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2020年11月の記事一覧

10月に聴いたもの

Beltway Bandits "El Nuevo Buenos Aires"詳しい情報が出てこないがビッグコンボ的ジャズバンドプラスボーカル。聴き心地が良いのにほどよく引っ掛かりがある。アルゼンチンのジャズものでなかなか録音が良いものに出会ったことがなかったけど、これは良い気がする。歌ものというと通常ピアノトリオで十分な感じもあるが、室内楽的な管のアンサンブルが多く盛り込まれている。 訂正:アルゼンチン人ギタリストとイタリア人作曲家/アレンジャーが結成したオランダのグル

ピークエンドの法則(終わりよければすべてよし):行動経済学とデザイン:39

『ゲーム』という映画を観たことありますか?主人公のマイケル・ダグラスは嫌な思いをいっぱいするわけですが、最後はハッピーエンドの結末で、めでたしめでたし...となります。 いや、でも冷静に考えると、それまで散々嫌な思いを味わったのにチャラにしていいの?とも思うんだけど。でもそれでいいみたいです、人間は。 そんなことが、この本の一部に書かれています。 ダニエル・カーネマン心理と経済を語る ダニエル・カーネマン(著)、友野典男(監訳)、山内あゆ子(訳) 2011.03 遊工社

読書感想文のお祭りするから、宮沢賢治のイーハトーブへ行ってきた

いよいよ、11月22日(日)・23日(月祝)は、読書と感想文のお祭り「キナリ読書フェス」です。みんなで同じ日に本を読み、同じ日に語りあい、同じ日に感想文を書きます。 出版社や著者の協力で、総額20万円の賞金と、すんばらしい賞品も用意していますので、どうか参加してくださ〜い!感想文の応募〆切は11月23日21:00。 キナリ杯に引き続き、わたしがぜんぶ読みます。 課題図書のうち、1冊。 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」です。 これを課題図書にした理由は、みっつ。 ・自然や動

「北海道の日本酒がくる !?」可能性しかない北海道日本酒の会(角打ち)レポート

日本酒の美味しい地域といえば、米どころの新潟をはじめ、福島、秋田、山形……と、「東北地方」があがることが多いです。そのまま南下(関東とか近畿に)していくので見逃しがちですが、実は日本最北の「北海道」でも日本酒は造られています。 今回、北海道をこよなく愛し「北海道のお酒をもっと知って欲しい!」という二戸さんの「北海道角打ちNight」イベントに参加してきました。 九州出身で北海道未経験の私としては、北海道に対して「おいしいもので溢れかえるすごい場所」という憧れがあります。日

アイヌ語オンリーの集まりに潜入!?

危機言語サミット(前回記事参照)を通して、アイヌ語に興味を持った私は、北海道沙流郡平取町の二風谷地区でアイヌ語学習が盛んだと聞き、その様子を学ぶため、2015年2月に北海道へと向かった。 二風谷にはアイヌ語教室があり、一般向けと子供の部の二つの活動がされている。 このアイヌ語教室だが、歴史は長い。アイヌ民族初の国会議員となった萱野茂さんが1983年にスタートした二風谷アイヌ語塾が前身だ。かれこれ40年近くの歴史があり、ここで学んだ卒業生は各地でアイヌ文化の担い手として活躍し

読みやすい、面白い!アトウッド入門書として最適!~上田 早夕里 × 豊崎 由美、マーガレット・アトウッド『誓願』を読む~

書評アーカイブサイト・ALL REVIEWSのファンクラブ「ALL REVIEWS 友の会」の2020年10月のフィクション回。ゲストは小説家の上田 早夕里さん、メインパーソナリティーは豊崎 由美さん。読み解く本は、マーガレット・アトウッド『誓願』(鴻巣 友季子訳・早川書房)。10月に出たばかりの新刊書を早速読み解きます。ツイッターでは翻訳者の鴻巣友季子も観覧中とのご連絡。 アトウッドはノーベル文学賞候補の常連。そして『誓願』はドラマでお馴染みの『侍女の物語』の続編。お二人は

春日権現験記絵 はじめに

始まりは、Twitterの「『春日権現験記絵』の現代語訳ってないのかな」という呟きを見たこと。いろいろ調べたところ、刊行されている現代語訳はないようです。 春日大社の縁起とも言える『春日権現験記絵』は1309年に西園寺公衡が、氏神である春日大社に奉納したものです。豪華絢爛な絵物語には藤原氏である西園寺家の政治的思惑も当然反映したものと考えられます。 この記事の中で、『春日権現験記絵』の現代語訳を試み、当時の生活様式、信仰の在り方、藤原氏の置かれている状況、説話としての側面

「お客さんが変わる」ことを恐れない

こんにちは! 田中靖浩です。 最近は書いてばかりの毎日なので「作家・公認会計士」を名乗っています。 近著は「会計の世界史」(日経BP)、「名画で学ぶ経済の世界史」(マガジンハウス)、「教養としてのお金とアート」(KADOKAWA)など。 絵本の翻訳もやっています。あと、「バーまなび」でバーテンもやっています。 ここのところ、お堅い「会計や経済」に「歴史や絵画」を組み合わせる意外性がウケたせいか、ビジネスセミナーに加えて、絵画セミナーの依頼を数多くいただくようになりました。

鉄道ファンも知らない架空鉄道の世界

乗り鉄、撮り鉄、音鉄、時刻表鉄……。鉄道ファンにも様々な鉄道趣味の分野がある。その中で筆者がハマったものは「架空鉄道」だった。筆者の夏休みをかけて研究した、時に鉄道ファンでさえも「気持ち悪い…」と呆れ果てる架空鉄道の世界へ、今からみなさんを誘おう。デュフフ。 (見出し画像の鉄道車両制作者:Ha10gen氏) なお本記事の写真に登場します鉄道車両は、筆者本人が自作したものではありません。鉄道アドオン製作者の方々の作品です。公開当初の記事が誤解を招く文章となってしまっていた事を

ここにはなにもない。

「今日のツアーはこの一本道を数百メートル歩くだけです」と言ったらみなさんどう思いますか。「え? 田んぼと民家だけですよね?」と思うかもしれませんが、実はここには4つも5つもトピックがあり、なんなら2時間だって3時間だって話すことができます。では少し歩いてみましょうか。 いろんな石碑、石塔、石像が集められていますね。一番奥のものはかつてこの村で教育に尽力した方を称える碑なんですが、それを読もうとする人はまずいないでしょう。でもこう言ったらどうですか。この方はカールスモーキー石

アーラヤ識とは? −中沢新一著『レンマ学』を精読する(5)

ひきつづき、中沢新一氏の『レンマ学』を読む。今回は88ページの「大乗起信論による補填」を紐解いてみよう。この節は「レンマ学」の構想の核心部分であると思われる。 今回のキーワードはアーラヤ識である。 アーラヤ識とは何だろうか? アーラヤ識アーラヤ識とは、人間の心の構造、運動のパターンが形成される場である。アーラヤ識という言葉を用いて、人間の心の不思議に探りを入れることができるのである。 人間の心、私たちが日常的に実感として経験している人間である自分自身の心とは、次のよう

それは心の問題ではない(渡邊芳之:帯広畜産大学教授)#不安との向き合い方

 不安な世相を反映し、メンタルヘルスの重要性が、強く認識されるようになってきました。そのこと自体はとてもよいことだと思われます。しかし今、あまりに多くのことが心の問題とされ過ぎていないでしょうか。心を重要視することが、他の要因から目をそらすことにつながっているように感じることはないでしょうか。現在の心の問題の扱われ方について、パーソナリティ心理学がご専門の渡邊芳之先生に、お考えをお書きいただきました。  東日本大震災のあとに、避難所や仮設住宅に「カウンセラーお断り」という貼

民俗学・文化人類学が再創造する、あらゆる文化が溶け合う未来。SF作家・柴田勝家氏インタビュー。

「柴田勝家」という戦国武将の名をペンネームにしたSF作家をご存知だろうか。ペンネーム以上にユニークな作品の特徴としては、民俗学・文化人類学のモチーフが全ての作品に描かれていることだ。世界中のSF作品の潮流…ひいては世界のビジネス潮流でも注目を集める民俗学・文化人類学と、SFが描く未来とは?2020年9月に最新短編集「アメリカン・ブッダ」を上梓したばかりのSF作家・柴田勝家氏にお話をお聞きした。 柴田勝家:1987年東京都生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻所属。

ブンガクのことば【0004】

一生の秘訣とは斯(こ)の通り簡単なものであった。『隠せ。』……戒はこの一言で尽きた。 ~島崎藤村『破戒』より~ 瀬川丑松の父は丑松に、自分たちが社会で生きていくための「秘訣」を、〈自己の出自の否認〉であると説いた。 自己の出自。 彼らは、被差別部落の出身だった。 丑松は、父の教えを「戒」として、頑なにそれを守ろうとする。 しかしながら、身体の奥底から湧き起こるとある思い――生まれによって人間の人間性が剥奪されるその理不尽は果たして許されるのかという懊悩、そして、真の人