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詩「生の啓示」

不意をつかれた
あの人の名前を見つけた
この広い広い世界のお話
わたし、青天の下で少し踊ったりした
爪先まで熱い歓喜が巡った
くすぐったいくらいに

この世が嵐の大海ならば
わたしは櫓を失った小舟
太陽の消え去った世界で
あの人は遠くの灯台だった
その光は慈愛をたっぷりふくみ
その影は憂愁をそなえた

あの人の名前を見つけた瞬間は
鱗粉が冬の風に煌めいたようで
本当は刹那の香りがした
でもわたしの心がずっとあたたかいのは
無始無終の交差点よりつづく
所有者のない約束を交わしたからだ

あの人の光を掴んだと思いきや
その光はシルクの輝きを保ちつつ
わたしの手中から滑り出でる
光はわたしの涙とともに空間にめいっぱい弾け
純黒の空にオーロラがたゆたう
そう、あの人が生きているという啓示

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