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2020.08.25 Base Ball Bear FC限定ライブ「LIVE IN LIVE 〜IN YOUR HOME,MY HOME GROUND〜」

Base Ball Bear、初のオンラインライブ。FC限定というのは少し残念(多くの人々に観てもらいたいバンドなので、、、)だけどまずは自分たちの周りから足場作り、だったのかな。かなり試行錯誤している3人の姿が見えるライブだった、という印象。コロナ禍におけるロックバンドのリアル。他のバンドが出さずにいる実状や実感を隠すことなく見せ、それもひっくるめて見せる公演だった気がする。ベボベって過剰に盛り上げたり、がっつり演出をつけたりせずに、ニュートラルでストイックなライブをするバンドだし、そもそも1つの物事を丹念に検証して実行に移すタイプなので、“今、模索中である"という状態を観ること自体が貴重。MCでも「考えるよりまずやろう」というのが先立ったと語ってたし、かなり珍しいベボベだったことは間違いない。

最新作『C3』のツアーが全部無くなったのでその代替公演的な意味合いもある?と思っていたが1曲目は前作『光源』より「すべては君のせいで」。これ、6~7月にリモートライブ映像を公開していた「LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME」企画でも披露されていた。その続編と銘打たれた通り、このライブはリモートで施したアレンジを実演する意図もあったのか!と納得。3人が集まってライブをしている画も久々で、途端にライブという存在が失われていた事実に考えが及んでしまう。そうこうしてるうちに2曲目「不思議な夜」が初夏の空気を引き連れて鳴る。日常の奇跡"未満"を歌うこの曲は今、特に愛おしい。元通りにならない世界でも変わらず煌びやかなのがまた切ない。原曲よりも長くアレンジされたギターソロを含むアウトロが余韻を残す。


2曲目が終わり挨拶MC、というのはいつもに近いパターンだが、この日はかなりしっかりとその時の感情を語っていた。緊張も強く、最初2曲をやり直したいんなんて話も出てたり、普段とだいぶ違う小出祐介(Vo/Gt)。関根史織(Ba)は終始顔のこわばりが取れず、堀之内大介(Dr)はいつもよりちゃんと喋ろうとした結果、いつもよりも声がデカくなっていた。この辺の手探り感を見せるバンドをオンライン上で観てこなかったので実に新鮮。MC明けてからは「short hair」で一気に夏らしいセンチメンタルを引き起こし、「転校生」のキレキレなカッティングが否応なしに踊らせてくる。ここから怒涛の、、といつもであれば畳み掛けるところ、再びMCという構成は意外であった。オンラインで集中力を切らさないための見せ方/区切り方を探っているのだろう。


MCでは蝉とエレベーターで鉢合わせした話や、フェスが恋しい話などをラフに語る。オンラインライブではMCをカットするバンドを多く観てきたが、雑談中心のMCは変らない。そこに時折、真摯な本音が混ざるのがこのライブ。そして「いつもの夏に思いを馳せて、、」という前口上と共に昨年9月リリースの秋EP「Grape]から立て続けに演奏。「Summer Melt」は淡々としたビートで物憂げな夏の終わりを描き、先ほどまでのアッパーな熱気を涼めていく。「セプテンバー・ステップス」のキメと流れゆく穏やかなメロディもまた秋へ向かうムードを立ち上げる。このライブのコンセプトは「夏の終り、秋の背中」。外出自粛で感じづらかった風情を画面越しに届けてくれる。季節を思う上で、ベボベの音楽は重大な役割を果たしていたことを再確認。


「LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME」でリアレンジが最難関だったという「どうしよう」も華麗にプレイ。ライブが無くてなまっている、と語っていたが、本番ではがっつり仕上げているあたり、やはり根っからのライブバンドである。この日、3度目のMCでは「会場にお客さんがいなくてもある熱気」と「会場にお客さんがいないから空調強すぎて唇乾いてる」という、無観客ライブの実感を語りつつ、この公演にぴったりな「L.I.L」へと繋げる。ライブの現場で巻き起こる諸感情を眩しく描いたこの曲の気高さはオンラインでも損なわれない。<触れそうに 届きそうに 生きているのさ さぁ、おいで>という言葉が力強く響いていた。続く「Grape juice」もまたライブでの熱狂のみに特化したような1曲で、絶対に現場で再会したいと強く願う気持ちに。


3人がボーカルをリレーしていく「ポラリス」もまた、沁みる1曲だ。バンドとしてブレることなく築き上げたこれまで、そして模索しながら探り当てていくはずのこれからに期待が満ちる。そして最後の曲は、この失われた夏に捧げる「senkou_hanabi」。彼らが2013年に、その当時久しぶりに瑞々しい青春描写に傾倒して制作された楽曲だが、まさかこの折に相応しい曲になるなんて思いもよらなかった。つくづく、我々を支えているのは良い思い出たちであり、そしてこれから求めていくのも素敵なシーンばかりなのだろうな、と思う。どんなに世界が変わっても、そんな一瞬はかけがえがないってこと、しっかりと歌に込めてくれた。またすぐに配信での再会を約束してくれたし、ベボベがこれから探し当てていく最適解を目撃したいと思う。

-setlist-
1.すべては君のせいで
2.不思議な夜
-MC-
3.short hair
4.転校生
-MC-
5.Summer Melt
6.セプテンバー・ステップス
7.どうしよう
-MC-
8.L.I.L
9.Grape juice
10.ポラリス
11.senkou_hanabi


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