これは現実?夢?虚構?頭がおかしくなっちゃうよ…「マウス・オブ・マッドネス」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(516日目)
「マウス・オブ・マッドネス」(1994)
ジョン・カーペンター監督
◆あらすじ
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保健調査員のジョン・トレントは、失踪した作家サター・ケインを探して、新作「マウス・オブ・マッドネス」の原稿を受け取るよう出版社から依頼される。調査を開始したトレントは、やがてケインの小説に出てくる架空の町ボブズ・エンドに辿り着くが…。(Filmarksより引用)
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ジョン・カーペンター監督作品はこれまでにもいくつか見ていますが、今作は同監督の「遊星からの物体X」(’82)、「パラダイム」(’87)と合わせて“黙示録3部作”の3作目として位置付けられています。
「遊星からの物体X」は未視聴なので近いうちに見ようと思います。
◇失踪したホラー作家のケインを追う保険調査員トレントが辿り着いたのは、ケインの作品に登場する架空の町だった。そこでトレントに信じ難い出来事が次から次へと襲い掛かる。
という
どこまでが現実でどこからが虚構の話(トレントの夢、妄想)なのかの不明瞭さが非常に不気味で心地良かったです。
『トレントが精神病院に収容される冒頭のシーンがまたラストに繋がるという終わり方』や『中盤からの舞台となるのが小説に登場するホブという架空の町』、『クライマックスに山程クリーチャーが登場するシーン』などは特にカーペンター節が効いていてとても良かったです。
ちなみに作中に登場する激ヤバホラー作家のサター•ケインのモデルはカーペンター監督とも親交が深い作家のスティーヴン・キングと言われてます。
日本ではあまり馴染みがありませんが、クトゥルフ神話を下敷きにした隠喩やワードが度々登場します。
•ホブの町のモーテルの名前がピックマン•ホテル
(ピックマン•••クトゥルフ神話に登場する架空の画家)
•タイトルにもある「in the mouth」の部分を繋げて読むとインスマスとなる。
(インスマス•••クトゥルフ神話に登場する架空の港町)
更には、本作の原題である「In the Mouth of Madness」もハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説「At the Mountains of Madness」(邦題「狂気山脈」)を示唆しています。
●ハワード・フィリップス・ラヴクラフト•••1890年生まれのアメリカの小説家。怪奇小説や幻想小説のパイオニア。死後、彼の作品は注目を浴びるようになり、一連の小説がクトゥルフ神話として体系化されている。1937年死去。
現在U-NEXTで配信中の他、アマゾンプライムでは407円からレンタル可能です。私は五反田のTSUTAYAにてレンタルさせていただきました。
先述しましたが、この作品はどこまでが現実でどこからが虚構なのかが本当にわかりません。
行方不明となったホラー作家のケイン。彼の作品を読んだ人々はその世界に取り込まれ、次々と狂っていく。
一方、凄腕保険調査員のトレントはケインに保険金を掛けていた出版社の社長からの依頼でケインを捜索する。何か手がかりはないかとケインの小説を読み進めるトレントは、毎晩悪夢に苦しむようになる。そしてある日、小説の表紙をちぎって組み合わせるとニューハンプシャー州の地図になることを発見。編集者のリンダと共に調査へ向かう。
様々な怪奇現象に見舞われながらも二人がたどり着いたのはケインの小説に登場するホブの町とまったく同じ。そこで二人は現実と虚構が入り交じる不可思議の世界に巻き込まれていく…
という終盤までの大筋を見ると、おそらくトレントが小説を読み始めてからは全て虚構(小説)の世界と見て取れます。
トレントは根っからの現実主義者なのでホブの町であり得ない出来事に何度も遭遇しているにも関わらず、出版社が新作の宣伝のために行ったドッキリでは?と疑います。
人為らざる者となっていたケインとはこの町で会っており、彼は教会で新作を執筆していました。ケインはトレントに対して原稿を届けるよう命じます。トレントはそれを拒否して命からがら町を抜け出したものの、新作「マウス・オブ・マッドネス」の原稿が彼のもとに届きます。
恐ろしくなったトレントは原稿を燃やし、出版社に謝りに行きますが、社長からは「何を言っている?原稿はもう何ヶ月も前に受け取ってるし、本はもう発売されてるよ。あと映画も公開されるぞ」などと言われてしまいます。
いよいよ気が触れたトレントは読者と思しき青年を殺害。精神病院に収容されるという冒頭のシーンに戻ります。自分の顔や体、部屋中に十字架を書き、「自分は作り物。ケインは創造者だ」と精神科医のウレン博士に訴えます。
そしてその後、どうしたことか施錠が外れ、トレントは外に出ます。誰もいない荒廃した町でトレントは「マウス・オブ・マッドネス」が上映されている映画館を見つけて中に入ります。
楽しそうにスクリーンを見つめるトレント。そこにはそれまでの自分の姿が映し出されていました。それを見てより大きな声で笑い続けるトレント。
というところで物語は幕を閉じます。
最後まで見るとトレントが小説を読む前からすでに虚構の世界だったとも考えられます。
時系列的に見ても、“原稿を数ヶ月前に渡している”というところに矛盾が生じますし、もしかしたらケインが「マウス・オブ・マッドネス」を脱稿した時点で全ての物語が決まってしまったのかもしれません。最後の最後までトレントはその物語から逃げ続けるも、その流れに逆らうことはできず、気が狂ってしまったのではないでしょうか。そして小説の通り、人類は終わりを迎えたのかもしれません。
中々に難解な作品なので一回見ただけでは内容を全て把握するのは難しいかもしれませんが、個人的には相当面白かったです。
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