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剪画作品紹介

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剪画作品をご紹介します。
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#剪画展

黄金の傷跡

黄金の傷跡

カルチノワ ミロスラヴァ 作 212×330mm
“Golden Scar of a Healed Wound” by Miroslava Karchinova

 最近金継ぎに注目が集まっていますが、この技術は日本国内だけではなく、海外でも広く知られているようです。欠けた陶器を漆と金によって修復し、その傷までを美しいものとして愛でる美意識は日本独特のものかも知れません。
 この金継ぎを描いたの

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豊穣の孔雀

豊穣の孔雀

ヴラホワ イヴァイラ 作 286×202mm
“Peacock of Abundance” by Ivayla Vlahova

 「金色」をテーマにした作品展では魚だけではなく鳥の作品も出展されました。そのうちの1点がこの「豊穣の孔雀」です。孔雀の羽は光沢があって金色を帯びて見えますし、その美しさと威厳ある姿から豊穣、豊かさを象徴するものでもあるのでしょう。
 その孔雀を写実的ではなく、独特の

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温泉

温泉

梅崎 ゆう 作 242×272mm
“Onsen” by Yuu Umezaki

 前回ご紹介した作品と同じように同心円を描いて温泉を表現しているのが、この作品です。宮本さんが青い線を残して円を描いたのと反対に、梅崎さんは生成りの和紙をくり抜き、下に来い茶色の和紙を敷くことによって、円形を描き出しています。さらに青いパステルでぼかしを入れ、水面らしさを演出。写真ではわかりにくいのですが、左上に

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別府温泉坊主地獄

別府温泉坊主地獄

宮本 真理 作 210×297mm
“Beppu Onsen's Bozu Jigoku (Monk's Hell)” bt Mari Miyamoto

 別府には様々な地獄と呼ばれる奇景があります。血の池地獄、海地獄、かまど地獄…そしてこの坊主地獄。灰色の重そうな泥水がボコボコと持ち上がる様子が、坊主頭のように見えるのでしょう。私が行ったのは鬼石坊主地獄の方ですが、現地には天然坊主地獄とい

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いい湯だな

いい湯だな

神田 いずみ 作 180×230mm
“What a Nice Bath!” by Izumi Kanda

 この作品展は兵庫県の新温泉町を始めとして鳥取の公民館で巡回展を開催する予定です。そのため、日野さんは歯科の温泉と新温泉町の足湯の作品を制作してくれましたが、神田さんか描いてくれたのは、鳥取砂丘で温泉に入っている動物たちの作品です。
 明るいオレンジ色の砂丘、その上空を滑走するパラグライ

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温泉に入るニホンザル 2

温泉に入るニホンザル 2

六郷 もと 作 275×420mm
“Snow Monkeys Enjoying Hot Spring II’ by Moto Rokugo

 温泉に入る動物…と言えば、もちろん長野の地獄谷野猿公苑のお猿さんたち。私は行ったことがないのですが、日本を訪れる外国人にも人気が高い観光地になっているとのこと。実際に猿たちが温泉に入るのは寒い時期だけなのだそうですが、温泉に気持ちよさそうに入る姿を見て

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旅先にて

旅先にて

外山 豊子 作 210×297mm
“At the Holiday Destination” by Toyoko Toyama

 「ひとり旅しています」と絵の右上に文字が入っています。ひとりでゆったりと足を温泉に浸している女性は、浴衣を着てくつろいでいる様子。日々忙しく過ごしている女性にとって憧れるシーンではないでしょうか?
 茶系の輪郭線を使い、ムラ染めの和紙をうまく組み合わせてシックな色

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大地からの癒しの届け物(鳥取・鹿野温泉)

大地からの癒しの届け物(鳥取・鹿野温泉)

日野 晴美 作 210×297mm
“The Gift of Healing from Mother Earth (Shikano Hot Spring, Tottori)” by Harumi Hino

 今回のテーマ「温泉」は作家さんたちにとってなかなか難しかったらしく、DMを作るべき時期にまだ作品が1つも搬入されていませんでした。日野さんに相談したところ、急ぎで鳥取の温泉を小さいサイズで

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鹿に紅葉

鹿に紅葉

南舘 千晶 作 392×283 mm
“A Deer and Maple Leaves” by Chiaki Minamidate

 ギャラリーにいらしたお客様がこの絵を見ながら一旦通り過ぎ、しばらくしてから「あぁ、花札ですね?」とおっしゃったりします。
 この花札の「鹿に紅葉」は、メーカーが違ってもほとんどの花札で構図が同じです。が、色合いが違うので、最初に見た時に気が付きにくいようです。こ

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波に委ねる

波に委ねる

小野寺 マヤノ 作 305×432mm
“Moving with Waves” by Mayano Onodera

寄せては返す その揺らぎに
私は身を委ねる
遠く近く 深く浅く
繰り返すその律動

かすかに聞こえくる その音色に
私は身を任せる
高く低く 早く遅く
繰り返すその音階

始めを知ることもなく
終わりを感じることもない
常に繰り返すその動き

遠く近く 深く浅く
繰り返すその律

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鳴門の渦潮

鳴門の渦潮

坂上 裕子 作 210×279mm
“Naruto Whirlpools” by Hiroko Sakagami

 徳島に旅行した方が一度は見に訪れるもの…鳴門の渦潮。大潮の際には渦の直径が30mにもなることがあり、このサイズは世界最大級のものだそうです。
 坂上さんは、その壮大な風景を剪画で表現しました。あえて黒ではなくグレーの輪郭線を使用。海の色も鮮やかなブルーではなく、少し灰色がかった優

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稲の波

稲の波

菅谷 順啓 作 242×272mm
“A Wave of Rice Plants” by Jyunkei Sugaya

 もう 1点、水ではない波の作品をご紹介します。
 昨年逝去された菅谷さんの色紙作品を何点かお預かりしています。作品展の度に、その中から出展できるものがないかどうかチェックするのですが、この色紙にこの歌が添えられていなかったら、今回のこの「波」展にふさわしい作品だということに

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甍の波

甍の波

高橋 隆 作 488×338mm
“Iraka-no-Nami (A Wave of Tiled Roofs)” by Takashi Takahashi

 今回出展された作品のほとんどが水に関係した波であったのに対して、甍の波を描いたのがこの作品です。5月の青い空。その下に延々と連なる瓦屋根…。今ではこうした純日本風の屋根だけが続く光景もなかなか見ることができなくなりました。
 規則正しく

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クジラの学校 空もおよぐ?!

クジラの学校 空もおよぐ?!

石野 千鶴子 作 242×272mm
“School of Whales - Do they swim in the sky too?“ by Chizuko Ishino

 先日ご紹介した日野さんの描いた作品はリアルな感じのクジラでしたが、石野さんが描いたのはメルヘンの世界のくじらです。
 石野さんは波間にたくさん泳いでいるクジラをまず描いたのですが、何となく寂しそうな絵になってしまったとの

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