見出し画像

不思議な縁が人を育てる。オリックス・山本投手がドジャースと契約合意。「あの時」の縁がなかったら、日本のエースとなっていただろうか

不思議な縁が人を育てる。今や日本のエースとも言われるオリックスの山本由伸投手(25)。ロサンゼルス・ドジャースと12年総額3億2500万ドル(約463億円)の契約に合意したという。「あの時」の縁がなかったら、今のような成長曲線を描いていただろうか。不思議な縁続きは、必然だったのか偶然だったのか。山本投手にも分からないかもしれない。

山本投手は宮崎・都城高校卒。甲子園には一度も出場経験がなかった。全国的には無名の存在と言えた。「あの時」の縁がなかったら、いきなりのプロ行きはなかったかもしれない。

元オリックスの投手からスカウトとなった山口和男さんが宮崎県都城市の都城高を訪れたのは2015年2月のことだった。山本投手は当時1年生の投手。

前年までオリックスは沖縄の宮古島でキャンプを行っていた。15年に宮崎市にキャンプ地を移した。その1年目。山口さんはチームのキャンプを見た後に、都城高を訪問した。

その時にブルペンで投げ込んでいた山本投手の姿に目が留まったのだ。その日は風が強くて、かなり冷え込んでいたそうだ。

しかし山本投手は寒さを感じさせぬ様子で威風堂々と投げていた。寒ければ、肩をすぼめたり、手をこすったりする球児が多いだろう。その中で集中してピッチングを続けていたという。

自分のやるべきことに、集中して取り組む。その姿に山口スカウトはほれ込んだのだ。

2016年秋のドラフト会議。山口スカウトは球団に山本投手を猛プッシュしていた。ただ3巡目までに、山本投手の名は呼ばれなかった。山本スカウトはヒヤヒヤしながら見守っていたことだろう。他球団に指名されるのではないかと。

4巡目になり、ようやくオリックスが指名した。今の圧倒的な活躍を思うと、あまりにも遅すぎる指名順位だった。

山本投手は1年目で早くも1軍に登板。2年目ではブルペン陣の一角として54試合に投げると、3年目の2019年からは先発に固定され、今の活躍に至る。

2021年以降は3年連続で15勝以上、防御率1点台。リーグ3連覇に貢献した。そして昨季からは2年連続投手4冠。今春のワールドベースボールクラシック(WBC)では、侍ジャパンの世界一奪還の原動力となった。

そして来季はドジャースの一員として、WBCで共に戦った大谷翔平選手(29)とチームメートとなる。日本人のスーパースター2人が共演することになるのだ。

「もしも…」と考えたくなる。2015年にオリックスのキャンプ地が宮崎市でなく宮古島のままだったら。山口スカウトが都城高を訪問した日が冷え込んだ日でなく、ポカポカ陽気だったら。ドラフトでオリックスでなく他球団に早く奪われてしまっていたら。山本投手が今のような成長曲線を描いていただろうか。

山本投手の努力があったのは疑いようがない。それでも、不思議な縁が続いていなかったら、ここまでの道のりを歩んでいたかは分からない。

不思議な縁に導かれた山本投手。ドジャーブルーのユニホームに身を包み、世界最高峰の野球の世界で活躍する姿が楽しみだ。そして不思議な縁は人の成長に不可欠なのだと改めて思う。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?