さよならシミュレーション
別れの台詞と告白を思い浮かべるだけでこんなに号泣するとは思わなかった。
ひとりで。
何度も思い浮かべてきたのに
どうして今更泣くのだろう。
眠る前に泣きすぎて、ひどい顔だ。
誰にも見せられないし、あの人の前でこんな真っ赤な顔はできれば見せたくない。
泣きすぎて笑うかもしれない。
だけどひとりで泣いて、誰にも知られずにこの感情が消えるより幸せなのかもしれない。
自分だって驚いている。
感情はもしかしたら無くなったのかって思っていたんだ。
だから、もしかしたら台詞を口にするのは簡単なんじゃないかって。
このまま思い出す日を少しずつ減らしていって、
ゆっくりと大切じゃなくなって
「普通に何もない感情」が手に入るんじゃないかって。
それもかなしいけれど、それでもいいだろうって思っていた。
思いは長く育ちすぎた。
少しずつ卒業式の予行演習を?
考えは甘かった。
どこからはじまって涙が出たのかわからない。
ランチの話、誰かのきれいなブーケと純粋。
縁は縁でも。
予想以上にずっと大切にそこにいるんだ。
思うだけで号泣してしまうんだ。
本当はこうだったんだ。
大丈夫なわけはなかったんだ。
あの子にもあの有能な人たちにも、イライラする人にも、
私の好きな私で話せないのは
心が開ききれないのは
ただ私が閉じこもっているからだと思っていた。
でも、きっかけはもしかしたら積み重ねだったのかもしれない。
開かないことの 積み重ね。
何より、自分に。
こんなに「いつもの自分が知らなかった大きな感情」を、私はいつから隠していたの。
こんなに涙まみれの顔を私すら知らなかったの。
そういう私に気づかない。
泣くこともなく、思いはしぼんで忘れられると 無になった。
自分に心を開かなくなっていったんじゃないのか?
自分すら見て見ぬふり、
何も感じず、誰のことも愛せない。
漠然とした不安だけ、共感して安心して。
何もないから、何も感じないんだ と。
思って涙が止まらないぐらいに心を動かされるのにね。
その気持ち眠らせたかったのかもしれないね。
まだ泣いたり笑ったりできるんだ。
まだ大切なんだ。
そんな言い方は歪んでいるかもしれないけれど
何もかも麻痺していなくて良かった。
書くと隠せないんだ。
誰に見せるでもなく書くことが涙と同じぐらいのすっきりだ。
ひとりじゃない私の心配。
ひとりになれよ、はじまるのならそこからだろう、って 星の行方を気にしながら。
砂時計の使い方。
時間ってちゃんと進んでいる。
無になるより、さめているより
記憶がすりかわって嫌になるより
あたかかいんだな。
目覚ましがわりの涙の温度。
(2014.3)
*
今まで生きてきた中で、最も叶い、なにより叶わなかった恋の記録。
私からさよならを切り出さなければ、「今も」なんらかの関係が続いていたかもしれないし、逆に言えば、私からさよならさえすれば、「いつでも終わる」関係性でしかなかった。
だから私は去った。
でも、別れの言葉を練習するだけでなぜか涙が止まらなかった。
馬鹿げた話だが、そんな練習を少なくとも半年は続けていたと思う。
今読み返すと、この感性が少し思いつめすぎで、でも いとおしいな。
#あの恋 #恋
#過去日記 #恋愛 #失恋 #ノンフィクション #フィクション
#文章 #日記 #ポエム #エッセイ
#love #diary #詩 #詞 #言葉 #ことば
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?