竹井紫乙
詩のことを書きます。
日々の雑感です。
川柳について書きます。
10月は読書がはかどって、多彩な栄養を摂取したような気分。 その中で通底するテーマが“災禍”の詩集が三冊あった。 読んだ順に『恋と誤解された夕焼け』最果タヒ(新潮社)、『花束』久谷雉(思潮社)、『遠い春』齋藤貢(思潮社)。 私は最果タヒの熱心な読者とはいえず、これまで数冊しか読んだことがないのだけれど、今回の詩集はこれまで読んだものと違うなと思った。死について。その手前にある現象、戦争のことについて多く書かれており、とりあえず今、日本は戦争状態ではないので、一応安全な場所か
昨日、映画『まる』を観に行った。映画はいつも初回上映時間帯に行くことにしているので朝から出掛けたところ、入口で昔のネガのような栞をオマケにいただき、上映後には生中継の舞台挨拶を観ることができた。ちょっとお得な感じ。 監督は荻上直子。キャストがとても素敵な俳優さんばかりでそれも楽しみにしていた。主役は当然のこと、綾野剛、森崎ウィン、小林聡美、早乙女太一、片桐はいりがとても見事で、特に片桐はいりはもう、片桐はいりに見えず、ただのあやしいおじさんにしか見えなかった。すごい。あやし
先月末に大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会へ出掛けた。 演目はラヴェルにちなんだものでまとめられていて、 前半がラヴェル作曲「ラ・ヴァルス」「ピアノ協奏曲ト長調」。 後半がラヴェル編のムソルグスキー「展覧会の絵」という構成。 「展覧会の絵」はよく演奏される組曲だと思う。 随分前にCDで通して聴いた時にはあまり印象がよろしくなく、 陰鬱なイメージが残っていた。 だからこの日の目当ては前半に登場する小林愛実さんのピアノ演奏だったのだけれど、「ピアノ協奏曲ト長調」が素晴らしかっ
髙塚謙太郎 峯澤典子 「アンリエット」1号 「湖底に映されるシネマのように」 入手してから読み始めるまでに日にちがかかった。 手に取ってみて、ときめき過ぎたから。 読み始めると何周かしなければ読み終えることができなかった。 内容があまりにも充実していて。 目次が最後なので、あえて目次を見ないようにして読んだ。 作者がどちらかわかるものも、わからないものもあって 連詩集のようでもある。 峯澤典子さんの髙塚謙太郎さんへの信頼感(と言っていいと思う)が すさまじく感じられ
第14回 ぶらり句会報 「雑詠」「ふる」。『垂人』46号。 どちらも広瀬ちえみさんが編集。今日は少しゆっくりできる時間があったので部屋で句会報と会誌を読んでいた。 句会報では「ふる」という題詠の難しさが書かれていて、確かによく出る題や、類想句ばかりになってしまいがちな題というのがあって、「ふる」もそのひとつだと思う。とはいえ奇抜な題が必ずしも面白い句会を形成するのかといえばそうでもないので、出題をするという行為自体が創造的であると言える。 虫の音を人語に訳すウヰス
今年の夏は時里二郎さんの詩集を読んで過ごしていた。 夜、就寝前に。朝夕の通勤電車の中で。時間があれば昼休みに。 暑さや気圧のくらくらとふらふらの激しい中、オフィスビルの中の長い廊下を歩く時などに詩集の中の海のことや森のことを思い浮かべると、まるで旅の途中にいるような気持ちにさせてくれた。それは束の間のこととはいえ、自分にとってはとても必要な「間」。 各詩集のモチーフの重なり、変化しながらの繰り返し、抽象化、現代詩文庫の編集、を眺めるとその一貫性、「あみもの」としての詩集の有
発行者の湊圭伍さんからの原稿提出条件は、サイズA5.モノクロで作成、というシンプルなものだったから様々なデザインのものが掲載されているのだろうなと思っていた。まさかそれぞれの頁に対して湊さんが評を書かれるとは予想外でちょっと驚いたけれど、ゆるい感じの評で笑えます。 特にお気に入りなのが小野寺里穂、南雲ゆゆ、森砂季の頁。 三名とも、とても画面の完成度が高い。いずれもどのような順番で句を読んでもよいように構成されており、(ただし連作の仕立てに一応なっているので世界観は保たれる)
今回の兼題は「カレー味のから揚げ記念日」。兼題を使うかどうかは自由。 ということで、難しいのだか、そうでもないのだか、よくわからないお題。 まずは雑詠で提出された三句。いずれも句の立ち姿について考えさせられました。 最上階のきれいな野犬 西脇祥貴 きれいなまま野犬って、気高い。クール。 ゆるさない僕はみつめる歯磨き粉 太代祐一 「ゆるさない」で区切るか、「ゆるさない僕は」で読むか、でニュアンスは変わる。けれど句としての姿はぎりぎり保っている。そこが緊張感を生み
オリンピックの開会式と閉会式を観るのが好きだ。 編集されたものは面白くないので、生中継放送が良い。 今回のパリ開催の開会式映像は、録画したものを後からゆっくり楽しんだ。 個人的にはリレハンメル冬季五輪の開会式がいちばん好印象で、派手である必要は別にないと思う。 これまで観た開会式映像の中では、今回のものは最も斬新だった。 ここまで攻めの姿勢で演出されたものを承認する国なのだ、という事実を 全世界に披露するところに、フランスの国力というものがうかがえる。 細かいところをあげ
今日は文学フリマ香川の日で、湊圭伍さんがブースを出されている。 海馬編「川柳光子猿」に提出するデータを最初、勘違いしていてフルカラーで作成していて、後でモノクロに修正する際に、読みにくいといけないかなと思って大幅に作り変えた。結果、句の数はものすごく少なくなり、たぶん 目には優しい仕上がりになっているのではないかと思う。そしてどなたが参加されているのか全然知らなかったのだけれど、とても素敵なメンバーの中に入れていただいていて、嬉しい。 こんな私の事情はさておき、めっちゃお
暑い。こんなに暑いのにどうして歯科の予約を入れてしまったのだろうか。 と後悔しつつ医院へ赴く。待合室で読む本を選び、 『水の聖歌隊』笹川 諒(書肆侃侃房)をトートバッグへ入れる。 暗闇に鳩の刺繍を ひとびとを隔てる銀の糸を手繰って ひとつまた更地ができる ミルクティー色をしていて泣きそうになる あなたがせかい、せかいって言う冬の端 二円切手の雪うさぎ貼る あの窓は燃やせるものをひとしきり燃やしたあとに残る窓だよ 短詩のいいところは、短い時間の隙間に集中して読んでいけるとこ
朝日新聞ポッドキャストで暮田真名さんがインタビューを受けている。 やりとりの構成がきちんとしていて、川柳になじみのない人にもきっと わかりやすく、聴きやすい内容。暮田さんの句の書き方はおそらく 多数派ではないかもしれない。それでもお話はとても面白く、句を書く ことへの可能性に、広がりやわくわくを感じとれる。 朝日新聞といえば、『アサヒグラフ』に連載されていた時実新子の“川柳新子座”をすぐ連想してしまうのだけれど、おそらく今回の担当記者は時実新子と自社との関りを認識していない
暑くなると勝手に身体が“夏休み”状態になる。 要するに休みたいわけだ。ぼおーっとしていたいわけだ。 けれど現実は働かざるを得ず、体は労働へ向かう。 取り残された心をなだめるように図書館で課題図書もどきを借りる。 サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)と ブローティガンの『愛のゆくえ』(早川書房)。どちらも随分昔に手に とったことがあるけれど、たしか最後まで読むことができなかった。どうしてもすぐに眠くなってしまい、ほとんど内容の記憶がない。 以前は『ライ麦