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2020.06.26 HINA-MATSURI 2020

2020年3月3日に開催予定だった、ベーシスト日向秀和を中心したセッション系イベントHINA-MATSURI 2020。公演中止となっていたが、この度オンライン版で復活。こういうレアイベントを福岡で観れる喜びはすさまじい。ぴあさんに感謝。ひなっちも後半は「HINA-MATSURI」というより「PIA-MATSURI」と言っていたし。ちなみに、7/5までアーカイブ配信中。今からでも楽しめるイベントだ。


オープニングアクトとして、1000組近いオーディションを勝ち上がったdaisanseiがまずは登場。独特の歌謡感にしなやかだが太いグルーヴをミックスした不思議な5人組バンドであった。日常描写に不意に顔を出すシュールな歌詞もインパクトあった。最後の曲でボーカルはピアニカも演奏。謎を多く残して去って行った。


日向秀和(Ba)、ホリエアツシ(Key)、柏倉隆史(Dr)からなるゴールドシルバーブロンズが本編の初陣を切る。柏倉のスピーディーなスティック捌きに、ひなっちがグイグイとベースラインをぶつけるスリリングなリズムの上を、鍵盤奏者に徹したホリエが流麗なメロディを加える。ノーリハーサルとは思えない、いやノーリハーサルだからこその繊細かつ大胆なインストゥルメンタルを2曲プレイ。「エレピ」「グラピ」という投げやりなタイトルには笑ってしまうが、ロックイベントに収まりきれない豊かな音楽性を放っていた。


次に、この日のハウスバンドであるHINA-MATSURI BAND。日向秀和(Ba.)、松下マサナオ(Dr/Yasei Collective、GENTLE FOREST JAZZ BAND)、柳下“DAYO”武史(Gt/SPECIAL OTHERS)、ちゃんMARI(Key/ゲスの極み乙女。)という目うて揃いのスペシャルバンドである。ゲストボーカルを迎え、持ち歌からカバーまで幅広く演奏していくのがコンセプトである。


トップバッターはマカロニえんぴつよりはっとり。「久々のライブだ!」という号令と共に始まったのはエレファントカシマシ「悲しみの果て」。冒頭は少しズレもあったがそこもまたライブ感。昂りと共に段々と一体感を増していった。続くのはフラワーカンパニーズ「深夜高速」。1993年生まれのはっとりより、バンドメンバーのほうが世代直撃なラインナップのようだが、マカロニえんぴつの音楽性から分かる通り、強い歌を時代問わず摂取してきたのが彼なのだろう。振り絞るようなはっとりの声はそれらに良く合う。<生きて"い"てよかった>と"い”を強調する歌唱に、個性が爆発していた。

3曲目はGO!GO!7188「こいのうた」。女性Vo.によるしっかりとしたバラードも、彼のハイトーンにかかれば一瞬で彼のモノになってしまう。バンド自体のアイデアの豊富さも評価されているマカえんだが、その中心に彼の歌があるのは明白だ。最後は、ひなっちも「めちゃくちゃ良い歌」を絶賛していたマカロニえんぴつ「ヤングアダルト」。ちゃんMARIの鍵盤の音色が楽曲を丸ごと包み込む、少しアダルト寄りなアレンジで、後世に残っていくであろうこの名曲を見事に彩ってみせていた。


ボーカリスト2番手はBiSHよりアイナ・ジ・エンド。2019年に「PIA MUSIC COMPLEX」でも共演済。近年はゲストでの客演も多く、明らかに各方面から注目されつつあるアイナ。まずは1曲、ひなっちの削り取るような弦擦りが映えるBiSH「SMACK baby SMACK」を披露。全編を1人で歌い、強烈なハスキーボイスを轟かせ、より攻撃的に。2曲目は一転してフジファブリックの「陽炎」。手の振り付けを交えたアイナらしい表現での披露だ。少しリラックスした歌声も新境地だった。ちなみに、バンドアレンジも当然素晴らしい。印象的なフレーズを排し怒涛のように流れるピアノと、完全にスペアザの音で埋め尽くしたギターなど、各人のプレイヤビリティも大いに炸裂した。

3曲目は、6/22放送の「COUNTDOWN TV ライブ!ライブ!」でも話題沸騰となった椎名林檎「罪と罰」のカバー。一音目から完全に掴み切っている。掠れも、ブレスも、全てをものにした歌唱。あれほどまでに記銘性の高い曲を椎名林檎の影響を感じさせず、別の姿へと生まれ変わらせる。並大抵のボーカリストじゃできないこと。最後は、自作曲「きえないで」をちゃんMARIの鍵盤を軸にして柔らかく歌唱。4曲とも全く異なるアプローチであった。


「(公演中止になった)あの日からHINA-MATSURIのことだけを考えてた」という大ホラをかましながら登場した3番手のボーカルはACIDMANより大木伸夫。メンバーとの交流も多いのでくだけた雰囲気で始まったが、1曲目はシリアスで暖かなACIDMAN「ALMA」から。シンプルな構成の曲ゆえ、演奏者が違うことでの差異も面白い。ベースの動きがかなりダンサブルでやや踊れる曲に仕上がっていた。続くのは、THE YELLOW MONKEY「JAM」。またしてもスケールの大きな1曲。大木氏には、雄大なメロディラインを歌わせたくなるのだろうか。たっぷりと情感をつけて歌に専念するとその力は絶大。

「ひなっちはどんなベースラインをつけてくれるのか?」と期待していたようだが、リズム隊なしでちゃんMAI&柳下でしっとりと演奏されたのはビートたけし「嘲笑」。原曲の素朴な歌唱を引き継ぐ、どこか普段よりもオープンな歌声は新鮮であった。最後はストレイテナー・ホリエアツシを招き、SPECIAL OTHERSでのフィーチャリング曲「あの国まで」を軽やかに披露。グルーヴをごっそり入れ替えたスペアザ曲もまた異なる良い味わいであった。特に松下のドラムプレイは歌モノにもばっちりハマり気持ちが良い。


そして最後のボーカリストはストレイテナー よりホリエアツシ。1曲目は自身のソロプロジェクトentより「悲しみが生まれた場所」。アンビエントでまどろむような音像の中で美しい旋律が揺らめく。このライブにはここまでなかった幻想的な時間が立ち上がっていく。手ごたえを感じ、次回はウッドベースで、などセッションの展望も広がる素敵な空間。そんなアットホームな空気の中、秦基博「鱗」を演奏。ストレイテナーでもカバーしている曲だが、今回のアレンジは原曲に寄せた緩やかなテンポ。こういう曲でもひなっちのベースはしっくりくる。歌への寄り添いが抜群なのだ。終わった後には「もうホリエ君の曲みたい」「鱗ついちゃった」と独自の表現で、自分のバンドのボーカリストを褒め称えていた。ひなっちって、そもそも歌が好きなんだろうなぁ。それがすごくいい。激しいプレイヤーなのに、歌心がある!

ライブの最終曲は、ストレイテナーの「月に読む手紙」。近年はウォームなポップソングを奏でるようになったテナーの、思慕に溢れるラブソングだ。ゆるく踊れるこの曲は大団円にぴったりだし、<元気でいますか?>という問いは画面を超えて僕らへと届く。ハッピーなムードが伝播する中、全ミュージシャンが登壇してシメ。再開を誓い、終演となった。


こういったコラボ系のジャムイベントは地方民からすると都市部の特権で、常に大変羨ましく思っていた。しかし今回、このネット配信を通じてそれに触れることができ、とても貴重なセッションを多く目撃できた。夏には、ビバラロックがオンラインで開催されるという。毎年恒例の、名曲カバー企画・VIVA LA J-ANTHEMSも、もしかしたら観れるかも、と期待したい。

-setlist-
daisansei
1.北の方から
2.体育館
3.ショッポ

ゴールドシルバーブロンズ<日向秀和(Ba)、ホリエアツシ(Key)、柏倉隆史(Dr)>
1.エレピ
2.グラピ

HINA-MATSURI BAND
~Vo.はっとり(マカロニえんぴつ)~
1.悲しみの果て(エレファントカシマシ)
2.深夜高速(フラワーカンパニーズ)
3.こいのうた(GO!GO!7188)
4.ヤングアダルト(マカロニえんぴつ)

~Vo.アイナ・ジ・エンド(BiSH)~
5.SMACK baby SMACK(BiSH)
6.陽炎(フジファブリック)
7.罪と罰(椎名林檎)
8.きえないで(アイナ・ジ・エンド)

~Vo.大木伸夫(ACIDMAN)~
9.ALMA(ACIDMAN)
10.JAM(THE YELLOW MONKEY)
11.嘲笑(ビートたけし)
12.あの国まで feat.大木伸夫、ホリエアツシ(SPCIAL OTHERS)

~Vo.ホリエアツシ(ストレイテナー)
13.悲しみが生まれた場所(ent)
14.鱗(秦基博)
15.月に読む手紙(ストレイテナー)

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