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天才オバケ・O次郎の発明が仇に・・・『食べ物のうらみはこわいのだ』/タイムマシンで大騒ぎ⑦

「タイムマシンで大騒ぎ」と題して藤子先生が描いたタイムトラベルものをお送りしている。しかし困ったことに、とにかくその本数が多い。「ドラえもん」だけでも、何本あることか・・・。

ここまで7本書いて来たので、ひとまず本稿でシリーズ第一期の一区切りとしたい。今回はタイムマシンとは縁の無さそうな「オバQ」からご紹介したい。

作ったのは、オバQ世界の天才児・・・そう、Qちゃんの弟・O次郎である。果たしてどんな使い方をするのか、そしてどんな目的で作られたのだろうか・・。


「新オバケのQ太郎」『食べ物のうらみはこわいのだ』
「小学五年生」1972年2月号/大全集3巻

本作の展開は、まず①不思議なことが起こり、その後②タイムマシンの存在が明らかとなり、③主人公が過去へと戻って不思議なことの裏側が描かれる・・・というパターン。

タイムマシーンものの王道とも言えるストーリーラインである。そして本作の特徴としては、タイトルが『食べ物のうらみはこわいのだ』という、一見タイムマシンとは関係無さそうであることであろう。


冒頭、おやつ(おそらくカステラ)が出されて、QちゃんがO次郎と正太を呼ぶところから始まる。

正ちゃんは宿題中で、勉強部屋までママに持ってきてとお願いする。Oちゃんは何かを熱心に工作しており、「イソラッタ!モテラッタ!」とQちゃんに返事をする。おそらくは「忙しい、持ってきて」という意味だろう。

QちゃんがO次郎におやつを届け、何を作っているのか尋ねると、「兄さんに話しても難しくてわからないだろう」というようなことを答える。バカにされてプリプリして部屋に戻ると、Qちゃんの分のおやつが無くなっている。

ママに僕の分は、と聞くと「たった今食べて出ていったでしょ」という意外な答え。自分の分が無いとわかり、「さては誤魔化して横取り・・・」とママを疑って大泣きする。

するとそこへO次郎が壊れた目覚まし時計をくれないかと相談にくる。Qちゃん曰く「O次郎はガラクタからとんでもないものを作り出す天才」なのだという。この前も月まで飛ばすパチンコを作ったのだというが・・。


さて結局Qちゃんのおやつは誰が食べたのだろう。おやつを食べ損ねたQちゃんは、腹が減り、「飢え死にする~」と騒ぎ出す。ママはみっともないからと、早めのご飯を作ってくれる。

Qちゃんは、今度はご飯が出来たと、正ちゃんOちゃんを呼びにいく。またしても二人は忙しいと答えるので、「僕を飢え死にさせる気か」と怒ったQちゃんは、戻って先に食べることに。

すると台所では、なんともう一人のQ太郎が、美味しそうにご飯を食べ終わったところ。二人になったQちゃんを見て、驚くママ。


ご飯を食べられてしまったQちゃんは、もう一人のQちゃんに「ご飯泥棒!!」と叫ぶと、

「人聞きの悪いことを言うな。話せばわかる。僕には食べる権利があってだな・・」

と言い訳を始めるので、Qちゃんは怒り狂って、「お前を食べてやる」と、もう一人の自分に掴みかかって、ギッタンギッタンにしてしまう。ママが制止ししたもの、ボロボロになったQちゃんはどこかへと逃げていいてしまう。

おやつに次いでご飯も食べられなかったQちゃんが大号泣していると、O次郎が凄い機械を完成させたと言ってやってくる。なんとOちゃんが作った機械とは「タイム・マシン」!。


タイム・マシンとは時間旅行できる機械だとQちゃんは説明するが、Q次郎は「ムリラッタ」と答える。このタイム・マシンの用途は、ゴミを過去へ送り返し、元の姿にしてからまた取り寄せることができる、というもの。

兄であるQちゃんが食べ物に不自由しないための発明品だったのである。これには正ちゃんも、タイム・マシンという大発明品にも関わらず、「目的がケチくさい」と感想を述べる。


Qちゃんは、ここであるアイディアを閃く。自分自身が過去へと行き、おやつとご飯を食べられる前に食べちゃおうというのだ。

賢い読者ならもうおわかりだろうが、Qちゃんがタイム・マシンで過去に行ったために、自分がおやつとご飯を食べ損ねたのである。ここで過去に行かなければ、食べられたはずなのに・・。しかし、循環はもう始まっている


とにかく腹が減ると見境がなくなるQちゃんは、無理だと言われているのに過去の世界へ。

しばらく姿を消して様子を伺うが、過去のQちゃんが席を外した瞬間に、「僕には食べる権利があるんだ」と自分を納得させて、カステラを食べてしまう。ママは当然、未来のQちゃんだとは思ってもいない。

続けてご飯。またしてもQちゃんがいなくなった隙に、テーブルについて自分の分ご飯を食べてしまう。Qちゃんからすれば、当然食べる権利がある・・・ということだが、過去の腹ペコのQちゃんにはその道理は通用しない。

食べ物の恨みは怖いとばかり、過去のQちゃんに「お前を食べてやる」と襲われて、ボロボロの体に・・・。終わってみれば、ただ自分の割り当てのおやつとご飯を食べただけなのに、ズタボロな目に遭うことなるQ太郎。


結果的に、O次郎がタイム・マシンを発明したがために、Qちゃんは無用な自分同士の争いによって、大怪我を追ってしまったのである。Q次郎はQちゃんのために工作をしたはずなのに・・・。

何とも罪作りなO次郎というお話である。


では、これまで記事化してきた主要なタイム・マシン・タイトルのリンクを張っておくので、興味ある記事に飛んでみて下さいませ。


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