湊さんの問いかけ

海馬川柳句会 第2回(2024 年度)投句は2句まで。兼題は「歯車」。

  爪を塗りよい歯車になる支度     城崎ララ
  歯車の系譜を流す彼岸まで      成瀬悠
  わたしたちの歯車はジャムパンです  竹井紫乙
  デウスだったですよそれはもう紅白な 西脇祥貴 

主催者の湊圭伍さんの“総評”欄で、「川柳木馬」最新号のエッセイを転記する形で「文脈読み」と「そのまま読み」について書かれてい

もっとみる
忘れたくない

忘れたくない

雑誌『BRUTUS』特集「一行だけで。」

これまでの人生で生きる力をもらった川柳、希望を感じた川柳、励まされた川柳など、一生忘れたくないほど強く心を動かされたポジティブな力を感じる川柳を紹介するという依頼。他の方と被らないように三句チョイスして結果、無事に一押しの句を紹介することができた。

【第一候補】うつくしいとこにいたはったらええわ  久保田 紺 
【第二候補】たすけてくださいと自分を呼び

もっとみる