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“遊星”ではなく“深海”からの物体X!予想通り“アレ”な出来のイタリアからの刺客「深海からの物体X」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(665日目)

「深海からの物体X」(1994)
アル•パッセリ監督

◆あらすじ
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フロリダ沖で嵐に見舞われた男女五人。偶然発見した大型船に避難するも船内は静けさに包まれていた。そこにあるのは数々の実験装置や不気味な魚の標本ばかり。つい先程まで人がいた形跡のあるその調査船は水道や電気などライフラインも整っており、食料も十分にあることから呑気に過ごす一同。しかし夕食でドロシーが魚を食べたことで事態は一変。標本の魚は所狭しと暴れまわり、仲間たちは次々と異形の者と化し、船内は阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
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ジョン・カーペンター監督が手掛けたSFホラーの金字塔「遊星からの物体X」(’82)

Filmarksより引用

ではなく、

今回視聴したのは「深海からの物体X」です。

Amazon.co.jpより引用

原題は「CREATURES FROM THE ABYSS」なのでそのまま訳すと「深淵の怪物」や「深海から来た怪物」などになるでしょうか。

わざわざXを付ける必要性は一切ありませんし、おそらくは日本の配給会社が例によってまたやってますね。でも、もしかしたらたまたま偶然似た可能性もありますのでこれ以上深く追求するのは差し控えたいと思います。

池袋のTSUTAYAで発見した時に「これは絶対に私好みのダメな作品だ!」と思いレンタルさせてもらいました。実際に視聴してみると、その期待を1ミリたりとも裏切らない“アレ”な映画でした。

余談ですが、同じ日にレンタルして先日視聴した「そのネズミ、凶暴につき」(’13)は良い意味で期待を裏切ってくれる良作でした。

本作の内容としては

『若者たちが偶然漂着した大型船内で突然変異によって凶暴化した深海魚に襲われる。さらには噛まれた者が怪物となり、仲間たちをどこまでも追い詰める』という、いかにもなテイストの90年代のB級パニックホラーです。

監督と製作を務めたアル•パッセリ氏は「ニュー・シネマ・パラダイス」(’88)や「海の上のピアニスト」(’98)でSFXを担当しており、監督を務めたのは今作が初となります。今作以外にも3作ほど手掛けておりますがどれも日本での劇場公開などはないようです。

中盤以降の盛り上がりは素晴らしく、怪物の造形などもかなり目を見張るものがありました。ですが前半部分の展開が特に遅く、もったりしていて少々ダレてしまいました。また、1994年の作品にしては映像が汚くてところどころ見辛かったです。突然変異深海魚の宙を舞うシーンの合成が雑だったりと、粗が目立つ部分もあり、トータルで見るとちょっと微妙な感じでした。

現在配信などは無いようです。お近くのレンタルショップをご利用ください。

本当にあらすじに書いた通りというか、展開自体は結構ベタでした。

◇嵐に見舞われた男女五人(マイク、マーガレス、ジュリー、ドロシー、ボビー)が避難した大型船は人っ子一人おらず、不気味な深海魚の標本や何かの実験装置があるばかり。その晩、冷蔵庫に入っていた魚を食べたドロシーが腹痛を催して嘔吐すると、その吐瀉物の中に蠢く生物が…

その後マイクが船内の研究データを調べると、その船は深海魚の研究をしていた調査船で、標本にしていた不気味な魚は放射能廃棄物入りのプランクトンを食べて突然変異した種であり、それは凶暴な肉食性で陸上でも行動できるらしい。さらに、餌となるプランクトンの粉末に触れた場合、人体にも影響を及ぼすことが分かった。そんな折、突如として標本の魚がマーガレスに襲いかかる。

というのが中盤までの流れです。

古い作品なので画像もガビガビです。
(hmv.co.jpより引用)

マーガレスが魚に襲われるまでが正直他愛もない会話ばかりで少々退屈でした。特にお調子者のボビーの発言や行動がまぁ面白くなくて、何かに襲われたふりをして皆をからかったり、「座薬とサボテンの違いを知ってるか?サボテンは……痛い!」というサムいジョークを飛ばすなど大分イタいです。本当に申し訳ないですけど私は最初の10〜15分くらいでこれはちょっと“アレ”だなと一度気持ちが切れてしまいました。

ドロシーの吐瀉物の中で蠢く生物が得体の知れないものだったらめちゃくちゃゾッとするんですけど、明らかにオモチャと分かるクワガタ等の昆虫が糸で引っ張られたかのように左右に動くだけなので怖くはなかったです。

船内で意識朦朧の状態で発見されたクラーク博士の存在が今後重要になってくるのかなと思わせるフックもありつつ、わりと何もないまま進んでいきます。

背中から深海魚と蟹の手が生えるドロシー
(cinemanavi.comより引用)

◇研究室内で突然変異深海魚相手に大立ち回りを演じたマイクでしたが、一匹だけ取り逃してしまう。クラーク博士は意識を取り戻すも依然として会話はままならない。そんな折、昼間に例のプランクトンの粉末を口にしていたボビーが怪物化したのをきっかけに魚を食べたドロシーなどが次々と異形の者と化し、マイクたちに襲いかかる。マイクはなんとか脱出を図るも深海魚に噛まれていたマーガレスも怪物になりかけていた。最愛の人を人間のまま死なせてあげたいと自らの手で葬ったマイクは船の爆発に巻き込まれるも奇跡的に助かる。しかし漂流中の彼の背後から何かが襲いかかるのだった…

という形で幕を閉じます。

決してつまらないわけではないんですけど、色々と中途半端で、せっかくのクリーチャーの造形や生々しさみたいな良かった部分が霞んでしまった印象です。

ボビーの変身シーンは相当良かったです。
(hmv.co.jpより引用)

何か物語の鍵を握っていそうなクラーク博士も最後までほとんど言葉を発することはなく、こっそり何かしらの薬品を仕込んでいた注射器もクライマックスで怪物化したボビーに刺そうとするも秒殺されたので、その注射器が何だったのかはついぞ分からず仕舞いでした。もしかしたらその薬品にクリーチャーが人間に戻る効果があるのかもなど色々考察は出来ますが、クラーク博士が最後までほとんど何も情報を出してくれないので謎でしかなかったです。

船内のシステムがやけにハイテクで、自動音声で現在の時刻を教えてくれたり、設備の使用法を映像付きで教えてくれるなど謎に近未来感があり、それが世界観とミスマッチしているように感じました。クライマックスでマイクが怪物たち諸共船を爆破しようと燃料を撒き火を放って脱出しようとしていると、急に「この船は5分後に自動で爆発します」という船内アナウンスが流れるなど、最後の最後までこの船のシステムというか諸々の設定が理解できませんでした。

あと、クリーチャー化したドロシーの背中から深海魚と蟹の手のようなものが生え、その深海魚が「私はお前の脳の一部となった」と突如喋り出すなど

色々やろうとした結果、全てが中途半端になってしまったように思います。怪物たちのビジュアルや変身するシーンはとても良かったので非常に勿体なかったです。

喋る必要がまったくなかった深海魚
(hmv.co.jpより引用)

特典映像では劇場版の予告が収録されており、『映画史上最凶の恐怖!』『7分に一度のショックシーン!』など大仰な煽り文句を連発していますが、ハードルを上げすぎるのもいかがなものかと思います。

あと、同じく特典映像のアル•パッセリ監督のコメンタリーでは「ぶっ飛んだ映画が好き」、「マイアミの撮影も船での撮影もお金がかかって大変だった」、「次はエジプトでミイラの映画を撮るよ」など小粋なトークを展開し、最後は日本人に向けて「僕と同じ興奮を味わってね」と締めくくっており、優しい人柄なのが伺えます。

正直なところ、本家でもある「遊星からの物体X」の上辺の部分をほんのりとパクっているようにも見えました。だからこそあの邦題がついたのかもしれませんね。色々と勿体ない作品でした。

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