マガジンのカバー画像

"歴史" 系 note まとめ

1,166
運営しているクリエイター

2020年8月の記事一覧

『地中海世界』(フェルナン・ブローデル編)の感想

ここまで、「文化の読書会」の末席に加えていただき、皆さんとブローデルの「地中海世界」を読んできた。ここでひとまずの感想を。 ■自然環境が規定する文化 地中海の自然環境の成り立ち、そしてその与条件下での狩猟採集生活から約9000年前の農耕定住生活への移行によって、地中海世界の文化が規定されていった。そもそもの痩せた土地柄ゆえに穀物等は肥沃な地域(昔はエジプト、今はフランス等)からの輸入に頼らざるを得ず、必然的に異文化間での交易が地中海世界の基盤となっていった。ドラマ『ローマ』

粋な返しがしたくて『はじめての構造主義』を読んだ

以前、『史上最強の哲学入門』を読んで、スイスの哲学者ソシュールの考え方面白いなぁって思ったのです。 その話を社内ドキュメントの週報に書き散らしたところ、こんなコメントが来た。 「脱構築、デリダまったなし」 このコメントの返しがわかりませんでした。上の書籍を読んだ時点で僕がソシュールについて理解したことは、「言語とは、差異のシステムである」で代表される主張の概要の概要の概要の...ryで、脱構築主義・デリラとのつながりを瞬時に理解できず、かつ、そもそも脱構築もよくわからな

〈地域〉という時空間を捉える。F.ブローデル編『地中海世界』摘読(7)「空間と歴史」総括。

安西洋之さん、澤谷由里子さん、北林功さんと一緒に続けてきた〈文化の読書会〉も、いったんブローデルの『地中海世界』の前編にあたる「空間と歴史」を通読しました。 今回は、ここまでの総括を。 自然地理が人の行動を方向づける。いうまでもないことだが、人間の行動、その歴史的なパターンとしての文化は、人々が住まう地理や気象などに左右される。それは「陸地」「海」の章において考察されていた。 人は、陸地のうえに住まう。しかし、より豊かな生活を求めて、自らが生み出しえないものをやり取りし

17世紀鎖国後にもトンキン(北部ベトナム)で活躍したキリシタン貿易商・和田理左衛門

16世紀末から17世紀初頭にかけて日本の朱印状に基づく貿易が盛んだった時代、ベトナム中部・ホイアンに日本人町があったことが知られている。しかし、北部ベトナム、当時は東京(トンキン)と呼ばれた地域と交易があったことはあまり知られていない。 16世紀、莫氏から政権を奪還した黎氏・阮キム(氵に金)は後黎朝を再興したが、その死後女婿・鄭検とその次男・阮潢との間に後継争いが生じ、阮潢はフエに追いやられた。以来、東京(トンキン)の鄭氏と広南(クアンナム)の阮氏との間で南北に分かれて約2

イランの国教はなぜシーア派(中でも十二イマーム派)なのか?

イラン・イスラム共和国の国教は、イスラーム教のなかでも、十二イマーム派というシーア派の一派です。これは世界史では覚える事項として登場するわけですが、そもそもいったいなぜ、イランでは、十二イマーム派が信仰されているのでしょうか? 個人的に調べたことを整理しました。せっかくなので、これを公開します。 そもそもシーア派とは?シーア派は、イスラーム教のうち、創始者で預言者であるムハンマドのいとこアリーの子孫のみを指導者として認める人たちのことです。 ムハンマドには息子がいませんで

シチリア料理はそのままこの島の歴史を語る・フェニキア人と塩田

シチリア島の州都、パレルモからの発信。 ボンジョルノ。 このnoteを始めた時、もっともっとシチリアのこと全般について書いていこうと思っていました。 もちろん食に関することが多くなるのは分かっていましたが、観光や見どころ等も取り入れる予定だったのです。 色々な人から「シチリアに関する情報って、少ない」と聞いていたので。  ところがロックダウンもあって出掛けられなかった日々、撮り溜めた写真はあったのですが、毎日お料理ばかりしていたの為についその話題ばかりとなりました。 今一

歴史のカリスマリーダーは99%クソ上司! _feat.織田信長、始皇帝 <上司編#1/4>

上司が評価してくれない。自分という人間をぜんっぜん理解してくれない。そもそも、人間としてまったく尊敬できない! オレ(ワタシ)の上司、マジおわってる……。 こんなふうに、上司への不平不満を抱えた働きびとは少なくないのではないでしょうか。 『コテンラジオ』のリスナーさんからも「上司にまつわる相談」をいただいていました。ご本人に直接返事することはできなかったものの、僕の中で課題として預かっていました。 サラリーマンだった僕も、上司に対して同じように思っていたからです。 新

東洋哲学本50冊よんだら「本当の自分」とかどうでもよくなった話

「好きなことで生きていく」ため会社をやめて 「好きなこと」が見つからずに5年がたった。 ウケる。 いや、ウケている場合ではない。 会社員 → 地方移住 → フリー を経て、 はては芸人までやって30代無職にいたる、 色々ためしたけど何もモノになってない感じは、「現実」という名の銃口をぼくの額につきつけている。 こ、これがゲンジツ... 地に足をつけて仕事がんばるか... と、ならないのが生来のニート気質をもつワイである😘 コロナ自粛に乗じて俗世に別れを告げ、

麗しの島の冒険①(全3回)

「天龍国」台北(たいぺい) 私が台北の空港に降り立ったのは、2016年3月31日のことだった。帰りの便は4日後の4月4日。私は基本的に、一度訪問した土地には二度と訪問しないつもりで旅をしているので、この5日間で台湾をできる限り回りつくすつもりでいた。中部の都市、台中(たいちゅう)から南部の台南、高雄まで訪れる弾丸ツアーだ。  旅は台湾の首都?台北から始まる。首都という言葉に疑問符をつけたのは、実は台北が首都であるという法的根拠は存在しないからだ。台湾を統治しているのは中華民国

歴史が繰り返す、税による国家の盛衰

お金でわかる世界の歴史を読んだ。 国家の盛衰というのは古代から現代まで大体似たような経緯をたどる。 強い国は、財政システム、徴税システムなどがしっかりと整っている。そして国が傾くのは、富裕層が特権を作って税金を逃れ、中間層以下にそのしわ寄せが行く時なのである。だから国を長く栄えさせようと思えば、税金を逃れる「特権階級を作らないこと」だと言える。 とあるように、この実例を色々な時代から論証する本。税金は狩猟採取時代から集落の時代に変化してく中で生まれている。 狩猟採集か

浅沼優子氏の小沢健二氏への批判について、ちょっとだけコメントします

    説明と追記があります。併せてご確認ください。  初めての投稿となります。  私は、シンガポール華人(中国系移民)の社会史の研究を行っている歴史学者の持田といいます。専門は、イギリス植民地統治下のシンガポール・マレーシアにおいて「人種」・「ネイション」というフィクショナルな政治的カテゴリーが人為的に創出されていった過程、およびそれが中国本土の政治的ナショナリズムと結びついていった過程などを、実証的に議論する、というようなものです。あまり頭はよくないのですが、何とか