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詩「花輪」

唇に露の香を 装いに花の燦きを
「あいにいきます」 私のいちばんすきな私で
失恋と熱愛の溶け合う境界
心臓はすっかり砂に満たされ
身体はその重さに傾く
霜の降りた世界に彼の人の魂が震えている
そして水精でできた鈴を鳴らした
私の眼から一条の涙
その鈴の音の美しさは春の潮声に似る
読みかけの詩集を閉じ
車窓の光景に目が覚めるように
彼の人の清い心は私の羅針盤を研ぎ澄ます
「あいにいきます」 彼の人は私のすきなひと
無条件の愛は 限りない思い遣りは
誰もが知り 誰もが知らない 悦びの花輪
翡翠色の岬から手を振る人よ
お風邪など召しませぬよう
どうかご自愛を

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