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精神医学論考

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ガチめな精神医学の書き物たち。
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#中井久夫

世界における牽引と徴候

世界における牽引と徴候

この論考は、ニセアカシアの香りから着想を得て作られた。木々たちの香り、ニセアカシアは現在を、金銀花はまだ到来していない香りの予感を、桜はすでに過ぎ去った過去の余韻を、それぞれ現在に持ち越して香っている。この匂いの中で、「予感と余韻と現在」の時制を考える。世界は現在の記号だけでなく、予感と余韻という表象され得ない意味を有している。

世界における牽引とは

世界は「牽引」が満ち溢れている。プルース

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強迫症についての断章

強迫症についての断章

序文

精神医学で言う強迫性障害とは、不快なイメージ(強迫観念)が頭から離れず、それを解消しようとする行為(強迫行為)が止められない病気である。
ここでは強迫症とは何か、強迫とはどのような精神構造のもとに生じるものなのか、さらには、その治療について少し書いてみたい。
強迫症は精神疾患であるが、「強迫性」は私たち誰にでもある傾向だろう。「時間がもったいない」というタイパ思考、「生産性がないことに対す

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