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せとものについて話しましょう

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「せともの」の語源は「瀬戸で作られたり焼き物」。 その瀬戸市で代々陶器屋をやっています。 瀬戸焼について知ってほしいこと、楽しむためのヒント、瀬戸の街のことなど、ぼちぼち書い…
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#陶芸

#01 初めまして せとものについて話しましょう

#01 初めまして せとものについて話しましょう

note始めます

 2006年からメールマガジンを続けてきました。せともののこと瀬戸のことなど、毎週1回土曜日配信「瀬戸だより」として、17年間で870回を超す配信を行ってきました。我ながらよく続いたものだと感心します。
 ひとまず、当初書きたかったこと、やりたかったことは済んだんじゃないかと思い、そのメールマガジンは定期配信を終了することにしました。残された大量の過去の文章は何かの形で活かしな

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#36 「野点」っぽいことをやってみた

#36 「野点」っぽいことをやってみた

 毎年、家族で富士・田貫湖に旅行します。そもそも妻の父が富士山大好きで、実家の両親と姉一家とわが家でそこに行くことが恒例になったのです。みんなでのんびりと過ごし、朝は富士山の夜明けの写真を田貫湖畔に撮影に行く(義父はカメラも好きだった)のが定番となっていました。
 毎年夏休みに出かけるようになって20数年。小さかった子どもたちもそれぞれ社会人になりました。数年ほど前に義父は亡くなりましたが、みんな

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#33 窯が酔う

#33 窯が酔う

 毎日「暑いねぇ」とか言わない方がいいのかなぁ、とは思うけど、人に会うとあいさつのように「暑いねぇ」と言葉を交わす今日この頃。さほど酒に強くない私でもビールが恋しい季節です。もう8月だよぉ。

 さて、「窯が酔う」という言葉があります。
窯が酔う、酔っぱらっちゃう…窯も酒を飲むのか?!いったい何のことか?

 一言で窯を焼くといっても、焼き方には大きく分けて酸化焼成(織部や黄瀬戸などはこの焼成です

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#30 瀬戸・藤四郎トリエンナーレ

#30 瀬戸・藤四郎トリエンナーレ

 瀬戸の街を歩いていると「瀬戸・藤四郎トリエンナーレ」作品の募集要項が置かれているのを見かけるようになりました。
 瀬戸の陶祖・藤四郎の名が冠された公募展は今回が5回目。トリエンナーレということですので3年に1回行われています。

 今も陶芸の公募展も多くあります。以前はもっといっぱいありました。失われた10年とか20年とか言われる不景気でずいぶん減ったという印象を個人的には感じています。そう考え

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#29 織部は風呂につかる

#29 織部は風呂につかる

 織部というのは瀬戸焼や美濃焼を代表する釉薬・技法なのはご存知の通りです。
 銅を含む釉薬を酸化焼成して得られる緑色の落ち着いた色調です。とても人気がある釉ですが、意外と知られていないのが織部は窯から出て、すぐに完成とはいかないのです。

 通常の釉薬の陶器は窯から出れば完成というパターンです(もちろん、出してすぐは熱くて持てませんが)。普段皆さんが手にする器の状態と変わりありません。ところが織部

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#28 織部の緑って何色あんねん?

#28 織部の緑って何色あんねん?

 織部って古田織部の「織部好み」が始まりだったって書きました。今は銅の緑色の釉薬を織部釉と呼んでいます。

 「白って200色あんねん」はアンミカさんの発言ですが、色というものの奥深さを言い表した見事な一言だと思います。
 織部好みを代表するこの緑の釉薬、織部釉ですが、じゃあみんな同じ緑かと言えば作り手によって違って同じではありません。
 不透明な重い緑だったり、明るい緑だったり、流れで濃淡が出や

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#26 「織部」って織部さんの好みです

#26 「織部」って織部さんの好みです

 さて、織部と言えば瀬戸焼や美濃焼を代表する人気の釉薬です(唐突ですが異論はないとは思います)。
 緑色の釉。銅を含む釉を酸化焼成することで得られる色合いです。
 前回書いた春岱の織部もとてもステキでした。

 織部……もともとは釉というよりも織部好みの器全体を指していたようです。織部好み……この織部というのは戦国大名、古田織部のこと。武人であり、茶人であり、利休の高弟。その織部好みというスタイル

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#25 なんと春岱展は約60年ぶりだって!

#25 なんと春岱展は約60年ぶりだって!

 土曜日から始まった瀬戸市美術館の「春岱 稀代の名工」展を見てきました(6月2日まで)。

 春岱は幕末から明治に活躍した瀬戸の名工として知られる方。尾張藩の御窯屋の家に生まれ、明治10年に没するまで製作を行っています。その作品は「瀬戸焼」の歴史を振り返るような展示では必ず見かけます。

 当店を始めた祖父は古陶器にとても目の効く人だったようです。戦後独立した当時は骨董商に近いような仕事だったよう

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#22 わかりやすく釉薬について語ってみたい…あっ、色つけるの忘れてた(4)

#22 わかりやすく釉薬について語ってみたい…あっ、色つけるの忘れてた(4)

 釉薬について何度か書きました。

 ふと、気がつきました。釉に色を着けるのを忘れていました。
 染付の磁器に掛けられている透明な釉薬。釉薬の下に呉須で描かれた絵がきれいに見えます。でも多くの陶器に施されているのは何らかの「色」が着けられています。
 古くから、赤津七釉と呼ばれる灰釉、鉄釉、織部、黄瀬戸、志野、御深井、古瀬戸(赤津地区は瀬戸でも作家や窯元が多い地区)などはもちろん、他にも瀬戸は釉薬

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#18 大きさは尺と寸と分

#18 大きさは尺と寸と分

 実は先月、この歳(58だ)になってバイクの免許を取りました(と言っても、小型AT限定ですが)。
 バイクの免許をお持ちの方はわかると思うのですが、自分は教習所の一本橋には苦労しました。30センチの幅しかない15メートルの橋を渡るという課題。狭いと思うと緊張するわけです。ただ、それはちょっとした気持ちの問題で、これは1尺の幅だと気づいたら「尺皿って大きいよなあ、うん大きいよ、そうかぁ一本橋も広いじ

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#17 今年の御題茶碗…反省もいっぱい

#17 今年の御題茶碗…反省もいっぱい

 バタバタと12月は過ぎていきます。毎年のことです。ずいぶん更新の間隔が開いてしまいました。繁忙期というやつです。

 干支と御題茶碗。無事にそれぞれのお客さまの元にお届け出来たようです。
 例年のお客さまへ(古くからの)とにかく早くお届けして、余裕があればネットショップで販売とか思っていましたが、そんな余裕も(時間的にも入荷数的にも)出来ずに終わってしまいました。
 まあ、主に時間的にギリギリだ

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#16 そうか、もう干支や御題茶碗の季節か。

#16 そうか、もう干支や御題茶碗の季節か。

 毎年この季節になると(つまりは年の暮れ)、干支置物と御題茶碗にいそがしくなります。
 干支置物は文字通りの干支の置物。よく見かける小さなかわいいものから、作家さん手作りの迫力あるものまで、いろいろ取り揃えております。

 来る年の干支は辰。龍ですね。
 地元の中日ドラゴンズがもし今シーズンしっかりした成績を残してくれていたら、龍の置物も注目されて……ねぇ…(意外とあるんですよ、こういうの。トラ年

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#15 瓶子ってとても好きな形です。

#15 瓶子ってとても好きな形です。

 名古屋の爲三郎記念館(古川美術館分室)の「瀬戸陶芸協会百年への挑戦 古今無双 瀬戸陶芸物語」を見てきました。

 ずっと気になっていたんです。「せともの祭が終わったら、やりたい(行きたい)リスト」の上位にリストアップしてあったんですが、結局先週やっと行くことが出来ました。10月1日が会期末でしたので、ギリギリでの鑑賞でした。 
 瀬戸陶芸協会は瀬戸の陶芸家の集まりで、日本でも最も歴史のある陶芸家

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#12 瀬戸の磁祖・加藤民吉の修行を誤解していないか?

#12 瀬戸の磁祖・加藤民吉の修行を誤解していないか?

 瀬戸のせともの祭はもともと9月の窯神神社の例祭にあわせて廉売市を開いたのが始まりでした。窯神神社はちょうど名鉄の尾張瀬戸駅から北に見える小高い丘の上に鎮座しています。そこには磁祖・加藤民吉が祀られています。
 以前にも書きましたが、瀬戸は陶器も磁器もどちらも生産出来る稀有な産地です。陶器の技術を中国からもたらしたのが陶祖・加藤景正(藤四郎)とされ、九州から磁器の技術をもたらしたのが加藤民吉となり

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