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荒尾浩之(温泉津焼 椿窯)- 使い手を想像し対話から生まれる作品と、新しい関係性

文化観光高付加価値化リサーチチーム「session」

editor's note
HÏSOMに置かれている食器は、温泉津 焼椿窯の荒尾浩之さんの作品です。荒尾さんには職人と使い手との直接の関係の築き方についてお伺いしました。
お客さんへの直接販売のみを先代の頃から続け、できる限り顔をあわせてどのような商品を求められているかオーダーに沿わせていく作り方は、これ以上なく顔の見える関係性の中での仕事です。たとえ作ることのできる数が限られたとしても、一つひとつ作るものに精魂を込めていくことで、お客さんとの関係性自体が価値あるものになっていきます。そこで初めて商品の高付加価値化に繋がります。

私が一番大切にしているのは、お客さまと話し合いながら直接販売することです。ネット販売も考えましたが、そのお客さんのための器を作りたく、オンラインのやりとりだけで作っていくのは苦手です。お客さんとはメールなどでのやりとりではなく、電話で直接声を聞き、できれば会って直接話をします。お客さんの顔を思い浮かべながら、その人が使っている姿を想像して作品を作るのです。

お客さんとの会話は、相手の欲しい器のことを具体的に聞くというよりも、お客さんの人となりを知りたく、プライベートなことも含めどうでもいいような話をしながら、その人がどのような感じの人なのかを知り、私の中で想像を膨らませて作品の形にしていきます。最初はサンプルを作って、それをお客さんに見てもらいますが、最初から満足のいくものはできません。「こうしましょうか」「こんなのもできます」などと提案し、お客さんと会話していく中で完成形に近づけていくのです。

そのようにお客さんと徹底的に向き合ってする作業は時間も手間もかかるのですが、私にとってとても大切なことです。父が存命だったときは、父と私で作業できる腕は4本ありましたが、今は2本しかありません。

また、起きる時間や寝る時間は崩すことはしません。それだけは父から、絶対に崩すなと言われてきました。疲れがたまると集中力が欠け、ミスも多くなります。それを防ぐには、食べて、寝て、休むのが一番なのです。これはとても大切なことで、無茶をすると絶対にそれが作品に出てしまいます。なのでお客さんには申し訳ないですが、時間をくださいとお願いして、一つずつ仕事をこなしていきます。同時に三つも四つも仕事を進めることができないというのが私の中の結論なんです。

荒尾浩之(椿窯代表)
1976年島根県生まれ。父である荒尾浩一に師事したのち、2005年にHiro×路庵を創立。07年、京都デザインハウスにて初の個展を開催。現在、昭和44年に温泉津に開窯された「椿窯」の代表を務める。

第五章 地域の活動熱量・関わり人口 - 考察
地域の活動熱量 
地域内に地域の魅力を向上させる主体的な活動を起こすリーダーやコミュニティがあること

関わり人口 能動的に地域を行き来する訪問者と、地域住民の双方向に良好な関係があること

第五章 地域の活動熱量・関わり人口 - インタビュー
地域の資源を見つけ、磨いて、価値化することで、創造的な産地をつくる
新山直広(TSUGI代表 / RENEWディレクター)

行政は黒子に徹し、「めがねのまちさばえ」をプロデュース/発信していく
髙崎則章(鯖江市役所)

産地の未来が「持続可能な地域産業」となる世界を思い描いて
谷口康彦(RENEW実行委員長 / 谷口眼鏡代表取締役)

ものをつくるだけではなく広める/売るまで担う新時代の職人
戸谷祐次(タケフナイフビレッジ / 伝統工芸士)

顧客との接点を増やすことが、産地にもたらす価値
内田徹(漆琳堂代表取締役社長 / 伝統工芸士)

暮らしの良さを体感する中長期滞在
近江雅子(HÏSOM / WATOWAオーナー)

私たちがいなくなっても、地域文化を守ってくれる人がここにいてほしい
臼井泉 / 臼井ふみ(島根県大田市温泉津町日祖在住)

地域の方々が輝けるようにサポートをする行政の役割
松村和典(大田市役所)

使い手を想像し対話から生まれる作品と、新しい関係性
荒尾浩之(温泉津焼 椿窯)

里山再生と後継者育成を結ぶ
小林新也(シーラカンス食堂 / MUJUN / 里山インストール代表社員)

「デザイン」を通じた外部の目線/声によって、地元に自信を持てる環境をつくる
北村志帆(佐賀県職員)

継続的な組織運営と関係性の蓄積が、経済循環を生み出す
山出淳也(BEPPU PROJECT代表理事 / アーティスト)

価値観で共鳴したコミュニティが熱量を高めていく
坂口修一郎(BAGN Inc.代表 / リバーバンク代表理事)

文化庁ホームページ「文化観光 文化資源の高付加価値化」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/bunkakanko/93694501.html

レポート「令和3年度 文化観光高付加価値化リサーチ 文化・観光・まちづくりの関係性について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/bunkakanko/pdf/93705701_01.pdf(PDFへの直通リンク)
これからの文化観光施策が目指す「高付加価値化」のあり方について、大切にしたい5つの視点を導きだしての考察、その視点の元となった37名の方々のインタビューが掲載されたレポートです。

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文化観光高付加価値化リサーチチーム「session」
文化庁が推進する文化観光事業のうち”文化資源の高付加価値化促進事業”のリサーチを担当している民間チームです。文化・観光・まちづくりのあるべき”関係性”とは?それらの関係性を高めていく文化資源の”高付加価値化”とは?をテーマに、皆さんとともに考え、発信していきます。