紫鳥コウ

紫鳥コウ(Shichō Kō)です。Sentimental Militaryというサー…

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紫鳥コウ(Shichō Kō)です。Sentimental Militaryというサークルで同人活動をしております。

最近の記事

わたしはうまく本を読むことができない

 わたしはうまく本を読むことができません。それは忙しくて時間がないから、ということではありません。時間があっても、うまく本を読むことができないのです。  なぜかといえば、どうやっても「集中」ができないからです。疲労が蓄積していなくても、周りが静かでも、集中力が続きません。文章を目で追っているはずなのに、頭の中に、関係のないことが浮かんでくるのです。  例えば小説を読んでいるときに、物語を味わおうとしているのに、ふと、「この前こういう嫌なことがあった」という記憶が、勝手に思

    • 【読書雑記】「必ず読者がいるから、筆を折らなくていい」と思いながら

       先日、芥川龍之介の『或阿呆の一生』を読んでいました。何度読んでも新しい発見はあるものです。いままで注意を払っていなかったある一文が、わたしの目にはっきりと強調されました。  そして、芥川の『闇中問答』という一篇の、とある箇所を思いだしました。  このふたつの文章は、こういう風に、肯定的に解釈できるかもしれません。  いまは読者がいなくても、自分の小説を好きになってくださる方が、いつか現れるかもしれない。  一時、投稿サイトに連載している小説の「PV」がまったく伸びな

      • 【定期記事】創作人生のなかで一番重い「問い」-二条城で経験したこと-

         東西線に乗り二条城前駅で降り地上に出ると、がくがくと震える寒さの中に強い風が吹いており、雨が斜めに走っていました。折り畳み傘を開いたものの、信号を渡りきったところで壊れてしまいます。それくらいの厳しい天気の中で、二条城の入り口までようやく到達し、券売機で入場券を購入しました。  荘厳な門をくぐっていくと、平べったい建物があり、そこが有名な二の丸御殿だと知ります。小学生のときに一度訪れたことがあるはずなのですが、すっかり記憶から抜け落ちていたため、新鮮な気持ちであの鳥の囀り

        • 【定期記事】「努力家」ではなく「努力化」でありたい、というお話

           努力家ではなく「努力化」を目指さなければならない。そのように考えはじめたのは、あるイラストレーターの方の配信を観ていたときです。残念ながら、アーカイブは消えてしまったのですが、その4時間近くの配信を傾聴している間、様々なことを考えました。今回はそのうちのひとつの事について、お話させていただければと思います。  わたしは、「努力は必ずしも報われない」という考え方に対して、いまいち実感を持てないでいました。というのも、わたしの周りには努力の果てに夢を叶えたひとが、たくさんいる

        わたしはうまく本を読むことができない

        • 【読書雑記】「必ず読者がいるから、筆を折らなくていい」と思いながら

        • 【定期記事】創作人生のなかで一番重い「問い」-二条城で経験したこと-

        • 【定期記事】「努力家」ではなく「努力化」でありたい、というお話

          【掌篇小説-歴史】「恋情散り咲く」

           古井戸に梅の樹の影が色濃く落ちるある日の昼下がり、奉公先の館川家のお蔵の石段でお芳は瞼を落としてうとうととしていた。昨晩は、蝋燭へ火取とり虫が散っていくのを眠ることなくただ漫然と眺めていた。なにを待つでもなく、なにを考えるのでもなく。  しかし蝋燭の火のように闇中を明るく切り裂いていく希望を、この時のお芳は確かに抱いていた。書きかけの艶書の上に重ねられた、横山からの恋文を見れば、その意味を容易に想像できるかもしれない。こちらから出すまでもなく、向こうから恋慕の情を打ち明け

          【掌篇小説-歴史】「恋情散り咲く」

          【掌篇小説-歴史】「忘恩」

           野犬が尿をかけた跡の残る柳の根本に籠を置いてしまい、咄と舌打ちをしたかと思うと、今度はため息を吐いて、紺の水干と揉烏帽子を擦り付けるようにして幹に深くもたれかかり、男は物思いに耽った。  四条大路の四辻では他に、女が牟子を脱いで平骨の扇を使っていた。初夏の日差しは柳の影を黒々とさせ、蝮の死骸を黙然とさせている。風が吹いて葉がこすれあう気色もない。川遊びをする童たちが水浴びをしているのが、どこか雅やかに響いてくる。釣りをしている閑人は、鬱蒼とした蓬の陰で、竿の先を見るのに余

          【掌篇小説-歴史】「忘恩」

          【ご報告】「文学フリマ京都8」にサークル参加いたします!

          1. イベント情報&お品書き 2024年1月14日(日)に「京都市勧業館みやこめっせ」で開催される、「文学フリマ京都8」にサークル参加いたします。 (2024年1月11日 閲覧)  当サークル「Sentimental Military」は、既刊のみでの参加となります。  お品書きはこちらです。  当日の頒布物のより詳しい情報は、以下の「webカタログ」をご覧ください。 (2024年1月11日 閲覧)  この中で『惜敗と夏』だけは、在庫が少なくなっております。  再

          【ご報告】「文学フリマ京都8」にサークル参加いたします!

          【雑記】「わたしが」大事にしていること

           小説にテーマは必要なのかとか、経験したことしか書くことができないのかとか、SNSを見ていると様々な創作論が流れてきて、少しくらい意見を読んでみたりするのですが、その立論が、わたしにとって考えるべきものだと思ったら、本を読んだりして、じっくりと思索を重ねています。  しかしSNSに意見を書きこんだりすることはなく、大体は自分の創作に組みこんでいます。それは逆説的に、小説にテーマは必要だということを追認していると反駁されれば、それまでなのですが、わたしは物書きなので、小説や詩

          【雑記】「わたしが」大事にしていること

          【日常記録】今年の「4つ」の目標

           前回の記事「今年の振り返り&来年の目標」で、大きな目標をふたつ掲げました。そこで今回は、もう少し具体的な目標を「4つ」記していきたいと思います。 ・本を50冊読む  小説はもちろん、新書と研究書も通読していきたいと思っています。日本の古典文学にも挑戦したいです。洋書も2~3冊はがんばりたいです……! ・1週間に20,000字の執筆をする  昨年は「1日あたり~文字」という目標を決めて、がんばっていた時期があったのですが、今年はもう少し緩やかに設定したいと思います。少しで

          【日常記録】今年の「4つ」の目標

          【定期記事】今年の振り返り&来年の目標

          0 はじめに  毎年のように「一年が経つのは早い」と言っている気がするのですが、今年はそこに「無念」の情が乗っかって、「この一年、わたしはもっと頑張れたのではないか」という気持ちでいます。  しかし「成した」ことは少なからずありました。今回の記事では、それらをピックアップした上で、反省点を洗い出し、来年の目標を記していきたいと思っています。  つまりこの記事には、私事ばかりが書かれているのですが、作家を目指している若者の一人が、どういう風に「もがいて」いるのかというこ

          【定期記事】今年の振り返り&来年の目標

          【読書雑記】「暗記の課題」から始まった読書ライフ

           高校の現代文の授業で、いわゆる「文豪」とその作品を暗記するという課題がありました。「谷崎潤一郎は『痴人の愛』と『細雪』が代表作」という具合に覚えるというものです。  どういう意図があったのかは分かりませんが、個人的にはこの課題には感謝しています。実はそのとき、それぞれの文豪の「情報」も教えてもらっていたのですが、好奇心を刺激する文句が並んでいて、実際に作品を読んでみるきっかけになったからです。  たとえば、谷崎潤一郎は「悪魔主義」をキーワードに紹介されていて、当時のわた

          【読書雑記】「暗記の課題」から始まった読書ライフ

          【定期記事】たとえ難しい挑戦だとしても!

           今年に入り、ほとんど毎日、小説の執筆を欠かしていません。たまには休憩をしたいと思ってしまいがちなのですが、来年の3~4月に大量の〆切を抱えているため、絶え間なく小説を書き続ける必要があるのです。  ざっと羅列してみると、次の文学賞に応募しようと考えています。 ・『新潮新人賞』 ・『すばる文学賞』 ・『小説すばる新人賞』 ・『電撃小説大賞』  さらに、来年サークル参加する予定の「文学フリマ」に向けて、新刊の構想も進めております。長篇の歴史小説になる予定です。「歴史長篇」

          【定期記事】たとえ難しい挑戦だとしても!

          【創作】掌篇小説「楓、Chapter One、コーラ」

           月曜日の朝、二年生のときには必修の授業が入っていた一限目の時間に、わたしは先輩とこうして勉強をしている。今年入ったゼミナール。大学院生の先輩は、授業の補助で参加している。  ゼミナールの先生は、分からないところがあったら、作陽さんに訊くようにと言っていた。だから、いつも質問をこしらえて、授業の終わりに先輩のところへと向かった。そのおかげで、わたしが卒業論文で書こうとしているテーマが、先輩の研究テーマと少しだけ重なっているということを知ることができた。  そして、そのテー

          【創作】掌篇小説「楓、Chapter One、コーラ」

          【創作】掌篇小説「この世でたった一冊の、愛する人への絵本」

           その日ムサは、ラゴスの中心部の路傍にタクシーを停めたまま、とりとめもないことを考えては、ため息を吐いていた。念のために断っておくと、ムサがため息を吐くのは、この日ばかりのことではない。彼はこの十数年、二十歳まで追いかけた夢を諦めざるを得なかった身の上を思うと、何度となく気鬱になり、どことなく客が声をかけて来なさそうなところを見つけては、休憩をしているふりをして、物思いに耽っては、それを振り払おうとしているのであった。  しかしこの日は、タクシーの扉を背にしゃがみ込んでいた

          【創作】掌篇小説「この世でたった一冊の、愛する人への絵本」

          【読書記録】最近読んだ小説の感想!-『麒麟』『八十八夜』など-

           今回の記事でも、最近読んだ(再読した)小説をご紹介させていただきます。しかし「紹介」というより「感想」に近いものですし、必ずしもオススメの小説を取り上げるわけではありません。それでも、皆様の「読書ライフ」の一助になりましたら幸いです。 ● 谷崎潤一郎「麒麟」 (千葉俊二編『潤一郎ラビリンスⅠ-初期短編集-』中公文庫、1998年、23-45頁)  本作の主人公はあの「孔子」です。伝道の旅にでた孔子は衛の国に立ち寄り、そこで霊公に君主としての心得を教えます。その結果、悪逆

          【読書記録】最近読んだ小説の感想!-『麒麟』『八十八夜』など-

          【定期記事】タスクをこなすためにしている簡単なこと

           いま手元にあるメモ帳には、このようなことが書かれています。  これは「2023年11月28日」に絶対にすることを、その前日にリストアップしたものです。  あらかじめ「これだけはしておきたい」ということをまとめておくと、あれをしようかこれをしようかと迷ってしまい身動きがとれなくなる、ということはなくなります。少なくともわたしは、これを習慣化してから、パフォーマンスが向上しました。  ただし、あまり詰め込みすぎると、タスクが終わらないこともあり、自分を責める気持ちが生まれ

          【定期記事】タスクをこなすためにしている簡単なこと