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ひび

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日々のことについて文章を書きます。
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#エッセイ

東京の秋・5

東京の秋・5

日曜日。シャワーを浴びて少し眠った。朝になり、チェーン店の牛丼を食べて、遅れることなくバスに乗り、八時間後、無事大阪に帰ることが出来た。夜、満身創痍で帰宅して、泥まみれのぶたになった。と、ここまでが今回の東京での顛末のすべてである。やはり自分は東京で痛い目に合った。東京もなかなかええやん、と思ったらこの仕打ちである。

普段誰かと話していると、器用ですね、とか、賢いですね、とか言われることがある。

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東京の秋・4

東京の秋・4

まったく情けない。また新宿で夜を過ごさなければならない。夜の歌舞伎町を再び歩く。相変わらずのゴミ溜め。自分はマスクをしていたのだが、小声でファックとシットともうええわを繰り返していた。黒人に、Yo、メン、と言われても、肩をぶつけたギャルに、ってーな、と言われても、ファックとシットともうええわを繰り返した。何も怖れることは無かった。

カプセル宿に行く金も、サウナに行く金も惜しかった。肉体的精神的疲

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東京の秋・3

東京の秋・3

土曜日。夜まで何も無い。自分は色々と計画を練り上げた結果、早稲田へ向かった。というのも、夜には早稲田のホテルで漫才仕事がある。そのため、一旦早稲田駅のコインロッカーに荷物を預けて身軽になってから夜まで遊ぶことにしたのである。更には地下鉄の一日券を購入することで、これでどこへでも行ける。これこそが計画的な行動。天気も上々で、完璧、ペキカンである。自由を手に入れた自分は、るんるん気分になった。早稲田駅

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東京の秋・2

東京の秋・2

金曜日。ほとんど眠ることなく、朝を迎えた。風呂に入ってチェックアウト、外に出る。昨晩の異国丸出しの街は雰囲気が変わって、穏やかな下町になっていた。新大久保という、コリアンタウン的な場所のよう。ぶらついて、サ店で飯を食って、携帯をいじったり、鼻糞をほじったりして、時間を潰す。どこかへ遊びに行こうかとも思ったが、荷物が重いので、諦めて、珈琲を飲み続けた。やたらと鼻水が出る。東京の濁った空気を恨みつつ、

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東京の秋・1

東京の秋・1

木曜日。昼頃、新大阪駅から新幹線に乗る。朝から何も食べていなかったので駅弁を買おうと思い、構内の弁当屋であれこれと品定めをする。値段、内容を踏まえた上で、近畿周遊弁当か満腹弁当の2つに絞られた。おかず多めの近畿周遊弁当か、量の多い満腹弁当か。本当のことを言うと、牛タン弁当が食べたいけれど、弁当ごときに1300円も払う阿呆には成り下がりたくない。今回は三日間の滞在である。初めから金を使うような無計画

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苦悩と虚無の主催者

月に一度、「ナイトオブコメディー」という主催ライヴをしている。何組かの芸人が出演して、それぞれ漫才なりコントなりをしつつ、途中に阿呆な企画を2つする。もう三年近く同じ面子でやっている。

主催ライヴを毎月するのは何かと大変で、まず企画を考えなくてはならない。こないだは、「五感を奪って演芸ショー」という企画をした。人間の五感、つまり視覚聴覚嗅覚味覚触覚、それらが奪われた状態でネタをするというもの。視

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拷問と侮蔑

こないだ、深夜のスーパー銭湯に行ってぬくぬくした。そこは大手のパチンコ屋が営業している巨大なスーパー銭湯で、本当は、そういう場所にはあまり行きたくない。何となく街の銭湯に行く方が良いような気がするのは、古き良きを愛する市民のこころ。それでも安価で、タオルや石鹸も付いていて、サウナや露天風呂があって、夜中も営業しているスーパー銭湯は、合理的に造られた完璧な快適がそこにあり、俗世にまみれた自分はきちん

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漫才が産まれるサ店

鶴橋にある、喫茶「シェルブルー」が閉店していた。環状線の駅に併設された、なんてことのないサ店だったが、学生の頃から時折行く店だったので、寂しい。ここで自分は、本を読んだり、誰かと待ち合わせをしたり、相方と漫才を作ったり、した。長居をしても店員は完全に無視してくれるので、安心して居座ることが出来た。薄暗い照明の店内には木目調の机が並び、珈琲を飲んでいると、何分か置きに天井からゴォォォと電車が走る音が

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