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再会の夜のこと〜10.18 NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019@インテックス大阪

2003と2004年にASIAN KUNG-FU GENERATIONとストレイテナーを中心として敢行された対バンツアー『NANA-IRO ELECTRIC TOUR』、当時も計3公演に出演したELLEGARDENを迎えて15年ぶりの開催。この字面だけでオカシくなってしまう人、どれだけいるんだというようなとんでもないツアー、その初日・大阪公演に行くことができた。

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18:40- ストレイテナー
「STNR Rock and Roll」のSEをバックにこの日の1組目、ストレイテナー登場。「Melodic Storm」で会場を一つにする美しい幕開けから、2曲目はぶっといボトムと柔らかなメロディで紡がれる「DAY TO DAY」。<今までとこれからの狭間に 踏み出す歩の意味を変えていく>というラインには強い意味を見出してしまう。15年ぶりの再会、そしてここから続いていく日々について、力強い肯定をしているようで、まさにこの日鳴るためにあるように響いた。

「Braver」「REMINDER」と新旧の曲が並ぶセトリは、”懐かしモード“にとどめていない、テナーのここまでの歩みをしっかり提示するものだった。顕著だったのは「灯り」。2000年代は最もポップスから遠い存在だったテナーが、このメロディとアレンジを今のモードとして鳴らしている事実にしみじみする。続く「スパイラル」も同様。温かなムービーをバックに流して演奏する姿を見て、真っ直ぐ届く歌の力を信じ、変化してきたことを実感する流れだった。

新曲「吉祥寺」で薫ってくる郷愁はきっとアジカンもテナーも共有しているはず。そんなことを考えて、知らない町の風景を思い浮かべて沁みてしまう。直近の人気曲「シーグラス」もそうだが、テナーの強みは感情が一体となった情景喚起力だろう。どんな時代においてもその美しさへの希求は不変なのだ。最後は細美武士が登場しての「Rocksteady」。初期のハードでストイックな一面が垣間見れるサウンドだが、彼らの表情は晴れ晴れとしていてグッときた。

-set list-
SE STNR Rock and Roll
1.Melodic Storm
2.DAY TO DAY
3.Braver
4.REMINDER
5.灯り
6.スパイラル
7.吉祥寺
8.シーグラス
9.ROCKSTEADY with 細美武士

19:45- ASIAN KUNG-FU GENERATION

SEもなしにふらっと登場してびっくり。そこからあまりにも馴染み深いあの四つ打ち。「君という花」で早速一面の大ジャンプを展開させ、続くのは「リライト」。この2曲に反応しない人間は恐らくここにはいないだろう。それくらい、ゼロ年代のロックシーンを貫いた2曲だ。「自由に楽しんで」というMCから、「荒野を歩け」。『ホームタウン』ツアーと同じ、中村佑介のイラストをフィーチャーした映像をバックに、空間をどんどん作り上げていく。

静謐なイントロから至上の祝祭感に到達する「踵で愛を打ち鳴らせ」には胸が震えた。ゴッチの開催前コメントにもあった通り、震災後の数年を生き抜いてここに集った彼ら、及び僕たちを優しく抱きしめてくれていた。そしてホリエアツシをゲストに迎えて、「廃墟の記憶」をコラボ披露。「Rocksteady」とリンクする歌詞にたまらない気持ちになった。

「ここにいてもおかしくない友達の曲を」と、ART-SCHOOL「FADE TO BLACK」をカバーしたのには驚いた。ゴッチが歌う木下理樹のメロディと歌詞は新鮮、しかしサビのシャウトは少し懐かしく。テナーはOJとひなっちが元アートだし、トディはMONOEYESで細美さんと組んでいるから、必然的な選曲なのだ。そこに続くのは「サイレン」だ。この2曲、去った女の子を思って狂う男の物語、という内容が呼応している。なんとニクい演出!そんな流麗な繋ぎを経て、「Easter」でもうひと盛り上がりをキメた後、「ボーイズ&ガールズ」。これだけの日々を経てもなお、<We’ve got nothing/はじまったばかり>と歌う頼もしさ。ここにいる誰一人も置いていかない優しくてタフな肯定だった。

-setlist-
1.君という花
2.リライト
3.荒野を歩け
4.踵で愛を打ち鳴らせ
5.廃墟の記憶 with ホリエアツシ
6.FADE TO BLACK(ART-SCHOOLカバー)
7.サイレン
8.Easter/復活祭
9.ボーイズ&ガールズ

20:45- ELLEGARDEN
この日のトリ。入場から地鳴りみたいな大歓声。開戦直前、みたいなギラついたムードを一身に受け、「Supernova」のサビ終わりを弾き語ってそのまま同曲がオープニング。鼓動がそのままビートに変化したかのような鋭いドラミングに急き立てられる。おお、今エルレガーデンを目撃している!その興奮と、曲のスケールに気圧されてしまった。2曲目「Pizza Man」もそうだが、みんな頭っからずっと歌いっぱなし。そりゃそうだ、細美さんが「もっと来い!」と煽るのだから!受けて立とうじゃないか!

それにしてもえげつないセトリであった。わんぱくな少年が妄想で作ったみたいな遠慮のなさ。「風の日」で目を潤ませ、「Fire Cracker」の爆発に身を委ね、思わずイントロで奇声をあげてしまった「Space Sonic」に乗せられ、ちょっとどうかしてるくらい楽しい。中学校時代の放課後、ひとり部屋で聴いていた「Missing」を知らない大勢の人と一緒に聴いて歌って拳を掲げている。あれから10余年、僕ら生き延びてきたんだな。万感の思いが溢れる。

「金星」ではホリエアツシをゲストに迎える。彼のしなやかな歌唱が鮮やかに場面を彩っていく。ホリエ登場がピークかと思いきや、そこからも「Salamander」「ジターバグ」という容赦ない畳み掛け。ラウドでパンクで、歌わずにいられないメロディを、その音の赴くままに体で楽しむ。無邪気にライブを味わう歓びの尊さをエルレが演奏してる間に取り戻させてくれた。

15年前のこのツアーがきっかけで生まれた「虹」ではゴッチが登場。アジカンのMC中にもただのエルレのファンだと語っていた通り、エルレの演奏の中歌えてニコニコしていたのが印象深い。この2人、同じクラスにいてもおよそ仲良くなりそうにないのになぁ、といつも思っちゃうのだけど、曲終わりの抱擁で、やっぱこの2人通じ合ってるな!となぜか確信できた。

ライブ本編は「Make A Wish」で終了。大合唱から頂点に引き上げるツービート。思い思いに盛り上がるフロア、こんなに美しい夜があるか!と言わんばかりの光景だった。冷めやらぬ興奮の中アンコール。生方真一は「これからもエルレガーデンをよろしく」と言った。きっとこれで終わりじゃない。<どうしても君に会いたいと思った>と微笑みかける「スターフィッシュ」がアンコールだったのだから間違いはない。エルレは続く、そしてナナイロも続いていくはず。そのことがこんなにも嬉しいなんて。

-setlist-
1.Supernova
2.Pizza Man
3.風の日
4.Fire Cracker
5.Space Sonic
6.Missing
7.金星 with ホリエアツシ
8.ジターバグ
9.Salamander
10.虹 with Gotch
11.Make A Wish
-Encore-
12.スターフィッシュ

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中学時代、聴き狂っていた3バンドの共演である。当然、このツアーも存在もアジカンの「映像作品集1」や書籍「夏、無限」で知っていたわけだが、当時中学生の僕にとってはライブに行く選択肢などは念頭にもなく、歴史上のお話だと思っていた。しかし、この目でこのツアーを観たのだ。アジカンとテナーに関しては活動をずっと追い続けてきた。その歩みも含めてやはり大好きな存在で、続けてくれたことに感謝しかなかった。そしてこれまで音源の中の存在であり続けたエルレを初めて目撃した。音源で聞くよりずっとバキバキで逞しい演奏。曲もバンドも瑞々しいままそこにあり、蘇ってくれて感謝しかなかった。次開催されるのかは分からないけれど、生き続けていればいつかまた再会の日は訪れる。そんな確信を今噛み締めている。


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