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敷島
2023年12月29日 17:39
空は朱と紫のぼかし緞帳が下りて一日の終わりを告げる静止することのない私たちを影絵となった山々が包み込む私たちの足は常に前進を求められるゆっくりの歩みもいつの間にか速歩きになるでもじつは小さな水晶玉のわらび餅を四季を知らないまま食う人に私はなりたいと思うスネアドラムのさざめきがそういう人の静かな孤独を10円ハゲみたいな太陽の前に晒す干いては満ちる不安定の豊かさを知らない太陽
2023年12月26日 18:19
コーヒーの湯気の人待ち自らの影と戯れていたら誰を待っていたのかも忘れたよただ、ジグソーパズルの1ピースが見つかってことの全貌が見えてきたみたいに全ての幻想と私の狂気が明るみになった「新しい年も迎えるしさ、切り替えようよ」って北風小僧が肩を叩く私は本当は指先まで凍えてもううずくまってしまいたい狂気と正気の境界線で腹を空かせて誰を探していたのかもよくわからない背中ばかりが冷
2023年12月25日 23:45
冬の光の青いベールは人生に対して眠たげなぼくを柔く包む名も知らぬ人たちの愛の渦はぼくの視力を奪っていった「おまえは冬のキリギリス」そんな警告灯が明日の安穏を切り裂く臓器をひとつひとつ失うように銀杏は無風のこの世で散っていくぼくが泣きそうなくらいに白い木蓮の花がゆっくりと開くように今日もどこかで誰かが発狂するそれは世界があまりにも美しすぎるから「日暮も近いから、手を繋い
2023年12月24日 08:07
いつから絶望を背負っていたんだろういつから絶望を抱えていたんだろう我に帰り 振り向けば 生きた証というものは砂浜の足跡のようやがて消えてしまう足跡だ絶望は手首を走る青い血脈のよう身体に大昔から備わっている我々がまだ透明な鱗をまとっていた頃から絶望の存在に気がついたときもう既にそれは完成形であり 硬く 冷たく 重い自らの心にぽっかりと空いた真っ黒い穴は特別な人に見せたくな
2023年12月22日 09:50
少しずつの虚しさを板チョコレートを割るように私はゆっくり食っている胃袋が虚しさでいっぱいになっていつかはち切れてしまうまで私はゆっくり食っている絶望する人は微笑う希望する人は涙を流す私の表情筋はどちらともなく絶望とも希望とも取れる喪失感がお冷の氷を噛むように口内にしみるのみただ私は全ての人の絶望に加担している突然の吐き気小さくて弱い胃袋がいよいよはち切れそうだ細切れ
2023年12月20日 11:00
私は海をわらう寄せては引く波にときめきを重ねて水面には昨宵の星屑が散らされるまるで海と交わった夜空の忘れ物ざざざと吹く潮風は時間も空間も知らない私は私として淋しさに腰かける数匹のフナムシと私は一つの岩となりやがて風化する海水が私の隙に入り込む受容と一体化をおそれる私に海に、海にのまれる
2023年12月18日 15:40
寒椿と凍て星のジレンマは私の眼に火影を生み落とし熱視線は明鏡の正しさを溶かすーーこの世の儚さはドミノ倒しのようそう了解したさき拝顔の喜びに震える
2023年12月8日 18:18
唇に露の香を 装いに花の燦きを「あいにいきます」 私のいちばんすきな私で失恋と熱愛の溶け合う境界心臓はすっかり砂に満たされ身体はその重さに傾く霜の降りた世界に彼の人の魂が震えているそして水精でできた鈴を鳴らした私の眼から一条の涙その鈴の音の美しさは春の潮声に似る読みかけの詩集を閉じ車窓の光景に目が覚めるように彼の人の清い心は私の羅針盤を研ぎ澄ます「あいにいきます」 彼の人は
2023年12月6日 14:19
不意をつかれたあの人の名前を見つけたこの広い広い世界のお話わたし、青天の下で少し踊ったりした爪先まで熱い歓喜が巡ったくすぐったいくらいにこの世が嵐の大海ならばわたしは櫓を失った小舟太陽の消え去った世界であの人は遠くの灯台だったその光は慈愛をたっぷりふくみその影は憂愁をそなえたあの人の名前を見つけた瞬間は鱗粉が冬の風に煌めいたようで本当は刹那の香りがしたでもわたしの
2023年12月4日 10:37
鱗のかがやき散り散りと舞う心居直れば浮き草のわたしひっそりゆらぎをいだきつつあの人から湧く水の清さをしんしんと身に染めているあの人から注ぐ陽光の碧色をさんさんといのちで喰んでいる浮き草はそうやって息している激しい水流は孤独を踊らせるあの人の姿も見えなくなるが水はひそかに透光をたもつ誰をも受けつけぬ冬の河は恋を磨れば固くなり愛を包めば柔くなるもしまたあの人にあえるのなら