【読書雑記】「必ず読者がいるから、筆を折らなくていい」と思いながら
先日、芥川龍之介の『或阿呆の一生』を読んでいました。何度読んでも新しい発見はあるものです。いままで注意を払っていなかったある一文が、わたしの目にはっきりと強調されました。
そして、芥川の『闇中問答』という一篇の、とある箇所を思いだしました。
このふたつの文章は、こういう風に、肯定的に解釈できるかもしれません。
いまは読者がいなくても、自分の小説を好きになってくださる方が、いつか現れるかもしれない。
一時、投稿サイトに連載している小説の「PV」がまったく伸びないのを見るたびに、どうしたら読んでいただけるのだろうかと懊悩していたことがありました。しかし、あるとき、一気にわたしの連載を読み切ってくださった方が現れました。そのとき、こう思いました。わたしは、未来の読者に向けても小説を書いているのだと。
芥川は、悲観的にこうした言葉を吐露したのかもしれません。しかしわたしは、それを自分事に置き換えて、肯定的にとらえ返してみました。
もし、読者が増えずに、筆を折ってしまいたいと思っている方がいるとしたら、「未来の読者」を意識するとよいかもしれません。自分の書いたものを好きになってくださる方は、どこかに絶対にいます。わたしはそういう意識を持ちはじめてから、執筆のモチベーションが上がりました。
こういう読解を、芥川は赦してくれないかもしれません。きっと、冷笑を浴びせかけられることでしょう。しかしわたしは、こういう風に読んでしまったのですから、仕方がありません。
【参考文献】
● 芥川竜之介『歯車 他二篇』岩波文庫、2010年改版。
● 芥川龍之介『或阿呆の一生・侏儒の言葉』角川文庫、2018年改版。
※岩波文庫では「芥川竜之介」と表記されている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?