見出し画像

2020.07.10 teto 「4 (for) prologue.」


tetoが初めてのオンラインライブを行った。6/10に配信された新EPに関連してのライブという位置づけだが、tetoは47都道府県ツアーの真っ只中でコロナ禍に見舞われツアーは中断。その雪辱を晴らすべく敢行されたと言っても過言ではない。こちらとしても、福岡公演に向かう予定であったから彼らのライブを熱望する気持ちは同じであった。21時、オンタイムで開演。


会場はどこかのライブハウスのフロア。1曲目は新曲「invisible」。5分間、熱量を一切落とさない突っ走った演奏で一気に沸点へと持っていく。4人が向き合う形でプレイする形は、メンバーそれぞれがそれぞれに向けて音を発しまくっているようで、ある種の"有観客ライブ"だな、と思える。間髪入れずに「拝啓」。つんのめっていく音の塊に体温が上がる。<褪せた色や埋もれた都市はいつかまた出会えるだろうか/いつかまた眺められるのだろうか>を受けての「いや、眺めるんですけど!」「眺めるっつーの!」、「また会います」という小池貞利(Vo/Gt)のシャウトは実感がこもっていてじんとなる。


コロナ禍を経て様々な意味を含むことになってしまった「奴隷の唄」では、今ここに生きる若者としての現状認識を叫び、MCを挟んで歌われた「市の商人たち」では巷にはびこる小悪党をぶった切るようにがなる。一方、「ねぇねぇデイジー」の<革命より君とキスの方が大事>というラインは面倒なことをぶっ飛ばしていく痛快さがある。社会を歌うこと、社会を歌わないこと、そのどちらもを選び取る自由がロックバンドにはある。どう歌おうと勝手である。そんなことを常に堂々と示してくれるのがtetoの高潔さなのだ。


名曲「9月になること」はいつも突然やってくる。夏を吹き攫っていくような郷愁だ。その感傷を引き継いで奏でられる「コーンポタージュ」はあまりにも泣けた。青春時代の他愛もないバカ騒ぎをあのお菓子を通して描き出す、こちらもノスタルジーが吹き零れそうだ。再び夏へと引き戻す「蜩」(新EPでのピアノRemixも素晴らしいです)で、再びがっつりと昂らせる。全楽器が一点のピークめがけて駆け上がっていくように音をぶつけ合う、それこそがtetoのグルーヴなのだと思い知らされるようなどしゃめしゃさだ。小池がマイクから口を離す瞬間がとてもエモーショナルで、たまらなく好きだ。


早くお客さんの前で演奏したいという思いを語り、小池がアコギに持ち替え歌い始めた「光るまち」はニューバージョン。原曲よりも軽やかに、高揚感を強めたアレンジだ。<あのライブハウスがなくなっても 僕らが会うことがなくなっても それでも今こうして>と歌ったその後に爆音を鳴らし、<光るまちへ行こう>と歌う。ライブハウス、元より人が集まる場所の輝きを讃えた1曲だったが、その祈りは今更に切なるものとして響き渡った。最後に「tetoのクラシックソング!」と小池が叫んで演奏された「高層ビルと人工衛星」も、再びライブハウスで、聴衆に直に放たれていることを待ち望んでいるように聴こえ、普段聴くよりずっと切なく響き渡っていたように思う。



「今は種を蒔いていきます。その種に芽が出た時、俺とお前でそっと水をやっていきましょう」と言いながら終わった50分間の公演。実際、これからどうなっていくか分からないライブカルチャーにおいて、今ここで鳴らされ、聴いている音はまだ”種”なのだと思う。それを彼らはprologue=序章と名付けた。ここからどんな花を咲かせていくのか、現場で見せて欲しいと思う。

-setlist-
1.invisible
2.拝啓
3.奴隷の唄
-MC-
4.市の商人たち
5.ねぇねぇデイジー
6.9月になること
7.コーンポタージュ
8.蜩
-MC
9.光るまち
10.高層ビルと人工衛星


そういえば、今日のライブではやらなかった、てか多分今後もやらないと思うけど、新EP収録の「ラストワルツ」のリミックスがなかなかにトチ狂ってて最高。こういうブチ上げ方もできるんだなぁと。こういう一面を出していくのも、"種"であり"序章"なのかも、と思うととてもワクワクしてくる。


#音楽 #日記 #備忘録 #ロック #邦楽 #邦ロック #ライブ #ライブ日記 #ライブレポート #ライブレポ #イベントレポ #イベントレポート #コラム #エッセイ #音楽コラム #ロック #バンド #オンラインライブ #ライブ配信 #teto


この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?