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東京の秋・1

木曜日。昼頃、新大阪駅から新幹線に乗る。朝から何も食べていなかったので駅弁を買おうと思い、構内の弁当屋であれこれと品定めをする。値段、内容を踏まえた上で、近畿周遊弁当か満腹弁当の2つに絞られた。おかず多めの近畿周遊弁当か、量の多い満腹弁当か。本当のことを言うと、牛タン弁当が食べたいけれど、弁当ごときに1300円も払う阿呆には成り下がりたくない。今回は三日間の滞在である。初めから金を使うような無計画なことはしない。贅沢禁物、けれども空腹。迷っているうちに頭がぐるぐるになる。ハッと時計を見ると発車時刻が迫っていることに気付いて、結局、焼き鳥弁当と焼き鯖寿司とお茶とチョコレートを買ってしまった。1300円。自分でも自分の行動がよく分からない。

東京の秋は少し寒かった。念の為セーターを着て来たのが正解で、その辺りの計画性は自負している。夕方、新井薬師に行く。昔、友達が住んでいたので何度か来たことのある下町。夕暮れが似合う、良い風情の街である。小さな小屋でライヴをして、軽く打ち上げの後、新宿へ向かった。新宿は一番苦手な街のはずなのに、なぜかこのとき、自分は新宿に向かった。夜の歌舞伎町はゴミとゲロと黒人だらけで、殺意が芽生える。歩いているうちに急激に疲れてきたので、カプセル型の安宿に入ることにした。

大浴場で癒されて、なかなか良かった。夜中に外出をして辺りをぶらつくと、いつの間にか知らない街に出た。韓国語の看板がやたらとピカピカ光って目立ち、中華の店やベトナムの店が並び、アジア系の外人がへらへらシンナーを吸っている、異国丸出しの街だった。怖くなり、すぐさま宿に戻ったが、宿は宿で、喫煙所で裸のおっさんが煙草片手にむせていたりするので、落ち着かない。カプセル内は狭いが、布団、シーツともに清潔で、テレビも付いていたので、明日に備えてアダルトチャンネルで一発抜くかと見たものの、Lカップの爆乳女が絶叫しながら喘いでいて、牛にしか見えなかった。自分は巨乳は苦手で、爆乳ともなると、牛にしか見えない。しばらくNHKなどを見つつ、老後のことを考えた。寝る前にもう一度アダルトチャンネルに合わせると、牛が首輪を繋がれて乳を揺らしていた。自分はテレビを消して、再び老後のことを考えた。つづく。

何もいりません。舞台に来てください。