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文化庁 文化観光高付加価値化リサーチ 第五章 地域の活動熱量 - 考察

当記事は文化庁の委託により制作された「令和3年度文化観光高付加価値化リサーチ 文化・観光・まちづくりの関係性について」レポートの抜粋です。レポートの全文は文化庁ホームページ上に公開されています。

0.地域の活動熱量とは?

地域の文化資源の価値を高め広げていくためには、地域の内側の人々の熱量が不可欠だ。文化や産業への愛着と、存続に対する危機感、地域文化を繋げ広めたいという思い、生まれ育った地域を一度出て改めて気づく魅力。情熱に火が付くきっかけはさまざまだ。熱量は共感を呼び、さらに高まり、価値観に共鳴した人々の繋がりは、地域の内外を問わずネットワーク化して広がっていく。

1.地域の活動熱量を考える上での問題意識

文化の価値を高め、未来へとつなげていく。そのために重要なのは、地域の中でその文化を担う人々の熱量だ。文化の保存や継承のために、国や自治体はさまざまな施策を講じて制度やルールを整備しているが、システムは活用する人々の熱量があることで機能する。人々の熱量は、制度やルールなどのシステムと違って目に見えにく、ときに脆い。文化の本質的価値を理解する文化観光は、地域に固有な文化の価値に光をあて、地域の熱量を高めていく契機となる。熱量の発芽をしっかりと捉え、それを絶やさないように実践的な活動として広げていくこと。そして、文化の担い手に対してその文化が持つ価値をあらためて内外から伝え、未来へと繋いでいく熱量を高める文化観光のあり方を考察する。

2.熱量が生まれるきっかけ

地域に熱量が生み出されるきっかけはさまざまだ。文化の担い手や後継者がいなくなる、産地の将来が見えない、大切だった場所や建物が取り壊されることに対する危機感。地域の素晴らしい自然や文化に対する愛着。生まれ育った地域を一度離れてから再認識する地域の魅力や誇り。そのきっかけは地域や文化の置かれている状況によって異なるが、文化と観光とまちづくりの接続が起きている地域に共通しているのは、強い想いを持って立ち上がる人(キーパーソン)が地域の内側にいることだ。地域の人々の、自分たちの文化に対する誇り、そしてそれを取り巻く状況を自分事として捉える主体性が不可欠だ。

3.価値観でつながったコミュニティ

地域内で生まれる熱量は、最初は小さなところから生まれてくることが多い。それは文化を生かしていこうとする熱量が、組織的な意思決定や経済的なインセンティブを原動力とするものではなく、文化への愛着や危機感などの自分ごととしての価値観から生まれてきやすいためだ。小さなところから生まれた熱量は、同じような価値観を持つ人たちの共感を集めて次第に高まっていく。理想像を共有し、地域の中の人々が自分たちのビジョンを自身で描いていくことが重要だ。

価値観への共感は、組織や地縁に基づくネットワークと違い、多様な人々を巻き込んで大きく広がっていく。熱量ある地域では、ジェンダーや年齢、社会的地位や地域内外といった枠組みやしがらみを超えて、自由に生き生きと活動しているコミュニティが存在する。価値観を軸に広がるボトムアップ型のコミュニティは、個々人が強い主体性や能動性を持ち、地域を変える力となっていく。価値観で共鳴した人々の熱量は、自分自身や組織の利益を超え、地域の文化や産業全体の発展、まちの活性化に向かっていく。

4.熱量を高めていく文化観光のあり方

地域の熱量は、地域の外から訪れる人々からの刺激・気づき・再発見によってさらに高まっていく。外部の“まなざし”で地域文化に光をあてるとともに、文化の担い手と外部者の接点をつくり、地域の熱量を高めていくことも文化観光の大きな役割だ。例えば、ものづくりの分野においては、職人がつくるものと消費者が手に取るものの間には、加工・流通・販売といったさまざまなプロセスがあり、一般的に職人と消費者の距離は遠い。職人が消費者の声を直接聞くことは難しいし、消費者もまたものづくりの背景にある文脈や職人の創意工夫を感じられる機会はほとんどなかった。

文化観光が目指すのは、生産者と消費者という関係性ではなく、文化の担い手と支え手という関係性だ。そのような関係性をつくる文化観光のあり方として、「オープンファクトリー(工房見学)」や「体験型ツーリズム」が挙げられる。オープンファクトリーや体験型ツーリズムをきっかけに、訪問者は職人の技術や創意工夫、情熱に触れ、ものづくりの背景にあるストーリーを知る。すると訪問者は単なる消費者ではなく文化の支え手・ファンへと転換していく。そこで手にする物はただの商品ではなく、文化の担い手と支え手をつなぐ特別な想いがこもった唯一無二の宝物になる。

また地域の文化のつくり手である職人の側にとっても、これまでの卸業者だけではなく、ものづくりに関心のある訪問者の声を直接聞くことができるようになる。自身の作った品物が多くの人々に親しまれ、その価値が見出されて名を知られていくことは、文化の担い手や地域の誇り、その熱量に直結する。その姿は次世代の担い手にも伝わり、誇りある産業や文化として継承されていく。文化観光を起点とすることで、これまでの販路では届かなかった人々に新しい形で文化を届けていくことが可能となる。文化に直接触れて感動を伝えていく文化観光のあり方は、未来の産業や文化に対しても強く貢献するだろう。そして地域の内側と外側との接点の場が、文化の担い手に新たな刺激や気づきをもたらし、活動の熱量をさらに高めていく。

第五章 地域の活動熱量・関わり人口 - 考察
地域の活動熱量 
地域内に地域の魅力を向上させる主体的な活動を起こすリーダーやコミュニティがあること

関わり人口 能動的に地域を行き来する訪問者と、地域住民の双方向に良好な関係があること

第五章 地域の活動熱量・関わり人口 - インタビュー
地域の資源を見つけ、磨いて、価値化することで、創造的な産地をつくる
新山直広(TSUGI代表 / RENEWディレクター)

行政は黒子に徹し、「めがねのまちさばえ」をプロデュース/発信していく
髙崎則章(鯖江市役所)

産地の未来が「持続可能な地域産業」となる世界を思い描いて
谷口康彦(RENEW実行委員長 / 谷口眼鏡代表取締役)

ものをつくるだけではなく広める/売るまで担う新時代の職人
戸谷祐次(タケフナイフビレッジ / 伝統工芸士)

顧客との接点を増やすことが、産地にもたらす価値
内田徹(漆琳堂代表取締役社長 / 伝統工芸士)

暮らしの良さを体感する中長期滞在
近江雅子(HÏSOM / WATOWAオーナー)

私たちがいなくなっても、地域文化を守ってくれる人がここにいてほしい
臼井泉 / 臼井ふみ(島根県大田市温泉津町日祖在住)

地域の方々が輝けるようにサポートをする行政の役割
松村和典(大田市役所)

使い手を想像し対話から生まれる作品と、新しい関係性
荒尾浩之(温泉津焼 椿窯)

里山再生と後継者育成を結ぶ
小林新也(シーラカンス食堂 / MUJUN / 里山インストール代表社員)

「デザイン」を通じた外部の目線/声によって、地元に自信を持てる環境をつくる
北村志帆(佐賀県職員)

継続的な組織運営と関係性の蓄積が、経済循環を生み出す
山出淳也(BEPPU PROJECT代表理事 / アーティスト)

価値観で共鳴したコミュニティが熱量を高めていく
坂口修一郎(BAGN Inc.代表 / リバーバンク代表理事)

文化庁ホームページ「文化観光 文化資源の高付加価値化」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/bunkakanko/93694501.html

レポート「令和3年度 文化観光高付加価値化リサーチ 文化・観光・まちづくりの関係性について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/bunkakanko/pdf/93705701_01.pdf(PDFへの直通リンク)
これからの文化観光施策が目指す「高付加価値化」のあり方について、大切にしたい5つの視点を導きだしての考察、その視点の元となった37名の方々のインタビューが掲載されたレポートです。


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