短編小説

124

うなぎ

 週末に近づくにつれて、直人にあいたくなる。あいたくはなるのだけれど、あうと拍子抜けするほどあいたかった気持ちがすっかりと失せてしまう。
 だから。
 直人がもう泥酔で眠っているだろう時間に故意にいく。たとえば、23時すぎとか、日曜日になろうとしている時間に。
 合鍵を鍵穴に差し込むタイミングでお隣の『ナカタ』さんが車に乗って帰ってきた。ばったりと鉢合わせという偶然。
 直人曰く、『ナカタ』さんは

もっとみる

オンナでいること

 1日に5人のおとこがわたしの乳首を舐め胸を揉みしだき陰部を舐めあげ股を割り箸のように2つに割り容赦なく入ってきて出ていった。
 もう今さらなんともおもわない。無意味に天井だけをぼんやりとみつめる。天井にある壁紙が鳥の柄だったということに気がつく。鳥が揺れて視界が狭くなり、上にいるおとこの荒い息遣いだけが部屋中を満たす。
「いってもいい?」
 決壊が迫りおとこの声に余裕がなくなる。わたしはそこで勝

もっとみる

千秋楽

 ひさしぶりに直人と一緒の布団に入り、ひさしぶりに泊まった。だいたい、今夜いくね。とメールを打ったくせにいくのが遅くなったのだ。(ほんとうにつまらない野暮用で。以前デリヘルで働いていたときのお客さんにあっていた。嫌だけれど。仕事なのでと割り切っている)23時を過ぎていてだから直人はソファーで舟を漕いでいた。スーピー、スーピーという寝息はいっそおもしろいくらい心地よさそうで、いちいち起こすのはやめて

もっとみる

まいちゃんのおとうさん

 毎週土曜日の朝。必ずではないにしろ、まいちゃんと喫茶店のモーニングを食べにいく。
「うち、パンケーキモーニングとアイスカフェラテで」
 いつもおなじメニューでいつもかわいい声と顔でいつもいく喫茶店のウェートレスに小声で注文をする。
「はい。少々お待ちくださいませ」
 これもまたいつもとおなじセリフでウェートレスがしゃべる。ロボットが読み上げる定型文のように。わたしは朝、といっても11時半くらいだ

もっとみる

図面

 ブーブーブー……、スマホが震えたのはわかったけれど、どうしてもまだ、眠たくて起き上がることができなかった。
 それでもぐぐぐっと手を伸ばしてスマホを握りしめる。時間もついでに確認しようとして。スマホを手にとり、ぎょっとなる。
 時間よりもメールの相手からに。
 修一さんからだった。時間は朝の8時。なんでまた? 文面は『今からあえない?』という今から喫茶店にいかない? みたいな軽いメールだった。

もっとみる
まあ。ステキ

 雨が降っている。それもバケツをひっくり返したような大雨が。車、きれいになるかも。わたしはそうおもいながらわが愛車フィアットのハンドルをおそるおそる握りしめる。
【ブーブー】
 助手席においてあるスマホが振動をし、信号に引っかかったとき、手に取る。
 その名前をみて、はっとなる。と同時にそんな気もしていた。なぜならバケツをひっくり返したような雨だから。
 修一さんからだった。
 時間ある? という

もっとみる
まあ。ステキ

1枚のチョコ

「昨日の夜中さ、ぱっと目が覚めて何気なくテレビを見たら、どこかの国のどこかの人が板チョコを食べてたんだよ。それがまあ、うまそうで……」
 なにを唐突にいうのだろう。そうおもいながら直人の方に顔を向ける。あるある〜。たまにあるよね。チョコがものすごく食べたくなるときがさ、と声を出していい、いやいやわたし毎日食べてるんだよね、はいわないでおく。
 わたしはチョコがなおちゃんよりも大好きで毎日なにかしら

もっとみる
まあ。ステキ

明け方のわたしたち

 何時だろう? 直人の気配にはっと意識が現実に戻ってくる。なにか夢をみていた。たくさんの動物たちに囲まれている夢だった。その中の動物に食べられそうになっているときに目がさめた。けれど目ざめた側からその夢の色彩も感覚も徐々にわたしの中から忘れていく。夢っていうのはいったいなぜみるのだろう。直人は、あ、起こした? とメガネを床にことりと置いていい、わたしを抱きしめた。裸のわたしを。直人はわたしを触りわ

もっとみる

あかいろ

 19歳のとき、生理が止まった。34キロ。あきらかに変なダイエットで痩せて意図的に来なくなった。意図的ではないか。そんなこと望んではいなかったのだから。望んでいたのは、骸骨みたいになった自分の体。痩せ細った脚や腕。それと引き換えに生理が止まった。体を無茶苦茶に扱った罰を受けたのだ。
 特に太っていたわけではない。標準だった。けれど背が低いので標準の体重でもぽっちゃりに見えた。とゆうかわたしにはそう

もっとみる
へへへ

従う

 その男はわたしになんでもさせた。あってすぐシャワーもしないまま洋服を脱ぎ体中、頭から足先まですべて綺麗に舐めさせた。舐めたあとはわたしを裸にし、赤色の麻縄で拘束をし床にコロンと転がした。扱いはそれこそぬいぐるみ以下だった。臀部を軽く蹴られ、それから顔を本気で踏みつけた。
「きたない顔を見せるな」
 男はいつもわたしの顔を「きたない」「みぐるしい」と罵った。罵ることは男の一種の快感だった。だからわ

もっとみる
あら、ステキ