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「麟太郎に回せ!」花巻東の思いがつながった。王者・仙台育英相手に最終回の猛追。チームメートの絆。執念の4得点をたたえたい

最後まであきらめなかった。これぞ青春。花巻東(岩手)は最後まで王者の仙台育英(宮城)に立ち向かった。最終回の攻撃。合言葉は「麟太郎に回せ!」。最終回に0-9と大量リードを奪われていた。それでもチーム一丸となり、4点を返し、主軸の佐々木麟太郎選手にまでつながった。敗れたとはいえ、花巻東の執念、チームの絆をたたえたい。

19日に行われた夏の甲子園準々決勝。第4試合で昨夏王者の仙台育英に花巻東が挑んだ。春15回、夏30回の甲子園出場を誇る仙台育英。夏11回、春5回出場の花巻東。「東北対決」は屈指の好カードとなった。

初回は引き締まった展開。両校ともに無失点に抑えた。なかでも仙台育英の先発湯田統真投手の右腕がうなりを上げた。2死走者なしで花巻東の主軸佐々木麟太郎選手を迎えると、自己最速となる151キロをマークした。大舞台は若者を成長させる。

そして、成長については花巻東にも当てはまった。それは九回の攻撃にあらわになった。0-9と大量のビハインドを追う展開。それでも最後まであきらめない姿勢が一人一人のプレーに刻まれた。

花巻東の思いは「麟太郎に回せ!」。八回に3番佐々木麟太郎選手で攻撃が終わっていた。最終回にもう一度、佐々木選手を打席に立たせたい。その思いが花巻東のバットに宿った。

この回先頭の4番北條慎治選手が四球で出塁。ヒットを打ちたい思いを封印し、出塁を優先したともいえる。主将の5番千葉柚樹選手がセンター前へ弾き返してチャンスを広げた。

6番広内駿汰選手がレフト前へ、そして7番堀川琉空選手がライト前へ、それぞれタイムリーヒットを放つ。2-9。代打に登場した選手のショートゴロに間にさらに1点を返す。9番打者はセカンドゴロに倒れ2死。あと一人と追い込まれた。

しかし、ここからが花巻東の真骨頂。逆襲のギアが上がる。1番簗田蒼汰選手が詰まりながらもセンター前へ落とすヒットを放つ。4-9と5点差に追い上げた。2番熊谷陸選手は三遊間へ流し打ち。レフト前ヒットで一、二塁のチャンスを作った。

ついに佐々木麟太郎選手に打席が回ったのだ。この回の攻撃、佐々木選手はベンチでヘルメットをかぶって自分の出番を待っていた。仲間がつないでくれる。そう信じていたからだ。そして、その信頼にチームメートが応えた。

佐々木選手の登場に、王者も慌てた。暴投で走者が二、三塁に進塁。佐々木選手はこの試合4打席でノーヒット。それでも、高校通算140本塁打のスラッガーは脅威だ。

そしてカウント2-2からの5球目。佐々木選手は139キロの直球を振り抜いた。打球は一、二塁間を抜けそうな当たりだ。

しかし仙台育英の二塁手、浅面大地選手が横っ飛びでボールをキャッチし、一塁へ送球。佐々木選手はヘッドスライディングしたがアウトとなった。

花巻東の反撃が終わった。試合は4-9。しかし「麟太郎に回せ!」の思いは結実した。花巻東はベンチ入り20人全員が出場する総力戦だった。

チームメートを信頼し、その思いが大打者の最後の打席につながった。花巻東の最後まで見せた執念。これぞ高校野球!これぞ青春!敗れた花巻東をたたえたい。

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