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マザコン彼氏と、彼の母親から学んだこと

私の母親は「昭和の女」そのものだ。料理・洗濯・掃除・裁縫を完璧にこなし、家の中が乱れている日なんて記憶を遡っても一度もない。食事や挨拶は徹底的に指導を受けたし、学校の宿題に関しては目を光らされていてサボった日は1日もない。まだ幼かった私にとって母は絶対的権力者で、強く、格好いい大人の象徴だった。

そんな家庭で育ったためか、私はダラシない年上が心底苦手だ。年下・同学年なら許せるのに、たった一歳年上ということだけで、「どうかしっかりしていて欲しい」と強く希望を抱いてしまう。離れた歳なら尚更。勝手に「大人=しっかりしている」の世界線で生きてきたから、家の外でもそれを期待してしまうのだ。

最近元彼のことを思い出すことがあった。ちなみに元彼は同じ歳。その時、芋蔓式に「彼の母親」についても思い出したのだ。その記憶を辿ってみて「彼とお付き合いを続けなくてよかった」と心の底から思ってしまった、そんな性格の悪い私の話を聞いてほしい。


もうとっくにお別れをしていて過去の人だが、私には大好きな彼がいた。学生時代の初恋であり、大人になってから念願叶ってお付き合いをすることになったのだが、お付き合いをしてから気がついた話。彼と彼の母親は共依存の関係性だった。冷静に第三者から見て「マザコン・過干渉」。今だから言えるのだが、私はその双方関係を最後まで好きになれなかった。

こんなことがあった
彼の母親は、私が知らないような家族旅行の思い出話を会う度にわざわざ会話のメインに持ってくる人だった。「ハワイに行ったあの時さ・・・」「あそこのホテルでさ・・・」等々、彼と母親だけにしか分からない内容をわざわざ目の前で展開するのだ。思い出話が笑い話なのかなんなのかも分からなかったが、毎回そんな調子、蚊帳の外に出される空気感がなかなか寒かった。

まるで「息子のことは私の方が分かっているわ」と言わんばかりの態度に腹の底で悪態をつきまくっていたのは致し方ないだろう、と今でも思う。彼も私の視点に立つことはなく、永遠と母親と過去を懐かしむタイムに入る。勿論一度も母親の前で私の肩を持ってくれたことはない。ちなみに彼の実家の廊下には、彼の元彼女の一人で写った写真が堂々と飾られていた。その家に上がることの苦痛といったら、あの時の私はよく頑張った方だと褒めてあげたい。


こんなこともあった
私と彼と二人で旅行中だと知っているにも関わらず、彼に電話をかけてきて5分ほど会話をする。それが1日に3、4回は当然(それは日常でも平日・休日関係ない)。彼は「一人っ子だから寂しいんだと思う」と言って電話に毎回出たけど、今考えるとちょっと異常。運転中でもホテルでくつろいでいる時も、ご飯屋さんに入っても、私に断りを入れることなく電話に当然の顔をして出る。

ちなみに地元が同じでその地域の中で同棲をしていたから、家から歩いて10分の距離。会えない距離感ではないのに、まるで恋人のように1日何度も電話をして世間話をする。その関係性が少し怖かった。女の私ですら、そんなに何回も電話が毎日かかってきたら「またか・・・」と思うのに、その感覚がないことが怖かったのだ。

極め付けの話
彼の家族はサーフィン一家で一緒に海へ連れて行ってもらった時、歩けば10分の距離にコンビニがあるにもかかわらず、母親と母親の友人は歩いて1分ほどの岩の間でお手洗いを平然とし、笑いながら「しちゃったよ〜」のテンションで帰ってきた時は、言葉通り「引いた」。女二人で、いい年したおばさん達が外で・・・私は冗談でも笑えなかった。そして冷静に思った。「この人と親戚になるのは、私には無理だ」と。

勿論彼には言えなかったけど。サーファーあるあるなのかすら分からなかったけど、自分の母親ならありえない行動を当然やってのけてしまうこと、そしてそれを仮にも息子の彼女の前でしてしまうこと。私の知っている年上の大人の人ではいないタイプ、私がもっとも苦手としてきたタイプだった。


なんて、今3つの例を取り上げたが、こんなエピソードどんどん出てくる。彼と別れてから彼の記憶を思い出すたびに、彼の母親のことをセットで思い出してしまい、当時は思わなかったようなマイナスな点を頭に浮かべるようになってしまったから、申し訳なく思うも、こちとら大変な思いをしている。

失恋をすると、思ってもみなかった自分と向き合うことになる。「相手に感謝してお別れする」そんな風に綺麗に終わればいいけど、実際は相手の嫌だったところを思い出してはムカムカして「このヤロー、次はもっといい男捕まえてやるんだからね」となんとも惨めな意気込みをしたり。付き合っている時は「ま、これも彼の一面か」と思っていたはずが「こういうところが嫌だった」と次々浮かぶのは不思議だ。

例えば、元カノとのアルバムを新居にそのまま持ってきたり、「しお」「砂糖」等、元カノが書いたであろう調味料を私に処分させようとしたり、元カノがアルバイトしていたご飯屋さんに私を普通に連れて行ったり。

よく考えたら常に元カノと母親の存在を意識させられるお付き合いだった。なんとも不思議な交際だったと思う。違う女の影にいつまでも怯える交際に疑問を持っていたけど誰にも言えなかったこと、受け入れなくちゃいけないと思い込んでいた不満からの解放は、今、凄まじい反動を見せている。

ちなみにお別れしたトップの原因は「私が彼に怒ったから」であり、内容云々、関係なく彼は「怒られたことが人生で一度もないから少しでもイライラを感じると怖くて嫌だ」と言った。お姫様かよ。結婚して子供が産まれて育児をするようになったとしても、少しもイライラしてはいけないという前提条件に驚いた記憶がある。家のことは全て私がやってこの世の中時代遅れの不平等だとしてもニコニコしていないといけないプレッシャーに私は勝てなかったのだ。

それでも好きだったから、あれだけ復縁したいと思っていたのに時間が経てば、なぜそんなに復縁に拘っていたのかが分からないほど、女というのは時間によって強く逞しく、次へ歩いていけるもんだな、と実感し、今日もお気に入りのカフェで優雅に一人時間を楽しんでいる。きっと出会うべくして出会って、そして別れるべくして別れた。少なくとも同じような恋愛は今後絶対にしないと思う。深く傷つけられた、それでもその傷を勲章のように大事にも思う。

家族と仲良しなことは素晴らしいことだ。でも、それを過剰な主軸にして恋人と過ごすことは違うのではないか。お母さんファーストじゃなく、パートナーファーストをしてほしかった。掛橋になってほしかった。あなたが私の肩を持ってくれなかったら、一体誰が支えになってくれるんだ。もし子供が産まれても、きっと私よりお母さんの意見ばかり優先させてしまいそうな、そんな未来に対しての不安を持った。そしていつまでも元カノの存在をチラつかせるその心は、絶対に好きになれないだった。

どこからどこまでがマザコンなのか、その線引きは難しいけど、受け取る側がそう思えばイコールだろう。家族になることを考えての交際相手なら、今まで自分が属していた家族じゃない、新しい家族を作るためにお互い支えなければ成り立たない。守っていかないと難しいだろう。彼からは本当にたくさんのことを学んだ。苦しかったけどその学びに感謝したい。今どこで何をしているのか分からない元彼を思い出して、こんなことを思っている水曜日の夜。

2023/2/8  「水曜日にちょっとの一息を。 shiina」


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