見出し画像

青春は誰かのために全力を尽くすこと。前回棄権を余儀なくされた先輩たちの分も。春高バレー女子決勝。就実がつないでつないで2大会ぶりⅤ

青春は自分のためだけでなく、誰かのためにも全力を尽くすこと。バレーボールの全日本高校選手権(春高バレー)を見ながら思った。女子決勝で岡山の就実が2大会ぶりに優勝した。前回は優勝候補に挙げられながら、本大会の試合直前に棄権を余儀なくされた。無念の先輩たちの分も。今年の選手たちはつないでつないで頂点に駆け上がった。青春って尊い。

8日に東京体育館で行われた女子決勝。就実の相手は下北沢成徳だった。全国高校総体、国体と2冠を制している絶対王者。アタッカーには180センチ台がずらりと並ぶ。

高い打点から打たれる相手のスパイクにどう対応するのか。就実はレシーブで拾うしかない。先輩から受け継いだ「粘るバレー」だ。

前回大会の初戦。就実は試合前の抗原検査でチーム内に陽性者が出たため、棄権を余儀なくされた。本大会を1試合も戦うこともできず会場を去ることになった先輩たちの無念な気持ちを、下級生は忘れていない。

先輩たちの分も戦う。先輩たちの思いもつないで練習に取り組んできた。練習の9割近くが守備だった。この猛特訓が決勝の舞台で花開いた。

相手の強打が就実コートに打ち込まれる。リベロでキャプテンの井上凛香選手(3年)が厳しいコースにも横っ飛びでレシーブ。拾う。拾う。レシーブからリズムを作って、味方のペースに持ち込んでいく。

井上選手は昨年度のキャプテンだった岩本沙希さんが使っていたソックスを身に着けて試合に臨んでいた。先輩と一心同体。だからこそ、厳しいコースにスパイクを打たれても、横っ飛びのレシーブにもうひと伸びが生まれて、つなぐことができる。

これだけの思いでつないでいけば、相手が絶対王者でもプレッシャーを与えられる。第1セット、第2セットともに25-17で就実が連取した。

第3セット。19-17と競り合う展開で、就実の守備からリズムを作る真骨頂が見えた。長く続くラリー。井上選手らが相手の強打をレシーブで粘る。

そして、ネット近くからのレシーブ。トスが上がると、福村心優美選手(2年)が渾身のバックアタック。相手コートの奥に決まった。優勝へ大きく流れを引き込む連係だった。これぞ「つなぐ就実」といえた。

この流れで就実は25-21と3セット連取。2年ぶり5度目の頂点に輝いた。コートに広がる歓喜の輪。

スタンドからは前回のキャプテン岩本さんら先輩たちも応援していた。後輩たちが頂点に返り咲くと涙を流して喜んでいた。選手たちも先輩たちの手を振りながら感謝の思いを伝えた。

先輩たちの無念を晴らす日本一。就実の強さには、先輩たちへの思いが凝縮されていた。青春は誰かのために全力を尽くすこと。就実の選手たちは最高の形で、青春を体現した。青春って尊い。

この記事が参加している募集

スキしてみて

スポーツ観戦記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?