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マークの大冒険 常闇の冥界編 | 目覚の刻

目が覚めると、俺は螺旋階段の上に立っていた。階段は石灰岩のような石でできており、何故だか周囲にぼんやりと蝋燭ような光が灯されていて、薄暗いが辺りが何となく見える。だが、階段に手すりはなく、左右共に暗闇が広がっている。体勢を少しでも崩したら、この闇に落ちて飲まれてしまいそうだ。

そんな時、金切り声のような音が聞こえる。後ろを見ると、この世のものとは思えない様相の怪物がうじゃうじゃと階段を登ってきていた。怪物は蛇に翼が生えていたり、蛇の頭部で身体だけ人間だったり、見たこともない動物の頭をした人間の形の怪物もいた。俺は殺される。瞬時にそう思った。

「ぼけっとしてるとやられるぞ!」

「えっ!?」

声の方を見ると、耳がピンと上に伸びた白いネコのようなウサギが立っていた。

「迷い込んだのか?ほら、貸してやる。でも、鞘から決して抜くなよ。刃こぼれさせたら許さん。これぐらいの相手、抜刀の必要もない」

俺は、白いネコウサギから鞘に収められた刀を受け取る。

「一体、あいつらは?」

「ハデスの手先だよ」

「何だそれ?」

「ボクらを襲ってくる敵だ。とにかく、今はあいつらをそれで倒すんだ」

白いネコウサギは、そう言うと鞘入りの剣を手に怪物目掛けて突っ込んでいった。彼は華麗な剣捌きで、怪物を次々に蹴散らしていく。

俺も階段の上の方から突如やってきた怪物たちに夢中で刀を振るう。不思議と、刀は軽く、思ったよりもリーチが長い。刀が当たると、敵は塵のように消えていく。

刀を振るたびに身体が軽くなったような気がして、俺は軽快に怪物を仕留めていく。不思議と力がみなぎり、刀の重さに任せるだけで、怪物を次々に倒していける。そうして俺は、目の前にいた怪物を何とか全て消し去った。

「ふむ、なかなか筋がいいな。重心が取れている。何か習っていたのか?」

「分からない」

「分からないって。まあ、とりあえずは、片付いたみたいだな。ほら、返せ」

「え?」

「刀だよ。それは本来、キミのような凡人が触れられるような代物じゃない」

「ここはどこなんだ?」

俺はネコウサギに刀を返しながら訊いた。

「冥界だよ。キミはきっと迷い込んだんだ。ここにいるということは、あちらの世界で仮死状態にある可能性が高い」

「仮死状態?」

「覚えてないのかい?」

「目が覚めたら、ここにいて。俺は何をしてここに……?」

「名前は?」

「名前は……あれ?」

「記憶を失ってるのか。まあ、そういう場合が多い」

「俺はどうすれば、元の場所に戻れるんだ?」

「記憶はなくても、ここが自分の世界ではないことは分かるんだな」

「東京、東京に戻りたい。俺は確か、学校にいて、それで。ダメだ、思い出せない……」

「元の世界に戻りたいなら、記憶を取り戻してここから抜け出すしかない。でないと、キミは本当の意味で死ぬ。だが、あちらの世界のキミの身体がどこまで保つか。時間は限られている」

「俺が死ぬ?嘘だろ」

「さっきも言ったろ、ここは冥界だ。生きている人間が普通に来る場所じゃない。ボクを除いてはね」

「お願いだ、助けてくれ」

「力は貸せるが、最終的にはキミ自身に全て掛かっている。失われた記憶を回収し、地上を目指すんだ」

「そんな……」

「とりあえず、着いてこい。この螺旋階段の果てまで登るんだ」

そうして俺は、元の世界に戻るために歩み出した。元の世界に戻るためには、どうやらネコウサギが言うには、俺の失われた記憶を取り戻して行く必要があるらしい。

だが、どうして俺はここに?そして、ここはどこなんだ?冥界?仮死状態の者が彷徨う場所?今の俺は魂?俺の身に一体何が起こったんだ?全く思い出せないし、分からないことだらけだった。そもそも、このネコウサギの言っていることは信用できるのか?

俺は不安と困惑で胸が押し潰されそうだった。でも、今の俺はとにかく進むしかなかった。


To Be Continued…



冥界の最果てで佇むマーク


Shelk 🦋

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