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水をもとめて

暑い。こんなに暑いのにどうして歯科の予約を入れてしまったのだろうか。
と後悔しつつ医院へ赴く。待合室で読む本を選び、
『水の聖歌隊』笹川 諒(書肆侃侃房)をトートバッグへ入れる。

暗闇に鳩の刺繍を ひとびとを隔てる銀の糸を手繰って
ひとつまた更地ができる ミルクティー色をしていて泣きそうになる
あなたがせかい、せかいって言う冬の端 二円切手の雪うさぎ貼る
あの窓は燃やせるものをひとしきり燃やしたあとに残る窓だよ

短詩のいいところは、短い時間の隙間に集中して読んでいけるところ。
(書く場合にもいえることだけれど)
歌集全体のトーンはきらきらしたものではなく、どちらかといえば
やや落ち着いた色合いで、筋の通った真摯さに貫かれている。

今日はサングラスが外せない一日だった。サングラス越しに見える景色は
すこしだけ、やさしい。この歌集のやさしさに似ているな、と思った。



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