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東京の秋・2

金曜日。ほとんど眠ることなく、朝を迎えた。風呂に入ってチェックアウト、外に出る。昨晩の異国丸出しの街は雰囲気が変わって、穏やかな下町になっていた。新大久保という、コリアンタウン的な場所のよう。ぶらついて、サ店で飯を食って、携帯をいじったり、鼻糞をほじったりして、時間を潰す。どこかへ遊びに行こうかとも思ったが、荷物が重いので、諦めて、珈琲を飲み続けた。やたらと鼻水が出る。東京の濁った空気を恨みつつ、外を見れば小雨が降って、勿論傘は無い。

夕方、原宿へ行き、劇場でリハーサル後、単独ライヴの本番をやり終えて、まずまず良かった。相方と、ゲストのクリスタル大坪氏と写真の自撮りをした。そして軽く打ち上げをした後、自分は再び新宿に向かった。なぜなのだ。自分でも自分の行動が分からない。この日の新宿は阿呆丸出しの女が沢山いた。路上で寝そべっていたり、黒人に抱きつかれて喜んでいたり、奇声をあげて踊っていたり、した。誰か泊めてくれる女がいればありがたいのだが、金を盗られたり病気を移されたりしても困るので、諦める。チェーン店の牛丼を食べると、とてつもない睡魔に襲われた。

手頃なサウナに入り12時間パックにして、風呂に入ってチューハイを飲んで仮眠室で眠った。隣のおっさんの爆音のいびきで目覚めて、時計を見れば深夜三時。舌打ちとともに、東京へ来たことを悔やんだ。仕方が無いので休憩所で煙草を吸っていると、隣に座った、禿げかけた茶髪のおっさんの様子がおかしい。貧乏揺すりをしながら、じろじろとこちらを見てくる。何度か目が合って、自分は黙っていたのだが、禿げかけの茶髪は突然、ふふ、と笑い出した。自分は何も面白いことはしていない。ただ煙草を吸っていただけなのに、禿げ茶は、ふふ、と言いながらどこかへ消えて行った。自分は、家に帰りたいなあ、と思った。つづく。

何もいりません。舞台に来てください。