彼女がゾンビになって復活!?究極の愛がここにある!のか?「ライフ•アフター•ベス」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(561日目)
「ライフ•アフター•ベス」(2014)
ジェフ・バエナ監督
◆あらすじ
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主人公のザックは、最愛の恋人のベスを不慮の事故により亡くし、悲嘆に暮れていた。しかし数日後、思いがけない奇跡が起きる。ベスが墓穴から這い出して、家に戻ってきたのだ。ザックは彼女とは別れるつもりだったのだが、神様がやり直しのチャンスくれたと思い、これまで以上にベスを大切にしようと努める。しかし次第にベスがゾンビとして成長していく姿にザックは戸惑い、段々と心が離れていく自分に気づく。そんなとき、幼なじみのエリカに出会い、きれいな生身の人間に惹かれはじめるザック。しかし、ゾンビになりかけているベスは、それを許さなかった...。(Filmarksより引用)
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『死んだはずの彼女が墓の中より復活!徐々にゾンビ化していく“その人”を愛し続けることができるのか!?』
という、新感覚の“ゾンビ✖コメディ✖恋愛”ムービーとなっています。
ホラー映画として見ると少々物足りないかもしれませんが、普通の娯楽映画として見れば誰でもそれなりに楽しめる作風だと思います。
監督を務めたジェフ・バエナ氏は「天使たちのビッチ•ナイト」(2017)や「恋のからまわり イタリアの誘惑」(2022)などコメディや恋愛系の作品を得意としているため、今作のようなゾンビものでありながら笑いあり恋愛あり涙ありのティーンズムービーは彼の独壇場でしょう。
主演には「アメイジング・スパイダーマン2」(2014)にて主人公ピーターの親友•ハリー•オズボーン役を務めるなど、人気若手俳優の筆頭株として現在も第一線で活躍中のデイン・デハーン氏がキャスティングされています。
デハーン氏が出演している「オッペンハイマー」、「ダム•マネー ウォール街を狙え!」は現在も公開中です。
製作費240万ドルに対して、興行収入はおよそ88万ドルとあまり芳しくなく、批評家からの評価もあまりよろしくないようで、
「オーブリー・プラザの好演にも拘わらず、『ライフ・アフター・ベス』は短編映画向きのアイデアを長編映画にまで拡張してしまった感が残る。」(ライフ•アフター•ベスWikipediaより抜粋)
とまで言われております。
確かにあまりテンポも良くなく、引き伸ばしてる感は否めません。短編か中編くらいの作品にした方が、より面白さが凝縮されて魅力が伝わったかもしれません。ですがライト層向けに作られた大衆娯楽映画としては十分な出来だと思います。
現在アマゾンプライムとU-NEXTで配信中ですが、アマゾンプライムではあと3日ほどで配信が終わるようです。(2024年6月22日現在)
◇恋人ベスの突然の死に落ち込むザック。しかし彼女は墓の中から復活を果たす。自分が死んだことも覚えておらず、直前の記憶も曖昧。別れ話をしたまま彼女が死んでしまったことを悔いていたザックは心を入れ替え、ベスを大切にするように務める。しかし日が経つに連れて徐々にゾンビ化し、凶暴になるベスに手を焼き、気持ちは離れてしまう。そんなタイミングで幼馴染のエリカと再会したことで心変わりしてしまいそうなザックはベスとの関係にどう決着をつけるのか!?
といったシンプルな内容で、小難しい伏線や心理描写なんてものは一切ありません。
ベスが亡くなり悲しみに打ちひしがれているザックやベスの両親の会話や演技が非常にリアルで、冒頭から引き込まれました。
「もっと写真を撮っておけばよかった」や「あの子はゼリーが好きだったな」などの何気ない会話からベスの両親がどれだけベスのことを愛していたかが伝わってきますし、ザックが形見分けでもらったマフラーを真夏にも関わらず肌見放さず身につけていたりするのも人柄が現れていてとても良かったです。
コメディテイストなのでそこまで気にしなくてもいいところなのかもしれませんが『ベスがなぜ蘇ったのか』は最後まで分からず終いでした。
おそらくベスの両親は何かを知っているようですし、ベスが特定の音楽を嫌がったり、性に貪欲になる様子、ベス家の家政婦パーリーンはブードゥー教徒が多いハイチ出身だから何か知っているはず!とか
ちょっとずつヒントを出してくれるので、最後に種明かしするのかと思いきや分からないままで、ホラー映画好きとしてはその辺りは少々モヤッとしてしまいました。
そして今作最大の謎が『ザックがベスに真実を全て伝えたことによって、あちこちで死者が蘇る』
という後半の展開です。
『死者に真実を伝えたことで呪い的な何かが発動して他の死者まで蘇る』という解釈で合っているのか分かりませんが、さすがに説明不足過ぎますし、物語を無理やり盛り上げるべく大量のゾンビを登場させるための強引な流れのように感じました。
いきなりゾンビパニック映画に様変わりするほどに山ほどゾンビが登場したらそれはそれで面白いんですけど、規模を拡大させた割にはゾンビの数は少ないしショボかったです。
中途半端にホラー映画に寄せようとせずに『ベスがなぜ蘇ったのか?』というところに焦点を当てた方が作品としては見やすいのではないでしょうか。
蘇ったベスの見た目は当初は人間そのもので、会話も記憶もしっかりしていましたが、時間の経過とともにゾンビ化が進行していきます。体が腐り、匂いもキツくなり、凶暴化して人を襲うようになります。記憶も曖昧になり、最後は『ザックへの思い』と『一緒にハイキングに行く約束』だけをかろうじて覚えているのがなんとも切なかったです。
『ベスへの愛は本物だけど、日に日に彼女がゾンビに近づいているのもまた事実。永遠に愛し続けるとは言ったものの、今後どこでどう折り合いをつけるべきか』
と、ザックが悩むのもすごく分かりますし、そんな折に幼馴染のエリカと出会い惹かれてしまうのも仕方がありません。エリカの肌に触れて「人肌だ!」と喜んでしまうのもベスからしたら辛いものがありますが、ザックもザックで相当悩んでいますから気持ちは痛いほどに分かります。
ベスは自身が一度死んで蘇ったことも、ゾンビ化していることも、腐臭を放ち朽ちていることにも気づいていないのでザックがエリカに心変わりしたら怒るのも無理がありません。
互いの心情も現在の状況も分かるからこそ、視聴者としては『最後二人はどうなるのか』というところに注目していたのですが、ラストはなんとも腑に落ちないといいますか、「マジでそんな終わり方でいいの?」と声に出して言いたくなるほどにあっさりというか、ともすれば雑に見えました。
「ザックよ!お前のベスへの愛はそんなもんだったのか!そんなベタすぎる終わらせ方ですぐにエリカと新しい恋を始める。本当にそれでいいのか!?」とむかっ腹が立ちました。
ゾンビ映画としては完成度が低く、恋愛映画としてはラストが雑で、なんとも中途半端でした。面白いところもたくさんあったのでちょっと勿体無いかなと思いました。
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