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2020.09.06 sora tob sakana last oneman live「untie」

sora tob sakana、日本青年館での解散ライブ。プロデューサー・Gt 照井順政が率いるバンドメンバー(Gt 馬場 庫太郎 、Ba 照井淳政、Key 森谷一貴、Key,Cho 鎌野 愛、Dr リンタロウ 、Per,Cho 佐藤 香)の演奏による公演。持ち曲全部を披露する合計4時間に及ぶライブという特大ボリュームである。有観客で開催されたが、その模様は映画館とオンラインで配信。オンライン版のアーカイブは9/13までの公開、購入は9/6の23:59までとなっている。

紗幕から透ける3人のシルエットという形で歌われる「ribbon」から始まったライブ。「夜空を全部」まで開かずしっかりと歌に集中させる辺りつくづく、楽曲派を名乗るに相応しいアイドルだったと思う。清冽かつ先鋭的なサウンドと一体化しながら、曲の世界を変幻自在に演じていく。今回はオケではなく、生演奏であるゆえその揺らぎともしっかり共鳴する。「Brand new blue」のたっぷりとしたタメ、ファンキーなイントロで舞い踊った「魔法の言葉」、メロウな「おやすみ」でのたおやかな歌唱。どれも完璧である。

ビビッドな映像たちも効果的だが、この日は「鋭角な日常」で火柱が上がる演出など、スペシャルなものもあった。しかしあくまで楽曲の本質を拡張して届ける最適解ばかり。「乱反射の季節」からは大スクリーンにメンバーの姿も映し出され、豊かな表情をも世界観の一部として取り込んでいた。「ささやかな祝祭」ではバンドのソロ回しとメンバー紹介を行うなど、これまでにはない試みもあった前半。最終ブロックはミステリアスな「発見」から「World Fragment」を境界に「まぶしい」世界へと突入し、壮大な「夜間飛行」を繰り広げて一旦休憩。既に2時間経過、26曲披露のワンマンサイズ。


後半は「クラウチングスタート」で開幕。初期の楽曲を多く披露するセクションを経て、アコースティックセットを展開。穏やかな質感を備えた「帰り道のワンダー」、より素朴になった「蜃気楼の国」、ポエトリーが印象的な「ブルー、イエロー、オレンジ、グリーン」などリメイクされた楽曲ばかり。君島大空が提供した「燃えない呪文」はその極みのような神聖さだ。その後も、スタンドマイクで「夏の扉」「ありふれた群青」を披露し、サンプラーとバンドセッションを用いて珍曲「暇」をライブの場で再構築するなど、実験的な遊びも。なんでこんなもっと観たくなることするんだろう!

代表曲「広告の街」が披露された21時前。もう残り曲は少ない。充実感のあるライブだが、同時に美しく輝く楽曲たちが次々と最期の時を迎える様を見届ける場でもある。この日もゆたゆたしたMCを行っていたオサカナ3人だが、「流星の行方」を歌った後に今までお世話になった人々への挨拶が。ラストツアーの福岡公演でもかなりあっさりしていたが遂にその時が近づく、という雰囲気。そしてラストアルバム『deep blue』から「信号」。画面に映る巨大な波とステージのスモークが空と海を綯交ぜにする絶景が印象に残った。「Lighthouse」では銀テープが舞い、終焉の予感が押し寄せてくる。

最後のMCでは3人それぞれが今の気持ちを述べていく。涙などはなく、どこかすっきりとした表情すらある3人。まだまだどこまでも伸ばしていけるのに、と惜しむ気持ちをよそに彼女たちのやりきった顔が何よりもこのライブを集大成へと運んでいる。「明日から一般人だよ」や「明日は絶対寝る」といった他愛もないやり取りが最後のMCとなったのも素晴らしく健やかだと思う。最後から2番目の曲、「WALK」が優しく鮮やかに広がってゆく。<あなたは今頃 何をしてるかな>や<歩いて行く この先にあるワクワクする世界を>と、今聴くと複層的な意味を持つこの歌。門出にぴったりな1曲だ。

最後は荘厳なコーラスワークが光る、公演タイトルにもなったラストアルバムの終曲「untie」。幻想的なムードのエンディングを選んだのもオサカナらしい。最後はバンドサウンドが美しいノイズを描き出し、スモークがステージ上に広がってゆく。そして3人の姿が煙に包まれ、3人が手を繋いでいる姿がギリギリで映し出された後、煙が消えたステージにもうsora tob sakanaはいなかった。なんて完璧な最期だろうか。刹那的、瞬間的と称される少女の季節。それを一つの軸とするアイドルシーンの中、らしからぬタイプのサウンドでありながらその歌の青さと曲の瑞々しさは絶対的にアイドルであり続けた彼女たちが選ぶ最後が"消失"であるというのは感嘆するしかない。全てが夢の中へ消えていくような、いやでも確かに残る熱狂と興奮の手触り、、この曖昧な境界をもたらす"消失"。彼女たちはもう別の世界線に旅立っていたったのだ。悲しみや怒りのない、晴れやかなサヨナラ。圧巻すぎでした。


-setlist-
1.whale song(SE)
2.ribbon
3.夜空を全部
4.knock!knock!
5.夢の盗賊

6.Lightpool
7.FASHION
8.鋭角な日常
9.flash
10.Brand new blue

11.タイムトラベルして
12.秘密
13.シューティングスター・ランデブー
14.魔法の言葉 
15.おやすみ 
16.アスファルド

17.乱反射の季節 
18.嘘つき達に暇はない
19.silver
20.My Notes
21.ささやかな祝祭 

22.発見
23.パレードがはじまる
24.World Fragment 
25.まぶしい
26.夜間飛行 

-休憩-

27.海に纏わる言葉(SE)
28.クラウチングスタート
29.Summer Plan
30.タイムマシンにさよなら
31.新しい朝 

-Acoustic Set- 
32.帰り道のワンダー
33.蜃気楼の国
34.ブルー、イエロー、オレンジ、グリーン 
35.燃えない呪文

36.透明な怪物 
37.踊り子たち
38.夏の扉 
39.ありふれた群青
40.ケサランパサラン

41.暇
42.Moon Swimming Weekender
43.tokyo sinewave
44.広告の街
45.流星の行方

46.信号
47.New Stranger
48.Lighthouse 

49.WALK
50.untie


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