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マクロ経済

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岩田規久男氏の論考への違和感

岩田規久男氏の論考への違和感

岩田規久男元日銀副総裁(以降、岩田氏)の論考「次期首相の条件は量的緩和の継続」が、月刊誌Voice の24年10月号に掲載された。そこで感じた違和感などをメモ。
僕は、植田和男日銀の利上げスタンスは相当なタカ派であり、7月の追加利上げは日本経済の現状からは不要なものであり、岩田氏のご主張のように「物価安定のために為替レートを修正しようとする」ものであっても問題あり、との立場です。

1.植田和男日

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消費者物価の基調的な変動(24年7月)

消費者物価の基調的な変動(24年7月)

植田和男日銀が追加利上げを決めた月の、消費者物価の基調的な変動(2024年7月)のデータが、8月27日に公表されました。早過ぎる追加利上げを責めるかのようなデータが日銀自身から公表されました。

基調を示す指標は、いずれも 2% を下回りました。(下図1)
上昇品目は減少傾向、下落品目は増加傾向が続いています。(下図2)

24年7月の消費者物価指数(全国)は、コアコア、欧米型コア、サービスのいず

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消費者物価の上昇幅鈍化(24年7月)

消費者物価の上昇幅鈍化(24年7月)

消費者物価指数 全国 (2024年7月)が公表されました。
植田和男日銀総裁が良く言う「第一の力」(コストプッシュ)は強まり、「第二の力」(賃上げと物価上昇の好循環)は弱まっている、と受け止めました。
後述の通り、コアコア、欧米型コア、サービスがいずれも2%を割っています。

消費者物価指数の動向総合 +2.8%

コア +2.7% (生鮮食品除く)

コアコア +1.9%(生鮮食品及びエネルギー

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日銀利上げとハト派のフリ派

日銀利上げとハト派のフリ派

2024年7月31日に日本銀行が利上げを含む金融政策の引締めを発表しました。この政策変更への評価など、思ったことを書いておきます。

僕は、日本経済が強くはない現状で、行ってはいけない利上げ、という認識です。植田ショックと言われる金融資産市場の急激な変化(株価・為替レートの乱高下)だけでなく、賃上げと物価の好循環を通じた物価目標を安定的・持続的に達成することを危うくする対応だと思います。

1.

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消費者物価の基調は2%割れ

消費者物価の基調は2%割れ

植田和男日銀が「金融政策の枠組みの見直し」を3月19日に行ってから、最初に公表される「消費者物価の基調的な変動」ということもあり、注目していました。

1.消費者物価の基調的な変動結果は、いずれも2%割れです。

2.利上好きな方々ESPフォーキャスト調査(2024年5月14日)によると、2024年の日銀の利上を1回~3回と予想するエコノミストがおられるようです。2024年1-3月期のGDP一次速

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日銀の政策転換と物価の展望

日銀の政策転換と物価の展望

日本銀行が、2024.03.19 に金融政策を大きく転換しました。(*1)
この政策転換が妥当だったのか、今後の物価の展望について、有識者の言説などを基に、考えてみます。

僕自身は、物価目標を安定的・持続的に達成する前の金融政策転換は、すべきでないと考えています。賃金上昇が実質消費の拡大につながり、価格転嫁や投資を促す好循環に至っていない、と考えているからです。

1.見切り発車の金融政策転換2

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長期国債買入れ予定額の変化

長期国債買入れ予定額の変化

日銀の金融政策が、2024年3月19日に大きく変更されました。
黒田東彦日銀の枠組みからの卒業(テクノクラート側が、政府・日銀の共同宣言以外は、好きにやります宣言)だと受け止めました。

色々と言いたいことはありますが、投資家の方から「上限を随分と減らしている」コメントもらったので、実際の値をチェック。

長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2024年4~6月)
https://w

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日曜討論2024.03.17

日曜討論2024.03.17

日曜討論で日本経済に特に重要だと思われる内容(片岡剛士さんのご発言)をピックアップしてまとめました。

日曜討論:日本経済はいま 成長に何が必要か (2024年3月17日)
ご出演者 ※敬称略
齋藤 健 経済産業大臣
片岡 剛士 PwCコンサルティング チーフエコノミスト
黒澤 元国 埼玉県商工会議所連合会広域指導員
首藤 若菜 立教大学教授
野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

大事なポイント足下の

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どうなる?賃上げ

どうなる?賃上げ

2024年春闘の一次速報がでました。なんと、5.28%アップ、だそうです。
賃上げが企業優劣左右 連合1次集計5.28%、持続力競う - 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA153WP0V10C24A3000000/

2024年の消費者物価指数(コア)を、2.4%と仮置き、
同じく所定内賃金(一般)を3.1%と仮置きしてグラフを作ってみまし

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経済対策2023

経済対策2023

岸田文雄総理大臣が経済対策について検討するよう、指示を出したそうです。

令和5年9月25日 経済対策についての会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2023/0925kaiken.html

令和5年10月の段階で、得られる情報を基に、今必要な経済政策を考えてみます。
政府

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日銀のYCC修正前後のYCの変化

日銀のYCC修正前後のYCの変化

2023.07.28 に日本銀行がYCCの運用修正を発表しました。

2022.12.20 にもYCCの修正をしており、約7ヵ月後に再度、修正が行われたことになります。

財務省のサイトから国債の金利情報を取得し、
2022(令和4)年12月のYCC修正前後と、
2023(令和5)年7月の修正前後の国債金利を1~20年ものまで、グラフにしてみました。

イールドカーブ全体が上振れしつつ、10年もの

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2023.02.19日曜討論/リフレ派無双

2023.02.19日曜討論/リフレ派無双

日本経済、特に雇用環境に大きな影響を与える金融政策について、リフレ派の岩田規久男さん、片岡剛士さん、旧日銀に在籍されていた河村小百合さん、早川英男さんによる討論がありました。
日本経済に資する部分を文字起こしいたしました。
(内容が良かった、気に入ったなど、ありましたら、スキ、共有、サポートをお願いします)

日曜討論 日銀新体制へ 金融緩和の行方は
https://plus.nhk.jp/wat

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日銀の政策変更(2022.12.20)

2022年最後の金融政策決定会合で、日銀が動きました。
"国債買入れ額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を、従来の「±0.25% 程度」から「±0.5%程度」に拡大する" (*1)(*2)

この結果が伝わると、マーケットは株安・円高方向へ動く反応を見せました。
また、経済に詳しそうな名前の新聞では
・10年目で事実上の利上げ
・円安など副作用の批判受け
・長期金利急騰、円高も進行
などと報じま

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日曜討論の片岡剛士元日銀審議委員

日曜討論の片岡剛士元日銀審議委員

日曜討論を久しぶりにテレビで見ました。その中で、片岡剛士元日銀審議委員が、とても大切なご発言をされていたので、一部を書き起こし。

ポイント (ポイントは筆者の感想から)
1.円安は日米金融政策の差が主因
2.安定的な賃上・物価上昇目指せ
3.経営者・旧日銀出身者のマクロ経済政策議論は残念

日曜討論の番組では充分に語り尽くせなかった部分もあると思われます。
片岡剛士さんの直近のレポートをご一読く

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